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公開日:2025.11.26
企業法務下請法改正|下請法から取適法への改正ポイント【適用対象の拡大】
弁護士法人PRO 弁護士の柏木太郎です。
令和8年1月1日から、改正された下請法=製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律(略称は取適法(とりてきほう))が施工されます。
改正の重要ポイントは①適用対象の拡大 ②規制内容の追加 ③執行の強化等の3つです。
本記事では、①適用対象の拡大について解説します。
下請法の適用対象は取引内容と資本金の2つの基準が設けられていましたが、
今回の改正で両者とも拡大されました。
これまでよりも法規制の及ぶ範囲が広くなるため、事業者にはよりコンプライアンスが求められます。
改正下請法に対応した体制を構築したい事業者の方は、お気軽に弊所までご相談ください。
1.運送委託の対象取引への追加<物流問題への対応>
これまで、下請法が適用される取引は、製造委託、修理委託、情報成果物作成委託、役務提供の4つでした。 改正により、取適法では新たに 特定運送委託も追加され、5つの取引へ適用範囲が拡大されました。
特定運送委託とは、製造・販売等の目的物の引渡しに必要な運送の委託をいい、4つのタイプがあります。
これにより、製造加工や役務提供のみならず、メーカーや卸売業者などの荷主が運送事業者へ配送を委託するケースも取適法が適用され、荷待ち時間の未払いや不当に低額な運賃などの是正が期待されています。
なお、取適法とフリーランス保護法とがいずれも適用される場合、 フリーランス保護法が優先して適用されます。
2.従業員基準の追加<適用基準の追加>
これまでの下請法の適用範囲の基準は取引内容と資本金基準のみでしたが、今回の改正により、従業員基準も追加されました。
資本金の額に関わりなく、委託側の従業員が300人超で、受託側が300人以下の場合は取適法が適用されます(情報成果物作成委託等は100人)。
これにより、資本金だけでみると下請法が適用されなかった取引においても取適法が適用されることとなります。
例えば資本金は少額だが従業員が多い企業と、資本金は高額だが従業員が少ない企業との取引にも、従業員の人数に差があれば取適法が適用され、より広く中小企業が保護を受けられるようになることが期待されています。
資本金基準もこれまでどおり存続します。
資本金基準と従業員基準のどちらか一方を満たせば取適法が適用されますから、これまでより適用対象は確実に拡大されます。
資本金は登記という公の情報を見れば誰でも確実に確認できますが、従業員の数を外部から正確に把握することは困難です。
特に発注側の立場にある企業においては、知らない間に取適法に違反してしまっていたという事態を防ぐためにも、受託側に対し、受託側の従業員の人数を申告することを求めたり、従業員が300人(あるいは100人)を超えた場合は直ちにその旨申告するよう求めたりするといった対応が求められるでしょう。
契約書や覚書にこのような申告義務を定めることも有効です。
取適法の基準となる「従業員」とは、常時使用する従業員をいい、アルバイトやパートも含まれます。
日雇労働者は含まれませんが、1か月を超えて引き続き使用される者は「従業員」に含まれます。
常時使用する従業員については賃金台帳の作成が義務付けられますから、 会社の賃金台帳を確認すれば「従業員」の数を把握できます。
3.まとめ
下請法はビジネスを適法に営むうえで重要な法律ですから、今回の改正は実務に与える影響が非常に大きいです。
下請けへ発注する場合は取適法を遵守するよう細心の注意が必要ですし、下請けとして受託する場合は きちんと取適法に準拠された取り扱いがなされているかチェックしなければなりません。
昨今は公正取引委員会による取締事例も多く見受けられますから、いずれの立場でも、自社を守るためには取適法の遵守が強く求められます。
当事務所は取適法への対応支援に積極的に取り組んでいます。
発注側・受託側のいずれであっても、取適法へきちんと対応したいとお考えの事業者の皆様は、ぜひ当事務所へお気軽にご連絡ください。
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