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弁護士コラム
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公開日:2025.2.20
企業法務2025年4月法改正 育児介護休業法
弁護士法人PROの伊藤崇です。
今回は、「2025年4月法改正 育児介護休業法」について取り上げます。
1.2025年4月施行の育児介護休業の改正
令和6年(2024年)5月31日に育児介護休業の改正法が公布されました。
改正法の施行日は「令和7年(2025年)4月1日」と「同年10月1日」の予定です。
この記事では、「令和7年4月1日」に施行される改正育児介護休業法の内容について、解説していきます。
人手不足は企業の死活問題になっています。
既存社員の離職防止のためにも非常に重要な法改正になっています。
是非、ご確認下さい。
今回、育児介護休業法が改正された理由は、 男女ともに仕事と育児・介護を両立できるように、以下のような措置を講じられるようにするためです。
以下では、それぞれの改正内容について具体的に解説していきます。
2.改正育児介護休業法の概要とは?
(1)子どもの年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
労働者、特に女性正社員の間で「 フルタイム勤務での残業をしない働き方」や「柔軟なフルタイム勤務」を希望する割合が高まっています。
育児と仕事の両立への期待が高まる一方で、労働環境が追いついていない現状を是正するために、育児介護休業法が改正されました。
企業は、 男女を問わず、希望に応じた働き方を選択できるように、以下の改正に対応する必要があります。
また、以下の改正法の内容については、「すべての企業」が対象となります。
①残業免除の対象拡大:
従来は「3歳未満の子を育てる労働者」に限定されていた所定外労働の制限(残業免除)が、「小学校就学前の子を育てる労働者」へと拡大されました(改正法16条の8)。
②子の看護休暇の柔軟化と範囲拡大:
主に下記3点について改正が行われています。
ⅰ対象となる子の年齢
現行の「小学校就学前」から「小学校3年生まで」に引き上げられました。
ⅱ取得事由の拡大
以下の2つの事由が看護休暇の取得事由に追加されました。
◆入園式・卒園式・入学式といった子どもの学校行事参加
◆感染症に伴う学級閉鎖
ⅲ除外規定の一部廃止
勤続6ヶ月未満の労働者に対する取得制限も撤廃されました。
これにより労使協定で看護休暇の取得を除外できるのは、週の所定労働日数が2日以下の労働者に限られることになりました。
なお、看護休暇の取得可能日数は、現行の「1年間に5日、子が2人以上の場合は10日」から変更はありません。
③3歳未満の子に対する支援措置の拡充:
3歳未満の子を育てる労働者に対する支援策として、1日の所定労働時間を短縮する措置(短時間勤務制度)がありますが、短時間勤務制度を講じることが困難と認められる具体的な業務があり、その業務に従事する労働者がいる場合には労使協定により短時間勤務制度の導入を見送ることができます。
ただ、労使協定によって短時間勤務制度の導入を見送った場合にはそれに代わる代替措置を導入する必要があります。
令和7年4月1日法改正により、この代替措置のひとつとして、テレワークの導入が事業主の努力義務として追加されました。
対象となる労働者は、育児休業に関する制度に準ずる措置や、始業時刻の変更等のほかに、テレワークという代替措置を選択できるようになります。
努力義務であるため罰則等はありませんが、企業には積極的に措置を講じることが求められています。
(2)育児休業の取得状況の公表義務の対象拡大+次世代育成支援対策の推進・強化
従来は、常時雇用する「労働者が1,000人を超える大規模事業主にのみ」義務付けられていた公表義務が、「労働者数300人超の事業主」にまで対象が拡大されました。
公表内容は、男性の「育児休業等の取得率」または「育児休業等と育児目的休暇の取得率」です。
年1回、公表前事業年度の終了後おおむね3か月以内に、インターネットなど、一般の方が閲覧できる方法で公表する必要があります。
また、次世代育成支援対策推進法の実効性を高めるため、企業が策定する行動計画には、
育児休業の取得状況などの実態把握と、数値目標の設定が義務付けられました。
この変更により、具体的な目標を掲げる企業が増え、目標達成に向けた取り組みが進むことが期待されます。
行動計画に盛り込むことが望ましい事項として、例えば以下のようなものがあります。
そして、次世代育成支援対策推進法の有効期限が、現行の令和7年3月31日から令和17年3月31日まで10年間延長されました。
これにより、長期的視点で次世代育成のための企業の取り組みを推進していく仕組みが強化されます。
(3)介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
仕事と介護の両立支援制度を十分活用できないまま介護離職に至ることを防止するために、企業は仕事と介護の両立支援制度の個別周知と意向確認により効果的な周知が図られるとともに、両立支援制度を利用しやすい雇用環境の整備を行う必要があります。
以下の改正法の内容については、「すべての企業」が対象となります。
①個別の周知・意向確認と早期情報提供の義務化:
事業主には、以下の⑴個別周知・意向確認と⑵早期情報提供の2種類の義務が追加されることになります。
⑴介護に直面した旨の申し出をした労働者に対する個別の周知・意向確認
労働者が家族の介護に直面した旨を事業主に申し出た際、事業主は両立支援制度について個別に周知し、労働者の意向を確認することが義務付けられました。
企業が当該労働者に対して周知すべき事項は、以下のとおりです。
また、個別周知や意向確認の方法としては、以下のいずれかの方法で行う必要があります。
【個別周知・意向確認の方法】
ⅰ面談(オンライン面談を含む)
ⅱ書面交付
ⅲFAX
ⅳ電子メール
等のいずれか
但し、ⅲ・ⅳは労働者が希望した場合のみ可能。
⑵介護に直面する前の早い段階(40歳等)での情報提供
労働者が介護に直面する前の早期の段階(具体的には以下のいずれか)で 事業主から労働者に介護離職防止のための情報提供をすることが義務付けられました。
事業主から労働者に対する情報提供期間は、以下のとおりです。
事業主から労働者に対して提供すべき情報提供事項は、以下のとおりです。
また、情報提供の方法としては、以下のいずれかの方法で行う必要があります。
②雇用環境の整備:
企業には、介護に直面する可能性のある労働者を対象にした研修や、制度の活用を促進するための環境整備も求められています。
介護休業や介護両立支援制度等の申出が円滑に行われるようにするため、企業は以下のいずれかの措置を講じる必要があります。
③介護休暇取得の対象拡大:
従来は労使協定に基づき、「勤続6ヶ月未満の労働者」を介護休暇の対象から除外することが可能でしたが、この仕組みが廃止されました。
これにより、勤続期間に関わらず、全ての労働者が介護休暇を取得できるようになりました。
④テレワークの導入を努力義務に追加:
家族を介護する労働者に対し、事業主が講ずる支援措置の一環として「テレワークの導入」が努力義務に追加されました。
これは努力義務であるため罰則等はありませんが、これにより介護中の労働者が在宅で仕事を続けることが可能になり、柔軟な働き方が実現しやすくなります。
3.改正育児介護休業法に対応しなかった場合のペナルティとは?
改正育児介護休業法に対応しない場合、 企業は以下のようなペナルティを受ける可能性があります。
まず、厚生労働大臣や都道府県労働局長から必要な報告を求められたり、助言・指導・勧告を受けたりするリスクがあります。この勧告に従わない場合、企業名が公表される可能性があり、企業イメージの低下や信頼喪失につながります。
さらに、虚偽報告や報告を怠った場合には最大20万円の過料が科されます。
これにより、経済的損失を被るだけでなく、人材募集や取引先への影響も懸念されます。
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