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公開日:2024.12.13
企業法務【はじめてのМ&A】М&A全体のプロセス(流れ)の注意点・ポイント
弁護士法人PRO 弁護士の柏木太郎です。
М&Aは、企業を成長させるための有効な手段であるのみならず、ここ最近では後継者確保の目的で行われることも多いです。
中小企業でも盛んにМ&Aが行われており、より身近な存在になったといえます。
今回は、はじめてМ&Aを行う企業向けに、М&A全体のプロセスにおけるフェーズ毎の注意点を解説します。
М&Aでお悩みであれば、弊所へお気軽にご相談ください。
1.事前検討フェーズ
(1)買い手の立場
まず大切なことは、M&Aにより “何を獲得したいのか”、その目的を明確にすることです。
スキームの選択や譲渡価格等、どの場面でも「目的」が軸となります。
そして、 その目的をどうやって達成するのか=誰から獲得するのかを日ごろから検討・準備しておく必要があります。
まず、
ざっくりとした基準(商品、エリア、規模感など)を定め、それを満たす企業(買収候補)を広くリストアップした「ロング・リスト」を作成します。
次に、M&Aに向けた接触をすることを前提に、候補企業をさらに絞り込んだ「ショート・リスト」を作成します。
そして、 リストに挙がった企業と日ごろから良好な関係を築くところまでできればベストです。
そうすることで、M&A案件が持ち込まれた際に迅速に対応できたり、オークションが開催されたとしても買い手として個別に指名してもらえる可能性が高まります。
(2)売り手の立場
「何を」「いくらで」「いつ」「誰に」売るかを検討しておく必要があります。
特に、「いつ」売るかは重要です。
売りたいと思っても買い手が現れなければM&Aできません。
買い手が現れても、交渉が長引き時期を逸したためキャッシュフローが悪化してしまうおそれがあります。
キャッシュフローや従業員のモチベーション等も加味しつつ、ベストなタイミングを見極めなければなりません。
また、「誰に」売るかもポイントです。
買い手が誰でもよいというものではなく、
従業員も含めた当事者全員がポジティブになれる売却先を見つける必要があり、これをクリアするためには計画的にМ&Aを進める必要があります。
2.交渉フェーズ
(1)買い手・売り手共通のポイント
交渉フェーズでは、企業価値を算定した上で具体的な価格の交渉を行います。
ここで重要なのは、 互いに互いの企業価値を高められるような交渉を行うことです。
買い手は売り手のスタンドアローン・バリュー(M&Aを行わず単独で事業を行った場合の価値)をベースに、M&Aによるシナジーを下回る価格で取得できれば事業価値向上が見込まれます。
売り手は事業を保有し続けた場合に見込まれる価値以上の価格で売却できれば得をするといえます。
安く買いたい買い手と高く売りたい売り手との利害は対立しますが、 上記の価格が重なり合う部分を見つけられれば、互いの企業価値を高めるWinWinの取引が実現できます。
そのためには、互いの前提条件や意見を根拠と共に示し、デューデリジェンスにより 情報不足を補っていくことが肝要です。
また、企業価値につき、
スタンドアローン・バリューとシナジーを加えた価格とを区別して交渉に臨むこともポイントです。これが混在したままだと価格の溝が埋まりにくくなってしまいます。
(2)買い手の立場
買い手にとっての何よりも重要なミッションは、適正価格の算定です。
このためには、デューデリジェンスにより情報(リスク)を取得し、その情報を適切に分析しなければなりません。
ここで発見されたリスクへの対応方法としては
といったものが考えられます。
また、「シナジー」をマジックワードに使い、
“多少高額かもしれないがシナジーで返ってくるだろう”などといった曖昧な検討はNGです。
シナジーを価格に織り込む際には、目的に見合ったシナジーの種類や実現可能性を入念に検討する必要があります。(シナジーの詳細→売上シナジー、コストシナジー)。
特に、意思決定を行う取締役に対しては 法律上も善管注意義務として合理的な経営判断が求められますので、適正価格は入念に検討する必要があります。
(3)売り手の立場
売り手の立場でも適正価格の算定が重要なポイントとなりますが、 売り手としては、M&A後の売上やコストを把握して価格に反映することが重要になります。
自社が運営している際の売上やコストは把握しているでしょうが、 事業売却後のそれらも明確に洗い出しておくことが有用です。
自社の洗い出しはセルサイド・デューデリジェンスと呼ばれ、実務的にも重要視されています。
加えて、買い手の属性も踏まえて交渉する必要があります。
買い手が事業会社であれば買い手の既存事業と自社事業とのシナジーが期待できますが、 買い手が投資ファンド等の場合はレバレッジや税金面のメリットといった事業以外の面でシナジーを考慮することになります。
内部的な問題ですが、従業員への説明もポイントになります。
従業員、特に事業のキーパーソンがM&Aに反感を持つと、売却価格が下がったり、最悪の場合はM&Aが頓挫するおそれもあります。
情報共有の方法やタイミングは慎重に見極めなければなりません。
3.実行フェーズ
実行フェーズでは、交渉フェーズの結果(譲渡価格やリスクへの対応方法等)を譲渡契約書(最終契約書)に文章としてアウトプットし決定します。
多くのケースでは、交渉フェーズでやや曖昧な部分が残されているので、その曖昧さを徹底的に排除します。
後々にトラブルを避けるためにも必須かつ重要な作業です。
また、特に買い手は、M&A成立後(クロージング後)に行う、統合に向けた手続き(PMI)が重要になります。
M&Aの目的がシナジーであれ後継者確保であれ、それを達成するためにはM&A成立後に円滑に事業を行う必要があります。
円滑に事業を進めるために必須となるのがPMIです。(PMIの詳細はこちら)
4.まとめ
今回は、はじめてМ&Aを行う企業向けに、М&Aのプロセス全体の注意点をご紹介しました。
買い手側も売り手側も、М&Aを成功させるためには入念な準備が必要です。
М&Aに不安を感じている場合は、お気軽に弊所へご相談ください。
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