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公開日:2023.12.8
企業法務2023年12月1日以降のアルコールチェック義務について
弁護士法人PROの弁護士の伊藤崇です。
2023年(令和5年)12月1日から、一定台数以上の自動車を使用する自動車使用者には、道路交通法の改正に伴い、アルコールチェック義務が課されることになります。
それでは、このようなアルコールチェック義務を負っているのはどのような事業者なのでしょうか。
また、具体的な義務の内容や、アルコールチェック義務に違反した場合のペナルティはどのようなものなのでしょうか。
この記事では、上記についてわかりやすく解説していきますので、「アルコールチェック義務」について知りたいという方は、是非参考にしてみてください。
1.改正道交法のアルコールチェック義務化の概要
ここでは、改正された道路交通法による義務の内容について解説していきます。
(1)改正道交法の概要
2022年(令和4年)4月1日より施行されている改正道路交通法施行規則では、業務使用の自家用自動車における飲酒運転を防止するために、以下の内容が義務化されました。
①の義務については、法令が施行された2022年4月1日から義務化されています。
これに対して、②の義務については、当時のアルコール検知器の供給状況などから事業所において十分な数のアルコール検知器を入手することが困難であったことから、内閣府令による暫定措置によって義務化が延期されていました。
しかし、この度、安全運転管理者などに対するアンケートの実施結果等を踏まえ、アルコール検知器の供給状況が改善傾向にあり、飲酒運転の防止を図るためにはできる限り早期にアルコール検知器使用義務化規定を施行することが望ましいと判断されました。
その結果、改正内閣府令の前提措置を削除し、「2023年(令和5年)12月1日」からアルコール検知器使用義務化規定が適用されることになりました。
2.アルコールチェック義務の対象者
それでは、アルコールチェック義務が課されている対象者はどのような人なのでしょうか。
ここでは、義務の対象者となる事業者の要件について解説していきます。
(1)安全運転管理者の設置事業者
アルコールチェック義務の対象者となるのは、安全運転管理者を設置している事業所です。
一定台数以上の自動車を使用する自動車使用者は、自動車の使用の本拠(事業所等)ごとに自動車の安全な運転に必要な業務を行う者として安全運転管理者を選任する義務があります(運行管理者等を置く自動車運送事業者や第二種貨物利用運送事業者・自家用有償旅客運送事業者の事業所は対象外です)。
そして、安全運転管理者の選任を必要とする自動車の台数は、以下のとおりです(道路交通法74条の3第1項、道路交通法施行規則9条の8第1項)。
大型自動二輪車や普通自動二輪車は、それぞれ1台を0.5台として計算します。
さらに、台数が「20台以上40台未満」の場合は副安全運転管理者を1人選任しなければならず、「40台以上」の場合には20台を増すごとに1人の副安全運転管理者の選任が必要となります。
安全運転管理者等の要件については、以下のとおりです。
安全運転管理者等を選任したときは、選任した日から「15日以内」に都道府県公安委員会へ届け出なければなりません。
(2)安全運転管理者等になれない者
ただし、以下の場合には「欠格事由」に該当するため、安全運転管理者等にはなれませんので注意が必要です。
3.アルコールチェック義務に対応するために必要な事項
(1)アルコール検知器を準備し、「常時有効に保持」する
アルコールチェック義務の対象事業者は、アルコール検知器を準備する必要があります。
アルコール検知器の性能については、道路交通法施行規則・国家公安委員会の指定により、呼気中のアルコールを検知し、その有無又はその濃度を警告音、警告灯、数値等により示す機能を有する機器があれば問題ありません。
また、アルコール検知器には、アルコールを検知して、原動機を始動することができないようにする機能を有するものを含みます。
そして、アルコール検知器を「常時有効に保持」するとは、正常に作動し、故障がない状態で保持しておくことを指します。
そのために、アルコール検知器の制作者が定めた取扱説明書に基づき、適切に使用・管理・保守するとともに、定期的に故障の有無を確認し、故障がないものを使用する必要があります。
(2)アルコールチェックの記録の作成・保管体制を整備
安全運転管理者は、アルコールチェックの記録を作成して、1年間保存する必要があります。
記録については、作成の手順をマニュアル化し、1年間保管できるように保管庫やデータファイルによって保存しておく必要があります。
酒気帯び確認を行う場合には、以下の事項について記録しておく必要があります。
4.アルコールチェック義務を怠った場合のペナルティ
安全運転管理者および副安全運転管理者の選任義務に違反した場合には、「50万円以下の罰金」が科されることになります(道路交通法119条の2)。
これまでは5万円以下の罰金であったものが引き上げられ、2022年(令和4年)10月1日から施行されています。
しかし、これは安全運転管理者等の設置義務に違反した場合のペナルティであり、適切に設置されていれば、アルコールチェック義務に不備があったとしても罰金が科されることはありません。
ただし、「公安委員会は、安全運転管理者が選任されている自動車の使用の本拠について、自動車の安全な運転を確保するために必要な交通安全教育その他自動車の安全な運転に必要な業務の推進を図るため必要があると認めるときは、当該安全運転管理者を選任している自動車の使用者又は当該安全運転管理者に対し、必要な報告又は資料の提出を求めることができる」とあります(道路交通法75条の2の2第1項)。
したがって、アルコールチェックを実施しなかったり、不適切な実施態様であったりした場合には、報告・資料提出を求められるリスクがあります。
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