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弁護士コラム
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公開日:2021.10.27
企業法務並行輸入と商標権侵害について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は「並行輸入と商標権侵害」について取り上げます。
1.商標権侵害となる場合とは?
時々ニュースで、有名なブランド品の偽物を輸入して、商標法違反で逮捕されるケースを目にします。
これは、商標権を持っている人(商標権者)以外の人が、登録されている商標権の指定商品と同一の商品について、その登録商標と同一の商標を付けたものを輸入すると、商標権者の許可を得ない限り、商標権侵害となるからです。
例えば、ルイ・ヴィトンのカバンの偽物を海外から輸入すると、商標権の侵害となります。
では、偽物ではなく、正規品のルイ・ヴィトンを、正規代理店を通さずに個人的に輸入すること(これを「並行輸入」といいます。)はどうなのでしょうか。
正規品の並行輸入も、形式的には、商標権者以外の人が、登録されている商標権の指定商品と同一の商品について、その登録商標と同一の商標を付したものを輸入するので、商標権侵害になりそうですが、裁判例では一定の要件のもと、商標権侵害にはならないと判断されています。
2.並行輸入とは?
並行輸入とは、外国において、その国の商標権者等によって適法に商標が付された商品を、国内の商標権者等の許諾を得ないで輸入することをいいます。
ルイ・ヴィトン等のブランド品は、外国の商標権者の許諾を得た日本の正規代理店・直営店を通して輸入されますので、日本の正規代理店・直営店を通さずに輸入することは並行輸入に当たります。
3.並行輸入が商標権侵害とならない場合
並行輸入品は、日本の正規代理店や直営店を通さないので、日本の正規代理店や直営店と比べて価格が安いです。そのため、消費者の選択の幅が広がるというメリットがあるとされています。
また、正規品の並行輸入であれば、商標の機能(※)である「出所表示機能」「品質保証機能」を害することがありませんので、以下の(1)~(3)の要件を満たすことで、商標権の侵害にはならないとされています。
※商標の機能に関しましては、弁護士コラム「商標の概要」をご参照ください。
(1) 真正商品であること
当該商標が外国における商標権者等により適法に付されたものであることが必要です。つまり、偽物ではなく、正規品である必要があります。
この真正商品は、商標権者等が製造して最初に流通過程に置いたそのままの姿で流通して消費者の手に渡ることが期待されていますので、国内において商品の小分けをしたり、商品の詰替えをしたりした上で、再包装をして登録商標を付した場合には、品質保証機能に疑義が生じますので、真正商品とはいえないとされています。
(2) 外国における商標権者と日本における商標権者とが同一人であること
外国における商標権者と日本における商標権者とが同一人であるか又は法律的若しくは経済的に同一人と同視し得るような関係にあることによって、当該商標が日本の登録商標と同一の出所を表示するものであることが必要です。これによって、出所表示機能が害されることがないからです。
法律的に同一人と同視し得るような関係とは、例えば、日本における商標権者が外国における商標権者の代理人である総販売代理店であるような場合を指します。
また、経済的に同一人と同視し得るような関係とは、例えば、日本における商標権者が外国における商標権者の親子会社・グループ会社の関係にある場合を指します。
(3) 日本における商標権者が商品の品質管理を行い得る立場にあること
日本における商標権者が直接的に又は間接的に当該商品の品質管理を行い得る立場にあることによって、当該商品と日本の商標権者が登録商標を付した商品とが当該登録商標の保証する品質において実質的に差異がないと評価される場合であることが必要です。これによって、品質保証機能を害されることがないからです。
そのため、外国における商標権者から商標の使用の許諾を得ていた外国の会社が、外国における商標権者との合意に反して、合意した製造国と違う国で製造した商品を並行輸入した場合は、品質保証機能に疑義が生じますので、この要件を満たさないとされています。
4.並行輸入に当たって注意すべき事項
海外のブランド品等を並行輸入するに当たっては、商標権侵害とならないように、上記3(1)~(3)の要件を満たすかどうか、輸入を行う前に確認することが必要になります。
例えば、外国における商標権者自身が製造販売した商品を輸入する場合には、①外国における商標権者自身が商標を付したこと(上記3(1)の点)、②外国における商標権者と日本における商標権者とが同一人であること(上記3(2)の点)を確認することが必要です(①②が確認できれば、上記3(3)の点は通常問題となりません)。
また、外国における商標権者から使用許諾を受けた者が日本における登録商標と同一の商標を付した商品を輸入する場合には、①②に加えて、商標の使用許諾契約上、使用許諾を受けた者が製造国において当該商品を製造し当該商標を付することができる権原を有することまで確認することが必要です。
以上
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