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公開日:2021.12.9
人事・労務施行直前!中小企業 ハラスメント相談窓口の設置
弁護士法人PROの伊藤崇です。
パワハラ防止法(労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律)の中小企業に対する施行開始が間近に迫ってきました。
中小企業には2022年(令和4年)4月からパワハラ防止法が施行されます。
パワハラ防止法の施行開始により、中小企業も様々な対応を取ることが義務付けられています。
そこで、今回は、パワハラ防止法によって義務化された事項について再度取り上げるとともに、義務化された事項の一つである相談窓口の設置の進め方について取り上げています。
1.事業主が職場におけるパワハラに関し雇用管理上講ずべき措置の内容【義務化された事項】
事業主は、職場におけるパワハラ防止のために雇用管理上以下の⑴から⑷の措置を講じる義務が課されました。
⑴ 方針等の明確化及びその周知・啓発
事業主は、職場におけるパワハラに関する方針の明確化、労働者に対するその方針の周知・啓発の措置として、以下のⅰ、ⅱの措置を講じる必要があります。
⑵ 相談・苦情(以下「相談」)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、以下のⅰ、ⅱの措置を講じる必要があります。
⑶ 職場におけるパワハラに係る事後の迅速かつ適切な対応
パワハラ相談があった場合には、事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、以下のⅰ~ⅳの措置を講じる必要があります。
⑷ 上記⑴から⑶までの措置と併せて講ずべき措置
上記⑴から⑶までの措置と併せて以下のⅰ、ⅱの措置を講じる必要があります。
過去の弁護士コラムで詳しく取り上げていますので、是非、そちらもご確認いただければと思います。
⇒ 2020年10月16日公開 弁護士コラム「パワハラ防止法」
2.ハラスメント相談窓口の設置
⑴ はじめに
2022年4月以降は中小企業においてもハラスメント相談窓口を設置する必要があります。
既にそうした窓口を設置している企業もあると思いますが、そもそも相談窓口がない、あるいは、相談窓口が明確になっていない企業も相当数あるように思います。
以下ではハラスメント相談窓口の設置方法についてご紹介しています。あくまで一例ではありますが参考にしていただくと幸いです。
⑵ ハラスメント相談窓口の関連規程の整備
ハラスメント相談窓口を設置しないといけない・・・しかし、何から手を付けたらいいか分からない・・・。そうした悩みを抱える中小企業は数多くあるように思います。
遠回りに思われるかもしれませんが、ハラスメント相談窓口の関連規程(例えばハラスメント相談窓口設置規程)を整備するところからスタートすることをお薦めします。
というのも、そうした関連規程には相談窓口の設置に必要なエッセンスが詰まっているから、です。
ハラスメント相談窓口の関連規程の整備を通じて、例えば相談窓口の責任者をどうするか?担当者はどうするか?といった決定しないといけない項目が明確になり、それらの項目を決めていくことにより、自ずと相談窓口の設置も進んでいきます。
⑶ 相談窓口で受け付けるハラスメント相談の種類
パワハラ防止法の適用開始、という字面だけ見ると、パワハラ相談の窓口だけ設置すればいいのでは?と誤解しがちです。
注意をしていただきたいのは、パワハラだけではなくセクハラやマタハラ(妊娠・出産・育児休業・介護休業に関するハラスメントのこと 以下同じです。)についても相談窓口の設置が義務化されているということです。大企業だけではなく中小企業においても相談窓口の設置が義務化されています。
そして、ハラスメント相談については一元的に応じることができる体制を整備することが望ましい、とされています。
実際上も、パワハラ相談窓口はここ、セクハラ相談窓口はそこ、マタハラ相談窓口はあそこ・・・というように窓口を分けるのはマンパワーの点からしても非効率的ですし、相談する側からしても混乱を招きますので、パワハラ・セクハラ・マタハラの各種ハラスメント相談の窓口は一本化しておいた方が適切です。
