弁護士法人PRO | 人事 労務問題 中小企業法務 顧問弁護士 愛知 名古屋 | 伊藤 法律事務所
弁護士コラム
Column
Column
公開日:2023.4.28
企業法務【名古屋/インターネット問題】インターネット上の書き込みへの対応について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は、「インターネット上の書き込みへの対応」について取り上げます。
1.はじめに
インターネット上で、自社の名誉を傷つけるような事実無根の書き込みなど、自社の権利を侵害するような投稿がなされた場合、以下の3つの対応が考えられます。
②③に関し、投稿者を特定するための手続(発信者情報開示手続)については、プロバイダ責任制限法(※1)の改正によって令和4年10月1日から新しい手続が始まったことは、弁護士コラム「【令和4年10月1日施行】プロバイダ責任制限法の改正について」でお伝えした通りです。
今回は、①投稿記事の削除請求について、解説していきます。
※1 プロバイダ責任制限法とは、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」の略称です。
2.投稿記事の削除請求について
(1) 削除請求の相手方について
自社の権利を侵害するような書き込みを削除するためには、まず、誰に削除を請求すべきかを特定する必要があります。
① 投稿者本人
投稿者が自分でアカウントを開設して記事を投稿しているブログやウェブサイトの場合、投稿者本人が記事の削除権限を持っていますので、投稿者本人を相手に削除請求を行います。
しかし、口コミサイトや匿名掲示板等への書き込みは、投稿者本人が記事を削除できないケースも多くあります。
そのような場合には、投稿者本人に削除請求をしても削除することができません(匿名掲示板や口コミサイトでは、そもそも投稿者本人が直ちに特定できないという問題もあります)ので、投稿者本人を相手とすることができません。
② ウェブサイト運営者(管理者)
口コミサイトの運営者や匿名掲示板の管理者等のウェブサイト運営者(管理者)は、ウェブサイトに投稿された記事の削除権限を持っています。
ウェブサイト運営者(管理者)は、投稿者が行った違法な記事の投稿について直接的な責任があるわけではありませんが、違法な記事に対する削除義務が認められています。
ウェブサイト運営者(管理者)の情報は、ウェブサイトの利用規約や会社概要のページに記載されていることが多いので、そちらで確認をします。
ウェブサイトの利用規約や会社概要のページがない場合には、ウェブサイトのURLからドメイン名(※2)の登録情報を調べる方法(※3)で、ドメイン名の登録者を特定することができます。
ドメイン名の登録者以外には、当該ドメイン名を使用することができないので、基本的には、ドメイン名登録者=ウェブサイト運営者(管理者)と考えることができます。
※2 例えば、日本弁護士連合会の公式ホームページ(https://www.nichibenren.or.jp/)のドメイン名は、「nichibenren.or.jp」の部分になります。
※3 WHOIS検索サイト(株式会社日本レジストリサービスが提供するWHOISサービス(https://whois.jprs.jp/)など)を利用することで、ドメイン名の登録情報を検索することができます。
③ サーバー管理者
ウェブサイトのデータが保存されているサーバーを提供しているサーバー管理者も、ウェブサイトの投稿記事を削除することができ、削除請求の相手方となり得ます。
ただし、技術的にサーバー管理者がウェブサイトの投稿記事を削除できないケースもありますので、注意が必要です。
④ 検索サイト運営者
検索サイトで表示される検索結果ページに違法な情報が掲載されている場合には、Googleなどの検索サイト運営者に対し、検索結果として表示されるウェブサイトのURL、タイトル、スニペット(※4)等について、削除を請求することができます。
※4 検索結果の一覧を表示する際に表示される当該ウェブサイトの一部抜粋等をした要約文のこと。
(2) 削除請求の方法について
① オンラインでの請求
ウェブサイト上にある「お問合せフォーム」や問い合わせ先のメールアドレスを利用して、削除請求を行う方法があります。
1日から数日で対応されることもありますが、何の対応もされないこともあります。
削除依頼用のフォームが用意されているウェブサイトもありますので、ウェブサイトの記載をよく確認した上で、ウェブサイト毎の手順に従って、削除請求をすることができます。
削除請求を行った場合、投稿記事の削除とともに、通信ログが削除されてしまうことがあります。
投稿記事の削除だけでなく、投稿者の特定のための手続(発信者情報開示手続)を予定している場合、通信ログが必要となりますので、投稿記事の削除を請求するだけではなく、通信ログを消去しないよう求める必要があります。
ただし、相手方が必ず通信ログを保存してくれる保障はないため、投稿者の特定のための手続(発信者情報開示手続)を予定している場合は、発信者情報開示手続を行った上で、削除請求をした方が良いでしょう。
② 書面での請求
オンラインではなく、書面で削除請求をする方法もあります。
この場合、一般社団法人テレコムサービス協会(通称、テレサ)が設置する「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」が、用意している「侵害情報の通知書 兼 送信防止措置依頼書」の書式(通称、テレサ書式)がありますので、この書式を利用して、削除請求を行います。
テレサ書式による削除請求の流れは、上記協議会が策定するガイドライン(名誉毀損・プライバシー関係ガイドライン、著作権関係ガイドライン、商標権関係ガイドライン)(https://www.isplaw.jp)に記載があります。
書類の送付先や必要な添付資料については、ウェブサイト毎に記載があることが多いので、ウェブサイトの記載をよく確認する必要があります。
回答までには1か月前後かかることが多いです。
③ 裁判手続を使った請求
オンラインでの請求や書面による請求で、削除が実現しなかった場合、裁判手続を利用して、削除請求を行います。
この場合の裁判手続には、仮処分と訴訟がありますが、実際には、仮処分に比べて訴訟は時間がかかるため、仮処分が利用されています。
東京地方裁判所(民事第9部)の場合、大きな争いがない事案だと、申立てから仮処分の発令まで、2週間くらいです。
ただし、仮処分の場合、削除を認める仮処分が出されるに当たって担保金(30~50万円程度)を法務局に命じられることが一般的です。
3.おわりに
自社の権利を侵害する投稿記事を放置しておくと、自社の業務に悪影響を及ぼすため、速やかに投稿記事の削除を行う必要があります。
もし、自社の権利を侵害する投稿記事がありましたら、弁護士までご相談ください。
以上
オンライン会議・
チャット相談について
まずはお気軽に、お電話またはフォームよりお問い合わせください。