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公開日:2021.3.19
企業法務中小企業のM&A③ 事業承継でM&Aを活用するメリットとデメリット、注意点
弁護士法人PROの伊藤崇です。
中小企業経営者の高齢化が進んでおり、後継者探しに悩む企業が増えています。
一昔前とは違い、当然に子どもが会社を継いでくれる社会ではなくなっています。
特にコロナ禍で事業の先行き不透明感が強まり、事業承継の手法としてM&Aを検討する企業が増加しています。
事業承継で後継者探しに困ったときには、M&Aが役に立つケースも多くあります。
そこで今回はM&Aによる事業承継のメリットやデメリット、注意点について取り上げます。
1.M&Aとは
M&Aとは、企業の合併や買収の総称です。
2つ以上の企業が統合して1つの会社となったり共同出資して新会社を設立したり、業務提携したり資本関係を作ったりするときに利用されます。
M&Aというと「敵対的買収」のイメージもあり、あまり良い印象を持っていない経営者の方も多いかもしれません。
しかし実際のM&Aは友好的なものがほとんどです。M&Aの相手企業はこれから協力して企業を成長させていくパートナーですので、お互いが友好的な態度でないとそもそも契約締結にこぎつけられません。
⑴ 事業承継にはM&Aが有用
事業承継の際にもM&Aが非常に役に立ちます。
後継者がいないとき、M&Aを利用すれば別会社に自社の株式や事業を売却して引き継いでもらえます。
自社に近い業種の企業や自社事業に高い関心を持つ資金力のある企業に買収してもらえれば、これまで以上に自社を成長させられる可能性もあります。
また、これまで手塩にかけて育ててきた自社が廃業することなく存続すること自体価値のあることですし、自社の従業員の雇用が維持されるというメリットもあります。
このように、M&Aによって企業の良い点と良い点がうまく作用し合って飛躍的に成長を遂げることを「シナジー効果」といいます。
⑵ 国も力を入れている事業承継M&A
実は、事業承継M&Aには国も非常に力を入れています。
たとえば中小機構は「事業承継・引継支援センター」を全国に設置して、後継者不足に悩む中小企業経営者からの相談に対応しています。
こちらではM&A仲介業者や金融機関を紹介してもらえたり、後継者人材バンクから適切な後継者候補を紹介してもらえたりもします。
『事業引継ぎポータルサイト』https://shoukei.smrj.go.jp/
2.事業承継M&Aのメリット
事業承継の際にM&Aを利用すると以下のようなメリットがあります。
⑴ 後継者がいなくても会社を残せる
近年では子どもが会社を継いでくれないケースも増えています。
少子高齢化が進んでいますし、多様な働き方が受容されるので子どもは親と異なる「自分の人生」を歩んでいることも多いでしょう。かといって従業員や役員に後継者として適切な人材がいるとも限りません。
そんなとき外部の企業へ売却すれば、廃業を避けて自社事業を残せます。自社製品の名称やブランド名などを残してもらえるケースも多いので、「会社をつぶしてしまった」という喪失感を味わわずに済むでしょう。
⑵ 早期に事業承継できる
未経験の人材に事業承継させようとすると、大変な時間がかかります。標準的に「10年」は必要ともいわれます。すでに高齢となって早めに事業承継をさせたいとき、1から人材育成していたら間に合わないリスクが高くなるでしょう。
M&Aであれば1年以内に完結できるケースも少なくありません。早期に事業承継を完結できる点もメリットといえます。
⑶ 多額のキャッシュが入ってくる
廃業すると、会社資産を低額な金額で投げ売りすることになりがちですし、配当に対しても税金がかかるので前経営者のもとに残る現金は少額になるケースがほとんどです。
一方でM&Aによって株式を売却すれば、純資産額に2~5年分程度の売上げ金額をのせられるケースも多く、廃業するより圧倒的に高い金額で売却しやすくなります。
結果的に前経営者の手元に残るキャッシュが高額になり、引退後も安心して生活できるでしょう。
⑷ 従業員や取引先に迷惑をかけずに済む
会社を廃業してしまったら、従業員は全員解雇せざるを得ません。自社に依存していた取引先があれば、迷惑をかけてしまうでしょう。
M&Aによって会社を残せれば従業員を継続雇用してもらえるケースが多いですし、取引先とのつきあいも継続する可能性が高く、迷惑をかけずに済みます。
3.M&Aのデメリット、注意点
M&Aには以下のようなデメリットや注意点があります。
⑴ 良い相手を見つけるのが大変
M&Aを成功させるには、良い相手企業とのマッチングが必須です。
シナジー効果を期待できる
自社事業を成長させてくれる
適切な売却代金を設定できる
従業員や既存の取引先へ配慮してくれる
社名やブランド名を残したい方、しばらくは会長、顧問として名前を残したい方もおられるでしょう。
しかしすべての条件を満たす相手企業を見つけるのは簡単ではありません。
相手先選びを間違うとお互いが不幸になってしまう可能性もあるので、最終契約するかどうかは慎重に判断する必要があります。
⑵ 費用がかかる
M&Aを実施する際にはM&A仲介会社や税理士、弁護士などに依頼しなければならず、費用がかかります。特にM&A仲介会社にかかる費用は業者によって大きく異なるので、依頼先を選定する場合には、費用体系にも注意しましょう。
適正な費用感の業者や専門家に依頼すれば、廃業するより高額なキャッシュを残せるケースが大半です。
⑶ 従業員が不満を持つ可能性がある
M&Aで聞いたことのない会社が買収先となると、従業員が不安を感じる可能性があります。
このことが原因で優秀な人材が離職してしまったら、相手企業にとってもM&Aのうまみがなくなってしまうでしょう。
事業承継M&Aを成功させるには、従業員に対する誠実な説明が必要です。計画を開示するタイミングを含め、不安を解消するための措置をとりましょう。
これからの日本企業が生き残るためにM&Aは非常に有用です。
関心のある方はお気軽に弁護士までご相談ください。
以上
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