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公開日:2024.6.7
人事・労務従業員の解雇について
弁護士法人PROの花井宏和です。
労働者が自発的に退職の意思を表明する退職勧奨とは異なり、解雇は使用者(企業側)からの一方的な行為であるため、慎重な対応が必要です。
解雇が無効の場合、労働者は賃金請求権を失わず、使用者は解雇時から判決確定時までの賃金を支払わなければならず、使用者にとって大きなリスクとなります。
このコラムでは、従業員の解雇の基礎について解説します。
従業員の解雇の有効性について、自社の従業員とトラブルになった場合や、自社の体制に問題がないかを確認したい場合には、弊所までお気軽にご相談ください。
1.解雇とは
解雇とは、使用者による労働契約の解約です。
これに対して、労働者の一方的な意思表示により労働契約を終了させることを退職(辞職)といいます。
使用者と労働者が合意により労働契約を終了させることは合意退職といいます。
2.解雇の種類
解雇は、大きく2つに分けられます。
①普通解雇 | 労働者側に原因のある雇用 |
【例】 |
経営合理化等による労働者の解雇(整理解雇) | ||
②懲戒解雇 |
3.普通解雇と懲戒解雇の相違点
普通解雇は、就業規則上の普通解雇条項に該当することが必要です。
懲戒解雇は、就業規則上の懲戒解雇事由に該当することが必要です。
普通解雇の場合は、退職金が支給されるケースもありますが、懲戒解雇の場合は、多くの場合退職金は不支給となっています。
普通解雇の場合は、事後的に解雇事由を追加することもできますが、懲戒解雇の場合は、原則として、懲戒解雇時までに使用者が認識していた事情に基づいて解雇がなされなければなりません。
なお、後日追加した解雇事由は、解雇当時に重視していなかった事由とみなされる可能性があります。
そのため、解雇の通知をした時点で既に認識している解雇事由については、解雇通知書や解雇理由証明書に記載しておく必要があります。
4.解雇が無効となるケース
解雇は、労基法等の法律によって解雇が制限されている場合又は解雇権濫用に該当する場合(労契法16条)には無効となります。
法律上解雇が禁止されるケースとしては、解雇予告期間内の解雇制限(労基法20条1項)や業務上災害、産前産後休業の場合の解雇制限(労基法19条)があります。
普通解雇について、労働契約法16条は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定しています。
解雇の有効性について、実務では、長期雇用を前提として雇われた従業員の解雇は厳格に判断される傾向にあります。
また、勤怠不良や能力不足といった事情があっても、何らのプロセスも踏まずに解雇すると解雇権の濫用と評価され、解雇が無効となるリスクがあります。
そのため、従業員の解雇は慎重に行うべきであり、また、後述するようなプロセスを踏む必要があります。
5.解雇が無効となった場合のリスク
解雇が権利濫用にあたる場合には、解雇は無効となります(労契法16条)。
その結果、解雇は最初からなかったものとなり、従前の労働契約はそのまま存続することになります。
使用者は労働者の雇用を継続しなければなりません。
さらに、解雇が無効になると、従前の労働契約がそのまま存続していたことになり、使用者は、解雇時から判決確定日までの賃金の支払をしなければなりません。
無効な解雇により就労を拒否されていたことは、債権者である使用者の「責めに帰すべき事由」(民536条2項)にあたり、債権者である使用者は反対給付たる賃金支払債務の履行を拒むことはできないからです。
このように、安易に従業員を解雇することには大きなリスクが伴います。
解雇の有効性の判断にあたっては、対象従業員の協調性や能力不足、勤怠不良等が問題となります。
そのため、解雇の対象となる従業員に対し、5W1Hを意識しつつ、具体的な事実を明示して問題点を指摘することを繰り返していきましょう。
その際にはメールや書面といった形に残る方法で指摘する必要があります。
解雇を有効に行うためにはこうしたプロセスを踏む必要があります。
今回は、従業員の解雇についてご説明しました。
従業員の解雇は労使間でトラブルになることが予想されるものであり、金額も多額のものとなるので、早期に弁護士が介入する必要があります。
従業員の解雇に限らず、人事・労務でお困りの場合には弊所にお気軽にご相談ください。
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