弁護士法人PRO | 人事 労務問題 中小企業法務 顧問弁護士 愛知 名古屋 | 伊藤 法律事務所
弁護士コラム
Column
Column
公開日:2023.3.31
企業法務【名古屋/知的財産】技術的制限手段無効化等の提供行為への規制(不正競争防止法)について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は、「技術的制限手段無効化等の提供行為への規制(不正競争防止法)」について取り上げます。
1.不正競争防止法とは
不正競争防止法とは、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」法律です。
不正競争防止法では、不正競争行為として以下の10の類型を規定し、不正競争行為を行った者に対しては、差止めの請求や損害賠償の請求、信用回復の措置を求めることができ、不正競争行為の内容によっては刑事罰(※)も科されます。
※ 不正の利益を得る目的、又は営業上技術的制限手段を用いている者に損害を加える目的で、⑥の行為を行った者に対しては、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処せられ、場合によっては懲役刑と罰金刑が両方科される場合があります。また、会社の従業員や役員がこれらの行為を行った場合、会社にも3億円以下の罰金が科されることがあります。
<不正競争行為の類型>
①周知な商品等表示の混同惹起
(弁護士コラム「周知又は著名な商品等表示への規制(不正競争防止法)」を参照ください)
②著名な商品等表示の冒用
(弁護士コラム「周知又は著名な商品等表示への規制(不正競争防止法)」を参照ください)
③他人の商品形態を模倣した商品の提供
(弁護士コラム「商品形態の模倣への規制(不正競争防止法)」を参照ください)
④営業秘密の侵害
(弁護士コラム「営業秘密の保護(不正競争防止法)」を参照ください)
⑤限定提供データの不正取得等
⑥技術的制限手段の効果を妨げる装置等の提供
⑦ドメイン名の不正取得等
⑧商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示
(弁護士コラム「誤認惹起表示への規制」を参照ください)
⑨信用棄損行為
⑩代理人等の商標冒用
今回は、裁判例で製品の販売差止めや廃棄が認められたり、刑事事件に発展したりしている「⑥技術的制限手段の効果を妨げる装置等の提供」に焦点を当ててみます。
代表的な事件としては、以下のものがあります。
2.技術的制限手段の効果を妨げる装置等の提供とは
不正競争防止法では、
① 営業上用いられている技術的制限手段により制限されている影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置等を譲渡したりする行為
② 特定の者以外の者に影像の視聴等をさせないために営業上用いられている技術的制限手段により制限されている影像の視聴等を当該技術的制限手段の効果を妨げることにより可能とする機能を有する装置等を譲渡したりする行為
を不正競争として規制しています。
①の例としては、
などがあります。
②の例としては、
などがあります。
コンテンツ産業の発展に伴い、コンテンツを提供する企業が、コンテンツを享受する消費者から直接対価を受けられるように、対価を支払わなければコンテンツをコピーしたり視聴したりできないような技術的手段を施すことが多くなっています。
そのため、コンテンツを提供する企業の正当な経済活動を守るために、技術的手段を無効化し、又は無効化するための機器等を販売したりする行為が、不正競争として規制されています。
(1)技術的制限手段とは
技術的制限手段とは、音楽・映画・写真・ゲーム等のコンテンツの無断コピーや無断視聴を防止するためのコピーコントロール技術やアクセスコントロール技術のことです。
例えば、映画が録画されているDVDに施されているダビング防止措置や有料の衛星放送やケーブルテレビに契約者以外の者が視聴できないように施されているスクランブル方式などがあります。
技術的制限手段には、信号方式によるものと暗号(変換)方式によるものがあります。
信号方式とは、視聴等機器が特定の反応をする信号を記録媒体に記録したり、送信したりする方式によって、無断コピーや無断視聴を防止するものです。
信号方式には、視聴等機器がある信号を受信したときに影像の視聴等を阻害するもの(検知→制限方式)と、視聴等機器がある信号を受信したときに初めて影像の視聴等を可能とするもの(検知→可能方式)の両方を含むと一般に考えられています(ただし、見解は分かれています)。
暗号(変換)方式とは、視聴等機器が特定の変換を必要とする影像、音もしくはプログラムを変換して記録媒体に記録したり、送信したりする方式によって、無断コピーや無断視聴を防止するものです。
(2)装置等を譲渡したりする行為とは
不正競争の対象となるのは、以下の行為です。
規制対象 |
規制行為 |
・技術的制限手段の効果を妨げることにより影像の視聴等を可能とする機能を有する装置 |
・装置等を譲渡する行為 |
・技術的制限手段の効果を妨げることにより影像の視聴等を可能とする機能を有するプログラム |
・プログラム、指令符号を電気通信回線を通じて提供する行為 |
・技術的制限手段の効果を妨げることにより影像の視聴等を可能とするサービス |
・サービスを提供する行為 |
(3)適用除外
・技術的制限手段の試験・研究のために用いられる装置等の譲渡や、技術的制限手段の試験・研究目的で行われるサービスの提供行為
は、不正競争に該当しません。
リバースエンジニアリング等の技術的制限手段の発展のために行うものについて、不正競争から除外する趣旨です。
3.おわりに
商品の販売や輸出入において、その販売や輸出入が技術的制限手段無効化の提供行為に当たってしまうと、商品の販売差止めや商品の廃棄、損害賠償を請求されたり、犯罪に該当したりしてしまう可能性もあります。
もし、判断に迷うことがあれば、当事務所の弁護士までご相談ください。
以上
オンライン会議・
チャット相談について
まずはお気軽に、お電話またはフォームよりお問い合わせください。