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公開日:2023.11.10
企業法務2023年10月からのステマ規制について
弁護士法人PROの弁護士の伊藤崇です。
2023年(令和5年)10月1日から、ステルスマーケティング(いわゆる「ステマ」)広告については、景品表示法違反となります。
「ステマ規制」として話題になっていますが、広告やSNSに関わっている人であれば対策が必要となるのでしょうか。
この記事では、ステマ規制の概要や規制の対象、具体的な対処法などについてわかりやすく解説していきますので、是非参考にしていただけますと幸いです。
1.ステマ規制とは?規制の概要について
まずステマ規制の概要について、法律上の根拠やその内容について解説していきます。
(1)ステマは景品表示法の指定告示による規制
前述のとおり「ステマ規制」について規定しているのは、「不当景品類及び不当表示防止法」(いわゆる「景品表示法」)という法律です。
同法は、不当な景品表示を規制することで、一般消費者がよい商品・サービスについて自主的かつ合理的に選べる環境を守ることを目的としています。
そのような観点から、景品表示法は以下のような3種類の不当な表示を禁止しています(景品表示法第5条)。
① 優良誤認表示:
商品やサービスについて、実際のものよりも著しく優良であると示す表示等であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(景品表示法第5条1号)
② 有利誤認表示:
商品やサービスの価格その他の取引条件について、実際のもの、同種、類似の商品・サービスよりも取引の相手方に著しく有利であると一般消費者に誤認される表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認められるもの(景品表示法第5条2号)
③ 指定告示:
優良誤認表示や有利誤認表示に該当しないものの、商品やサービスに関する事項について一般消費者に誤認されるおそれがある表示であって、不当に顧客を誘引し、一般消費者による自主的かつ合理的な選択を阻害するおそれがあると認めて内閣総理大臣が指定するもの(景品表示法第5条3号)
上記「③ 指定告示」については、同法の規定を受けて2023年10月1日から施行された「内閣府告示第19号」が、その解釈指針を示しています。
同告示は、「一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難である表示」について、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」と指定しています。
以上より、広告であるにもかかわらず、広告であること隠している「ステルスマーケティング」は、2023年10月1日から「③ 指定告示」として景品表示法で禁じられることになったのです。
2.ステマ規制の対象となるのはどのような広告?
ステマ規制に関する告示の内容を詳しく見てみると、
・「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」
・「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められる」
の2つの要素に分解することができます。
それぞれについて消費者庁長官による運用基準が定められていますので、順番に見ていきましょう。
(1)運用基準その1:事業者の表示であること
事業者の表示であるにも関わらず、事業者の表示であることを明らかにしないことにより、一般消費者が事業者の表示であることを判別することが困難となる表示は、ステマとして規制対象となります。
以下で説明するケースにあてはまる場合には、事業者の表示と判断されることになります。
①事業者が第三者になりすまして行う表示
第三者による表示であっても、事業者と一定の関係があり事業者と一体であると考えられる従業員や、子会社の従業員などが行った表示については、事業者の表示であると判断される可能性があります。
②事業者が明示的に依頼・指示して第三者に表示させた場合
事業者が第三者に依頼して表示させた場合とは、具体的には以下のようなケースです。
③事業者が明示的に依頼・指示していない場合であっても第三者に表示させたといえる場合
事業者が明示的に第三者に依頼・指示していない場合であっても、事業者と第三者とのやり取りや、対価の内容や対価の提供目的、過去に対価を提供し今後提供する予定があるかどうかなどを考慮して、「第三者に表示させた」と判断される可能性もあります。
(2)運用基準その2:一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められる
事業者の表示であることが記載されていないものや、記載されているものの事業者の表示であることが不明瞭な方法で記載されているものについては、判別困難と判断されることになります。
例えば事業者がアフィリエイトプログラムを用いた表示を行う場合には、アフィリエイトサイトに当該事業者の表示であることを記載していなかったり、「広告」と記載しているのに文中に「第三者の感想」と記載して区別がつきにくかったりする表示は、ステマであると判断されるおそれがあります。
3.ステマ規制に対応するために事業者が実施すべき事項とは?
ステマ規制の対象となるのは、事業者の表示です。
すなわち、事業者がその表示内容の決定に関与したようなケースが問題となるのであって、第三者の自主的な意思による表示の場合(第三者が商品に対して自主的にSNSに投稿する場合など)は規制の対象外となります。
そして、ステマ規制の対象とならないようにするためには、「一般消費者にとって事業者の表示であることが社会通念上明らかとなるように」しておく必要があります。
具体的には以下のような表示を明確にしておくことで、ステマ規制の対象とならないようにしておくことができます。
4.ステマ規制に違反した場合のペナルティは?
消費者庁の調査の結果、ステマ規制に違反していると発覚した場合には、対象の事業者に対して措置命令が行われます。
措置命令の内容としては、違反した表示の差し止め、違反の事実を一般消費者に周知徹底すること、再発防止策を構築すること、違反行為を将来繰り返さないことなどが盛り込まれるのが一般的です。
このような措置命令については、内容が公表されることになります。
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