⑷ 相談窓口の責任者・担当者の決定
■相談窓口の責任者と担当者を決定します。
■責任者は人事部長や総務部長が適任であることが通常でしょう。
■担当者は、ハラスメントの内容(典型的にはセクハラ)によっては相談者が異性には話しづらいと感じるようなケースが多々あります。そのため、相談窓口の担当者には男女を最低1名ずつ配置するのが適切です。
■ハラスメント相談窓口を実効性のあるものにするためには(言い換えれば,設置しただけで終わらせないようにするには)、責任者や担当者に変更がある都度、社内に周知する、ということも重要です。いざ相談したいと思った際に責任者・担当者が誰であるか、ということは相談者にとって重要な情報になります。
⑸ 相談窓口の利用者
■相談窓口の利用者(相談者)は自社の役員・社員です。
■ハラスメントの被害者本人は自分自身で被害申告ができないケースも多々あります。ハラスメント被害によってうつ病を発症してしまっているようなケースでは相談窓口を利用する気力すらなく、ハラスメント被害がさらに深刻化していき最悪は自殺にまで至るケースもあります。そこで、相談窓口の利用者(相談者)は被害者本人に限るのではなく、ハラスメント被害の目撃者も利用できるようにし、広く相談を募るようにするのが適切です。
⑹ 相談窓口の相談対象となる言動
⑶で述べた相談窓口で受け付けるハラスメント相談の種類と重複しますが、相談対象となる言動にはパワハラだけではなく、セクハラ、マタハラ等も含まれるとしておくのが適切です。
⑺ 苦情・相談の方法、担当者の対応(マニュアル・フローの整備)
■相談者が相談窓口を利用しようとする場合に、匿名でも利用できるかどうかを決定します。匿名の範囲についても氏名だけに限定して考えるのではなく、性別や部署、役職など複数項目で相談者の情報を明かすか伏せるかを決定できるようにしておくとよいでしょう。
■実際の相談を受け付ける際には相談者と同性の担当者が最低1名は含まれるようにするのが適切です。
■相談窓口の責任者や担当者自身がハラスメント相談の関係者になっている場合には、その責任者ないしは担当者は当該相談への対応に関与することを禁止するのが適切です。
■担当者間での対応のバラツキや抜け漏れ遅れの防止のために相談窓口担当者のために対応マニュアルや対応フローを準備しておくのが適切です。簡単なものであっても、そうしたマニュアルやフローがあるのとないのとでは担当者の負担も大きく変わるでしょうし、相談者側の印象も変わるように思います。
⑻ 調査への協力・関係者の保護
■ハラスメント相談では加害者と被害者の言い分が食い違うことも多くあります。そうした場合には目撃者へのヒアリングが重要になりますが、目撃者は自分に累が及ぶことを恐れて調査に非協力になることも想定されます。そこで、会社が求めた場合には調査に協力することを社員に義務付けることも検討すべきです。
■他方で、相談窓口を利用したり、調査に協力したことによって、プライバシーが侵害される結果になったり、不利益な取扱を受けるようになったのでは、誰も相談窓口を利用しなくなります。ハラスメント相談窓口を実効性のあるものにするためには相談者や調査協力者を厚く保護することが不可欠であり、具体的にはプライバシー保護と不利益取扱の禁止を徹底する必要があります。これは法律上の義務事項でもあります。
⑼ 相談窓口の周知・研修
■相談窓口の設置の大きな目的は被害が深刻化しないうちに早い段階で芽を摘む、という点です。せっかく相談窓口を設置しても、それを社内に周知しなければ利用はされません。相談窓口設置時の周知は当然のこと、定期的に社内周知をしていくことが適切です。
■ハラスメント予防のためには、社内で定期的にハラスメント予防の研修を行い、役員・社員の意識を高めていくことが重要です。
以上、ハラスメント相談窓口の設置方法の一例についてご紹介しました。
当事務所では、ハラスメント相談窓口に関する各種ドキュメント類(規程・マニュアル・フロー)の整備や相談窓口の立ち上げ、研修業務、外部相談窓口業務の対応など、ハラスメント関係の業務に広く対応しております。
お気軽にご相談いただければ幸いです。
以上
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