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公開日:2022.9.9
人事・労務産後パパ育休制度とは?「育休の法改正(令和4年10月1日~)」について
弁護士法人PROの弁護士の伊藤崇です。
2022年、法改正によって「育休(育児休業)」に関する制度が大きく変わります。
2022年10月からはいわゆる「産後パパ育休制度」が導入され、これまでの「パパ休暇」は廃止されます。
改正法に対応するため、法律の内容や各企業に求められる対処方法を知っておきましょう。
1.育児介護休業法 改正点の概要
育児介護休業法は、育児休業や介護休業について定める法律です。
2022年から2023年にかけて改正法が段階的に施行されることが決定しています。
● 2022年4月施行の改正点
2022年4月に施行された改正点は、各企業へ「育休を取得しやすい雇用環境の整備義務」「妊娠や出産を届け出た従業員に対し、育休の取得を促進すべき義務」が課されたことです。
有期雇用労働者の育休取得要件も緩和されました。
● 2022年10月施行の改正点
2022年10月、いわゆる「産後パパ育休制度」が施行されます。
従来のいわゆる「パパ休暇制度」が廃止されて、新たに産後パパ育休制度が導入され、育休の分割取得も可能となります。今回の法改正の目玉といってよいでしょう。
● 2023年4月施行の改正点
2023年4月からは、育休取得状況の公表が義務化されます。ただし対象となる企業は従業員数が1000人を超える企業に限られます。
1-1. 産後パパ育休とは
2022年10月から導入される「産後パパ育休」とは、子どもの出生後8週間以内に4週間まで取得できる育児休業をいいます。
正式名称は「出生時育児休業」であり「産後パパ育休」は通称です。
原則として、休業の2週間前までに従業員側から申し出をしなければなりません。
産後パパ育休の期間中は原則として就業させてはなりません。ただし労使協定があれば就業も可能です(就業日数や就業時間の上限はあります)。
産後パパ休業では、これまでに認められていなかった「育児休業の分割取得」が可能となります。分割できる回数は2回までで、当初に産後パパ育休を申し出るときにまとめて分割取得の希望を伝えなければなりません。
これまでの育休制度では分割取得が認められていなかったところ、従業員の便宜に配慮した法改正内容といえるでしょう。
1-2. 従来の「パパ休暇」は廃止される
2022年10月からの産後パパ育休制度導入により、従来のパパ休暇は廃止されます。
パパ休暇とは、父親が子どもの出生日から8週間以内に取得できる育児休業です。
1-3. 従来の育児休業との併用も可能
産後パパ育休制度が施行されても、従来からある「通常の育児休業制度」は有効なままです。
父親は産後パパ育休制度と通常の育休の両方を取得することも可能です。
2022年10月からは通常の育休も2回まで分割取得ができるようになるので、子どもの生まれた男性は子どもが1歳になるまでの間、最大で4回まで分割して育休を取得できるようになります。
従来の育休制度の変更点
2022年10月からは従来の育休制度も変わります。
まずこれまで分割取得はできませんでしたが、2回までの分割取得が可能となります。
また従来、育休を延長する場合の開始日は子どもが1歳や1歳半の時点に固定されていましたが、改正後は開始日が柔軟化されます。
さらに子どもが1歳になった以降の再取得も認められるようになります。
2.改正法の施行・産後パパ育休の開始時期
改正育児介護休業法は段階的に施行されます。まとめると以下の通りとなります。
2-1. 2022年4月施行
雇用環境整備や従業員への育休に関する個別周知、意向確認の義務化規定が施行されます。
2-2. 2022年10月施行
産後パパ育休制度(育休の分割取得含む)が施行されます。
2-3. 2023年4月施行
従業員数が1000人を超える企業に対し、育児休業取得状況の公表が義務化されます。
3.育児介護休業法改正の対象となる企業
2022年4月と10月の改正点については、すべての企業が対象です。各企業は産後パパ育休制度を導入しなければならないので、対応しましょう。
2023年4月1日に施行される「育児休業取得状況の公表義務化」については従業員数1000人を超える企業が対象となっています。
4.改正法へ対応するために企業が実施すべきこと
産後パパ育休制度を導入するため、各企業には2022年10月へ向けて以下のような対応を迫られます。
4-1. 育児休業取得手続きの改正
まずは就業規則や社内規定において、育児休業の手続改正を行いましょう。
産後パパ育休制度の導入により、育休の申出の手続や時期、期間などが変わります。
育休の対象者や申出、撤回、期間などの規定を見直す必要があります。
4-2. 従来の制度の削除
従来の「パパ休暇」(父親が子どもの出生後8週間以内に育休を取得する場合の再取得の特例)は、2022年9月30日に廃止されます。
社内規程から削除しましょう。
4-3. 雇用環境の整備
育児介護休業法改正により、各企業に雇用環境の整備が求められています。
対応するための規定を設けて対応できる体制を整えましょう。
4-4. 公表体制の確立
2023年4月から、従業員数が1000人を超える企業では、年一回育児休業の取得状況を公表しなければならなくなります。
今から育休取得状況に関するデータを集めて公表できるように情報を整理しておきましょう。
育児介護休業法に違反しても刑事罰は適用されません。
ただし違反すると労働局からの助言や指導、勧告を受ける可能性があります。
従わない場合、企業名が公表されて社内外での信用を失うリスクも発生します。
求人への応募が減って良い人材を集めるのも難しくなる可能性があるので、違反すべきではありません。
また報告を怠った場合や虚偽報告をした場合には、20万円以下の過料の制裁が加えられる可能性もあります。
刑事罰がないだけで一定のペナルティはあるので、企業として育児介護休業法の改正にきちんと対応する必要があるといえるでしょう。
今回は新たに施行される「産後パパ育休制度」を中心に、改正育児介護休業法について解説しました。
産後パパ育休制度は2022年10月に導入されます。
もしも体制が整っていないなら、早急に就業規則や社内規定の改正等の整備を進めなければなりません。
当事務所では各企業に対する法的なアドバイスや社内規定の策定支援に積極的に取り組んでいます。
疑問や不安がありましたらお早めにご相談ください。
以上
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