弁護士法人PRO | 人事 労務問題 中小企業法務 顧問弁護士 愛知 名古屋 | 伊藤 法律事務所
弁護士コラム
Column
Column
公開日:2026.9.24
人事・労務うつ病の社員の休職・復職で会社が注意すべきポイント
弁護士法人PROの弁護士元木琢己です。
社員から「
うつ病と診断されたので休みたい」と申し出があった場合、会社はどのように対応すべきでしょうか。
また、休職中の社員から「復職したい」と申出があった場合、会社は何を確認すべきでしょうか。
うつ病などのメンタルヘルス不調がある社員について、会社には安全配慮義務があります。
そして、そうした社員の健康状態に配慮しながら、適切に対応する必要があります。
もっとも、小規模な会社では、人事部門や産業医がいないことも多く、社長や担当者が判断に迷う場面も少なくありません。
本記事では、こうしたうつ病の社員の休職・復職対応について、会社が注意すべきポイントを解説します。
1.まずは就業規則の休職制度を確認する
休職とは、病気などで働くことが難しくなった社員について、すぐに退職や解雇とするのではなく、労働契約を維持したまま、一定期間働くことを免除する制度です。
ただし、
休職制度は法律上当然に決まっている制度ではありません。
会社の就業規則や雇用契約で定められていること前提の制度であるため、まずは就業規則を確認しましょう。
特に、次の点が重要です。
休職制度がある場合、会社はその内容に沿って対応する必要があります。
制度の内容を確認しないまま対応すると、後からトラブルになるおそれがあります。
2.休職させるかは医学的な情報を踏まえて判断する
社員がうつ病と診断されたからといって、必ず休職させればよいわけではありません。
反対に、本人が「働けます」と言っているからといって、そのまま勤務を続けさせてよいとも限りません。
休職は、社員に一定期間働くことを認めない措置であり、本人への影響も大きいものです。
そのため、医学的な根拠が不十分なまま休職を命じることは避けるべきです。
もっとも、大切なのは、医学的な情報を踏まえて、就業規則等で定める休職事由に該当するかを判断することです。
したがって、会社は、主治医の診断書などを確認し、療養の必要性や勤務への支障の程度を把握する必要があります。
このような視点から、休職事由に該当するかを確認していくことが適切です。
3.休職中も状況を確認する
休職させた後、休職期間が満了するまで何もしないという対応は適切ではありません。
復職できるかどうかを判断するためには、休職中から社員の状況を把握しておく必要があるためです。
たとえば、定期的に診断書の提出を求めたり、本人と連絡を取ったりすることが考えられます。
ただし、うつ病などの場合、会社からの連絡が本人の負担になることがあり、上司や同僚との接触自体が、症状を悪化させることもあります。
そのため、 連絡方法や頻度には注意が必要です。
これらを、本人の状態や主治医の意見も踏まえて決めることが望ましいです。
また、健康情報は非常に個人的な情報です。
会社は、
必要な範囲を超えて情報を集めたり、社内で安易に共有したりしないよう注意しましょう。
4.「復職可能」の診断書だけで判断しない
(1)主治医の「復職可能」という判断だけで復職を決めない
休職中の社員から、「復職可能」と書かれた診断書が提出されることがあります。
しかし、その診断書だけで復職を決めるのは慎重であるべきです。
主治医は、本人の病状を把握しています。
一方で、
会社で実際に担当する仕事の内容や、職場での負担まで詳しく把握しているとは限りません。
したがって、実際の業務内容を十分に考慮しないまま、「復職可能」と判断している場合もあります。
会社が、復職の可否を判断する上で重要なのは、単に症状が改善したかどうかだけではありません。
重要なのは、実際の職務を通常の程度に行える状態まで回復しているかです。
そのため、必要に応じて、本人の同意を得たうえで、主治医に仕事内容を説明し、会社指定医や産業医の意見を踏まえて復職の判断をすることが大切です。
(2)元の仕事が難しい場合も、直ちに退職とは限らない
では反対に、休職前と同じ仕事を十分にできない場合、会社は「復職不可」と判断して復職を認めなくてもよいのでしょうか。
休職前の仕事が難しいからといって、直ちに復職不可となるとは限りません。
特に、職種や業務内容を限定せずに採用している社員については、
他に現実的に担当できる業務がないかを検討する必要があります。
たとえば、本人の経験、能力、役職、会社の規模、配置できる部署の有無などを踏まえて、担当可能な業務がないかを判断します。
また、休職期間満了時に完全には回復していなくても、短期間で通常勤務に戻れる見込みがある場合があります。
その場合には、 一定期間の業務軽減や、休職期間の延長を検討すべきこともあります。
このように復職させるかを判断する際には、当該社員に勤務可能な業務はないかという点から考えることが大切です。
5.休職期間満了による退職は慎重に判断する
就業規則に、「休職期間満了までに治癒しない場合は退職」と定めている会社もあります。
しかし、
休職期間が満了したというだけで、機械的に退職扱いにすることには注意が必要です。
ここでいう「治癒」とは、単に病名がなくなることではありません。
前述と同様、職務を通常の程度に行える健康状態まで回復しているかが問題になります。
そのため、会社は、休職期間満了時点の状態を慎重に確認する必要があります。
うつ病の社員の休職・復職では、 形式的な判断を避けることが大切です。
「診断書があるから休職」
「復職可能と書いてあるから復職」
「休職期間が終わったから退職」
このように単純に判断すると、トラブルになるおそれがあります。
会社は、本人の健康状態、実際の仕事内容、医学的な意見、会社の規模、配置可能な業務などを一つずつ確認する必要があります。
特に、休職期間満了による退職は、雇用を終了させる重大な判断です。
専門家の意見を踏まえながら、具体的な事情を考慮し、当該社員が働き続けることはできないかを考えていくことが大切です。
オンライン会議・
チャット相談について
まずはお気軽に、お電話またはフォームよりお問い合わせください。