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公開日:2024.4.12
企業法務英文契約書でよく用いられる表現・基本的な型|その2
弁護士法人PROの弁護士の柏木太郎です。
ビジネスのグローバル化が進んでおり、今や多くの企業が海外企業との取引を行っています。
取引の増加に伴い、海外企業との間で紛争が発生することも増えています。
海外企業との取引においては、国内企業同士の取引よりも更に契約書の重要性が高まります。
海外では英米法の思考(=契約書に書いてあることが全てであり、書いていないことは契約に含まれない)が主流であるため、海外企業と締結する契約書は、分量が多く、かつ、詳細な規定が設けられることが多いです。
今回は、英文契約書でよく用いられる表現・基本的な型その2です。
その1も合わせてご参照ください。
国際取引でお悩みであれば、弊所へお気軽にご相談ください。
1.条件を示す表現
契約において、ある条項に定められる権利義務が発生or消滅するための条件や前提が定められることが多いです。
「~にしたがって」「~を条件として」「~を除いて」といった表現は日本語契約書でも頻出です。
ニュアンスとしては、法令や公的なガイドライン等に従うのが当然である条件を表現する際は「in accordance with」や「according to」が用いられることが多く、契約特有の条件を表現する際は「subject to」が使用されるケースが多いです。
≪例≫
grant a license subject to the following conditions:
訳:下記の条件に従い、ライセンスを付与する
The effectiveness of this Agreement shall be subject to the approval of the board of directors of~
訳:本契約の有効性は、~の取締役会の承認が得られることを条件とする
2.違反を示す表現
“本契約に違反した場合には契約を損害の賠償をする” “法令に違反した場合には契約を解除する”など、ルールに違反したことを示す表現が「breach」や「violate」です。
ニュアンスとしては、当事者間の契約・約束に違反したことを表現する際には「breach」、法令や公的なガイドラインに違反したことを表現する際には「violate」が用いられるケースが多いです。
また、契約に定められた約束事を守れなかった場合を示す表現として「fail」(名刺はfailure)もよく用いられます。
≪例1≫
Breach of any provision of this Agreement
訳:本契約のいずれかの条項の違反
≪例2≫
Violation of laws or regulations
訳:法令の違反
≪例3≫
Failure to meet deadlines
訳:期限に間に合わない
3.故意・過失を示す表現
日本の法令や日本語の契約書でも、故意や過失といった言葉は頻出です。
もっとも、英米法の思考パターンでは、契約違反=故意「willful misconduct」や過失「negligence」が無くても責任を負う(無過失責任)という傾向が強いです。
リスク回避を図るならば、自社が責任を負うのは故意又は過失がある場合に限る旨を明記しておくとよいでしょう。
他方で、責任を制限する条項の中で、“故意又は重過失の場合は責任が制限されない”といった規定が置かれるケースも多いです。
なお、重過失は「gross negligence」と表現されます。
≪例≫
~provided , however , that the limitation of liability above shall not apply to damages caused due to willful misconduct or gross negligence of the indemnifying party.
訳:ただし、上記の責任制限は、賠償責任を負う当事者の故意又は重過失によって生じた損害については適用されない
4.賠償・補償責任を示す表現
損害や費用など金銭的な負担に対する賠償・補償は「indemnify」(名詞はindemnity)が用いられることが多いです。
これ以外にも“補償する”といった意味で「compensate for」(名詞はcompensation)も頻出です。
自らの責任と費用で対処し相手方に迷惑をかけないという趣旨で「hold ●● harmless」という表現も多く見られます。
≪例≫
●● shall indemnify and hold ■■ harmless from and against any and all claims and disputes which may arise in connection with ABC’s material breach of this Article~
訳:●●(契約当事者)は、本条の重大な違反に関連して生じうる全ての請求及び紛争について補償し、■■(相手方)に一切迷惑をかけない
5.まとめ
今回は、英文契約書で用いられることの多い基本的な表現や型のいくつかをご紹介しました。
ここで紹介した基本的な表現を理解しているだけで英文契約書のチェックを効率的に行えます。
今回ご紹介したものの他にも基本的な表現・型があります。
こちらについては別の記事(その1)でご紹介しておりますので、是非ご覧ください。
海外企業との国際取引に不安を感じている場合は、お気軽に弊所へご相談ください。
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