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弁護士コラム
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公開日:2022.2.10
人事・労務改正育児・介護休業法の施行について
弁護士法人PROの弁護士の伊藤崇です。
2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月から段階的に施行されます。
今回の改正では「男性による育児休業の取得促進」を主眼としながらも、より多くの労働者に育児休業を取得させやすくするための措置が盛り込まれています。
法改正にともない、就業規則の変更が必要になる企業も多いと考えられますので、各企業は法律の内容を正しく把握しておきましょう。
1.雇用環境の整備、周知や意向確認の義務化
従業員による育児休業取得の申出を促進するため、改正法では企業へ雇用環境を整備すべき義務が課されます。
具体的には以下のような対応を1つ以上、とらねばなりません。
また妊娠や出産の申出をした労働者に対しては、個別に育休制度について以下の説明を行い、意向確認をする義務が課されます。
雇用環境の整備や周知、意向確認の義務化については本年4月1日に施行されます。
2.有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和
次に、契約社員を始めとする有期雇用労働者が育児・介護休業を取得する際の要件が緩和されます。
これまで有期雇用労働者は「事業主に引き続き雇用された期間が1年以上」という要件を満たさねば育休を取得できませんでした。
改正法ではこの要件が撤廃され、無期雇用の従業員(いわゆる正社員)と同じ要件を満たせば育休を取得できるようになります。
正社員と共通の育休取得要件
● 子どもが1歳6か月になるまでに雇用契約が終了することが明らかではないこと
※ただし労使協定を締結した場合、雇用期間が1年未満の労働者を育休取得対象から除外できます。
有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和は本年4月1日に施行されます。
3.「産後パパ育休」制度の創設、育児休業の分割取得
今回の育児・介護休業法の目玉ともいえるのが、「産後パパ育休制度」の創設です。
産後パパ育休制度とは、従来の育休制度とは別に、子どもの出生後8週間以内に4週間まで育児休業を取得できる制度です。
原則として休業の2週間前までに申出をすれば休業できます。
(従来の育休制度を取得するには原則として1か月前までに申し出をしなければなりません)。
主にこれまで育休を積極的に取得していなかった男性へ取得させることを目的としているので、わかりやすく「産後パパ育休制度」とよばれます。
産後パパ育休制度は育休制度と別途取得できる
産後パパ育休制度は従来の育休制度とは別制度であり、改正法の施行後も従来の育休制度は残ります(ただし分割取得が可能となるなど、より柔軟な内容に改正されます)。
産後パパ育休制度は従来の育休制度とは別に取得が可能です。
分割取得が可能になる
産後パパ育休制度では、2回までの分割取得が認められます。
休業の合間に仕事を挟めますので、柔軟に対応しやすくなるメリットがあるでしょう。
ただし当初に分割取得の希望を申し出る必要があります。
休業中の就業について
従来の育休制度では、休業中の就業は原則として認められていませんでした。
産後パパ育休制度では、労使協定を締結すれば労働者が合意した範囲で休業中にも就業が可能となります。
以上、産後パパ育休制度の施行日は本年10月1日です。
産後パパ育休制度の創設のタイミングに合わせて従来の育休制度も若干改正されます。
これまでは原則として分割取得ができませんでしたが、2022年10月1日からは従来の育休制度も2回まで分割取得できるようになります。
また従来は育休期間を1歳以降も延長する場合、開始日が1歳や1歳半に固定されていましたが、今後はより柔軟に対応できるようになります。
さらに1歳以降の再取得についても、従来は認められていませんでしたが、改正法施行後は特別な事情があれば再取得できるようになります。
4.育児休業の取得の状況の公表の義務付け
今回の改正によって従業員数1,000人を超える企業に対し、年に1回、育児休業の取得状況公表が義務付けられます。
公表すべき事項は省令で定められ、具体的には「育児休業等の取得率」または「育児休業等及び育児目的休暇の取得率」とされています。
育児休業取得状況の公表義務化が施行されるのは、2023年4月1日です。
5.就業規則の改定が必須に
改正育児・介護休業法が施行されるにともない、多くの企業において就業規則の改定が必須となります。
特に「産後パパ育休制度」が導入されると、従来の育休に関する規定だけでは対応できません。
「雇用環境の整備、周知や意向確認の義務化」「有期雇用労働者の育児・介護休業取得要件の緩和」についての改正法施行日は本年4月1日、「産後パパ育休制度の創設」「育児休業の分割取得」についての改正法施行日は本年10月1日の予定ですので、それまでに必ず適切な内容に改定して体制を整えましょう。
当事務所では労務管理や就業規則の作成、改定の支援に積極的に取り組んでいますので、よろしければ一度、ご相談ください。
以上
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