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公開日:2024.7.12
企業法務【はじめてのМ&A】М&Aの注意点・ポイント
弁護士法人PROの柏木太郎です。
М&Aは、企業を成長させるための有効な手段であるのみならず、ここ最近では後継者確保の目的で行われることも多いです。
中小企業でも盛んにМ&Aが行われており、より身近な存在になったといえます。
今回は、はじめてМ&Aを行う企業向けに、М&A全体を通しての注意点やポイントをご紹介します。
М&Aでお悩みであれば、弊所へお気軽にご相談ください。
1.買い手側の注意点
(1)目的を明確にする
企業の成長や後継者確保など、М&Aを行う目的を明確に定めましょう。
目的が定まっていれば、ベストな買収対象企業を選定できるでしょうし、シナジーも発生させやすいです。
目的が曖昧では、適切な買収対象企業を選定できませんし、М&Aが成立したとしても、その後の経営がうまくいかずシナジーが発生しなかったり、既存従業員の退職に繋がってしまうおそれもあります。
М&Aはあくまで企業の成長や後継者を確保するための手段に過ぎませんから、М&Aを行うこと自体が目的になってはいけません。
(2)必要十分なデューデリジェンス
買収対象企業は、一見して優良企業に見えても簿外債務、不正やトラブルを抱えているおそれがあります。
そこで、買い手にとっては買収対象企業(売り手)の調査=デューデリジェンスが重要になります。
とはいえ、デューデリジェンスには時間も手間もかかります。弁護士等の外部専門家へ依頼した場合には費用もかさむでしょう。
そこで、必要十分なデューデリジェンスの程度を見極める必要があります。
特に小規模のМ&Aであれば、スコープを広げたり長い時間をかける必要性は低いでしょう。
調査の必要性とコスパ・タイパとのバランスが求められます。
(3)М&A成立後の人員や契約関係
買い手にとっては、М&A成立後にどのようにビジネスを拡大させていくが大きな関心事となるでしょうが、ビジネスの前提となる人員や契約関係にも配慮しなければなりません。
人員については、買収対象企業の既存の従業員が適切に引き継がれるようにМ&Aのスキームを組まなければなりませんし、М&A後に退職してしまわないような配慮も求められます。
契約については、買収対象企業が取引先と締結していた契約書を確認し、チェンジオブコントロール条項(COC条項)=М&Aにより支配株主や経営陣が変更した場合に通知等を義務付ける条項が盛り込まれているか確認しましょう。
COC条項を確認しないままにМ&Aを進めてしまうと思わぬ痛手を受けるおそれがあります。
2.売り手側の注意点
(1)安価な価格で売らない
売り手にとっての最大の関心事は売却価格です。
М&Aも交渉事であり、安く買いたい買い手と高く売りたい売り手の利益は相反します。
企業価値の算定方法にもマーケットアプローチやインカムアプローチ等いくつか種類があり、算定方法が変われば算出される金額も変わります。
自社の売却価格として適切な価格となっているか、入念に確認しましょう。
(2)ベストなタイミングで売れるとは限らない
М&Aは買い手の存在がマストであるため、売りたいと思っても買い手が現れなければ売れるものも売れません。
買い手が現れたとしても、予想外に早期でのクロージングを要求されたり、逆に入念なデューデリジェンスをされ交渉が長引くこともあります。
自社が希望するタイミングで売れるとは限りませんので、価格等の他の条件も加味しながらМ&Aに踏み切るか否か検討しましょう。
3.双方の注意点
最近のМ&Aは、仲介会社や金融機関がアドバイザリー契約や仲介契約を結び売り手と買い手の間に入るケースが非常に多いですが仲介会社のクオリティは要注意です。
歯に衣着せぬ物言いをしてしまうと、仲介会社はまともな仕事をしない割には高額な報酬をとっていきます。
というのも、仲介会社はМ&Aを成立させると成功報酬が発生する料金体系をとっているケースが多く、報酬を得たいがために丁寧な検討・協議をすることなくМ&Aの成立を急がせる傾向があります。
特に自社が売り手側の場合はこれが顕著で、仲介会社は買い手側を優先させることが多い(一般的には買い手側の方が大きな企業)ので、売り手である自社の懸念事項を軽視されてしまうおそれがあります。
根本的に、仲介会社は「利益相反」にあるのです。
2024年6月にМ&A仲介会社の大手の株価が急落する事態が発生しましたが、これは、同時期に政府から発表された「新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画」の2024年改訂版案の中で「M&A仲介事業者の利益相反構造」や「高額な手数料」といった問題が指摘されたことが原因と言われています。
仲介会社の言うことを鵜呑みにせず、きちんと自社でも調査・検討しなければなりません。
4.まとめ
今回は、はじめてМ&Aを行う企業向けに、М&Aを行ううえでの注意点をご紹介しました。
買い手側も売り手側も、М&Aを成功させるためには入念な準備が必要です。
М&Aに不安を感じている場合は、お気軽に弊所へご相談ください。
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