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公開日:2021.9.30
企業法務侵害コンテンツのダウンロード違法化について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は「侵害コンテンツのダウンロード違法化」について取り上げます。
1.侵害コンテンツのダウンロード違法化とは?
近年、インターネットの発達により、インターネット上に様々なコンテンツ(電子書籍、音楽データ、配信動画、オンラインゲーム等)が登場しています。
これらのコンテンツは、一般的には、著作物に該当し、著作権法(※)という法律で保護されています。
ユーザーが、インターネット上のコンテンツを自分のスマートフォンやパソコンにダウンロードすることは、当該コンテンツ(著作物)の複製にあたります。
そして、当該コンテンツの著作権を持っている人(これを著作権者といいます。)から許可を得ずに無断でダウンロード(複製)を行うと、原則として、複製権の侵害となるのですが、著作権法では、個人で楽しむために著作物を複製する行為は、複製権を侵害しないと定めています。
そのため、個人で楽しむために、インターネット上のコンテンツを自分のスマートフォンやパソコンにダウンロードする行為は、複製権の侵害には当たらないとされてきました。
(1) 平成21年の著作権法の改正
しかし、ファイル交換ソフト等を通じた違法に複製・アップロードされたコンテンツ(侵害コンテンツ)がインターネット上にあふれ、著作物の不正利用が社会問題化するようになったため、平成21年に以下のような規定が著作権法に追加されました。
著作権を侵害する自動公衆送信(コンテンツの違法アップロード)が行われていることを知りながら、当該コンテンツをデジタル方式で録音又は録画した場合には、たとえ個人で楽しむためであっても、複製権の侵害とされました。ただし、刑事罰までは科されません。
(2) 平成24年の著作権法の改正
平成21年の法改正後もインターネット上における侵害コンテンツの流通被害が深刻化し続けたため、平成24年に以下のような規定が著作権法に追加されました。
録音・録画された有償著作物(有料で提供されているコンテンツ)の著作権等を侵害する自動公衆送信(違法アップロード)が行われていることを知りながら、当該コンテンツをデジタル方式で録音又は録画した場合には、たとえ個人で楽しむためであっても、刑事罰(2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はその併科)が科されるようになりました。
(3) 令和2年の著作権法の改正
2回の法改正を経てもなお、侵害コンテンツの流通被害が深刻さを増してきているため、令和2年には以下のような規定が著作権法に追加されました。
有償著作物(有料で提供されているコンテンツ)について、著作物を侵害する自動公衆送信(コンテンツの違法アップロード)が行われていることを知りながら、当該コンテンツをデジタル方式で複製(ダウンロード)する行為を反復継続して行った場合(録音・録画に限りません)には、たとえ個人で楽しむためであっても、刑事罰(2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金又はその併科)が科されるようになりました(令和3年1月1日から施行されています)。
※著作権法とは、著作物の保護と公正な利用を図るための法律です。著作物の創作者は、著作権と著作者人格権という権利を取得します。ここで注意が必要なのは、著作権法は著作物の利用形態ごとに権利を定めていて、著作権という1つの権利があるわけではないということです。例えば、著作物の複製には複製権、著作物の上映には上映権、著作物の公衆送信(インターネット上のサーバーへのアップロードなど)には公衆送信権が定められています。
2.どのような場合に刑事罰の対象になるのか?
(1) 平成24年の著作権法の改正で追加された部分
①録音・録画された有償著作物を、②著作物を侵害する自動公衆送信が行われていることを知りながら、③デジタル方式で録音・録画した場合に刑事罰の対象となります。
①録音・録画された有償著作物
例えば、CDとして販売されていたり、有料でインターネット配信されている音楽作品、DVD・ブルーレイとして販売されていたり、有料でインターネット配信されている映画作品などが該当します。
ドラマ等のテレビ番組は、DVD・ブルーレイとして販売されていたり、オンデマンド放送のように有料でインターネット配信されていたりする作品が該当します。
単にテレビで放送されただけで、有償で提供されていない番組は該当しません。
②著作物を侵害する自動公衆送信が行われていることを知っていること
違法にアップロードされたことが確実であると知りながら行う場合が該当します。
例えば、権利者から違法であることを警告された後も、ユーザーが侵害コンテンツのダウンロードを継続している場合等が想定されています。
違法にアップロードされたかどうか分からない場合やアップロードが適法だと誤解した場合は該当しません。
③デジタル方式で録音・録画すること
侵害コンテンツをダウンロードする行為のうち、デジタル方式で録音・録画する場合(音楽データのダウンロード、動画データのダウンロード)が該当します。
画像ファイルのダウンロードやテキストのコピー&ペーストは録音・録画に該当しません。
(2) 令和2年の著作権改正で追加された部分
①有償著作物を、②著作物を侵害する自動公衆送信が行われていることを知りながら、③デジタル方式で複製する行為を、④反復継続して行った場合に刑事罰の対象になります(※)。
①有償著作物
CDとして販売されていたり、有料でインターネット配信されている音楽作品、DVD・ブルーレイとして販売されていたり、有料でインターネット配信されている映画作品などが該当します。録音・録画されている必要はありませんので、販売されている書籍や電子書籍等も該当します。
②著作物を侵害する自動公衆送信が行われていることを知っていること
違法にアップロードされたことが確実であると知りながら行う場合が該当します。
例えば、権利者から違法であることを警告された後も、ユーザーが侵害コンテンツのダウンロードを継続している場合等が想定されています。
違法にアップロードされたかどうか分からない場合やアップロードが適法だと誤解した場合は該当しません。
③デジタル方式で複製すること
侵害コンテンツをダウンロードする行為全般が対象となります。
侵害コンテンツを視聴・閲覧するだけでは該当しません(視聴・閲覧に伴うキャッシュやプログレッシブ・ダウンロードについては別の規定により違法とはなりません)。
④反復継続して行うこと
一定の期間にわたって、複数回、繰り返しダウンロードを行うことを想定しています。
※ただし、二次創作・パロディのダウンロードである場合や軽微な複製である場合には、刑事罰の対象外となることがあります。
3.侵害コンテンツの見分け方について
(1) エルマーク
エルマークとは、音楽・映像のコンテンツについて、正規のサービスを提供していることを示すマークです。
このエルマークが表示されているコンテンツは安心して利用することができます。
エルマークの詳細については、一般社団法人日本レコード協会のホームページ(https://www.riaj.or.jp/leg/lmark/)をご確認下さい。
(2) ABJマーク
ABJマークとは、電子書籍のコンテンツについて、正規のサービスを提供していることを示すマークです。
このABJマークが表示されているコンテンツは安心して利用することができます。
ABJマークの詳細については、一般社団法人電子出版制作・流通協議会のホームページ(https://aebs.or.jp/ABJ_mark.html)をご確認下さい。
なお、エルマークやABJマークがないコンテンツが全て違法なコンテンツというわけではありませんが、違法コンテンツでないかどうか注意して利用する必要があります。
4.むすびに
近年、コンテンツ・ビジネス(コンテンツを販売するビジネスモデル。例えば、電子書籍の販売、動画・音楽配信サイト、オンラインゲームの配信等)の市場規模は拡大してきています。
もし会社でコンテンツ・ビジネスを取り扱うことになった場合、自社のサービスを利用するユーザーによって違法ダウンロードが行われないよう著作権法の規制内容を十分に理解しておく必要があります。
そうでなくとも、会社の業務において、他人の著作物の利用に関し、著作権法のルールを十分に理解している方は少ないのではないでしょうか。
この機会に、著作権法のルールについて社内で確認してみてはいかがでしょうか。
以上
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