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弁護士コラム
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公開日:2024.6.14
企業法務海外企業とライセンス契約を結ぶ際の注意点・リスク
弁護士法法人PROの柏木太郎です。
ビジネスのグローバル化が進んでおり、今や多くの企業が海外企業との取引を行っています。
多種多様な取引類型の中でも、知的財産権やノウハウに関するライセンス契約は、海外市場への進出や海外製品等の国内展開のために利用されることが多い契約です。
知的財産領域の法令はどの国でも法改正や新しい判例により取扱いが日々変わっていきますので、取引企業の国の動向を注視し対処する必要があります。
今回は、海外企業との取引、中でもライセンス契約に焦点を当て、リスクや注意点を解説します。
海外企業との取引でお悩みであれば、弊所へお気軽にご相談ください。
1.ライセンスの範囲
(1)権利の範囲
ライセンス対象が特許や商標といった公的に登録されている知的財産権の場合は、登録されている該当国の法制度に従った方法(ex. 登録番号)によって特定することで権利の範囲を明確にできます。
他方、このような公的登録制度がない知的財産権については、ライセンスがされる知的財産権の範囲をライセンス契約において具体的に定義することも必要となります。
(2)利用目的の範囲
ライセンス対象の知的財産権の利用目的も明確にする必要があります。
特にライセンサーの場合、ライセンスを付与する知的財産権を無制限に利用されてしまうと、予測外の損害を被ったり自社ブランドの低下を招くおそれがあります。
(3)地理的範囲
ライセンシーがどの地域でライセンス対象の知的財産権を使用できるのか明確にすることも重要です。
ライセンサーからすると、地理的範囲に制限が無い場合はライセンシーによる競業行為を容認することになりかねませんし、自社の営業戦略を崩されるおそれもあります。
一般的には、ライセンシーの所在する国や地域でのみ使用を認めるケースが多く見られます。
島国であるためか、日本企業がライセンシーの契約では「territory:Japan」などとされ、国内のみでの使用とされているケースが多いです。
(4)ライセンスの性質
ライセンスは、独占的(exclusive)と非独占的(non- exclusive)とに区別されます。
独占的とする場合、そのライセンシーのみがライセンスを付与されることになるので、ライセンシーとしては独占的ライセンスを求めるケースが多いです。
独占的とするため、ロイヤルティは高額になり易いです。
また、サブライセンス(ライセンシーが他者へライセンスを付与すること)を認めるか否かによっても、ライセンスの性質が異なります。
ここでも、サブライセンスを認める場合にはロイヤルティが高額になり易いです。
2.ライセンス対象の知的財産権が消滅するリスク
日本はもちろん、アメリカや中国など諸外国でも、特許権などの知的財産権は公的機関(日本であれば特許庁)における登録が必要です。
そのため、何らかの理由で登録が無効や取消となった場合、知的財産権が消滅してしまいます。
ライセンス契約を締結する際は、契約締結後にライセンス対象の知的財産権が消滅した場合の対処も予測して契約書に盛り込んでおく必要があります。
契約締結後は知的財産権の有効性を争わないとする条項(不争義務)を定めたり、知的財産権が消滅した場合にはロイヤルティを一部返還するor返還しないとして金銭面での解決とする条項を定めることが考えられます。
また、ライセンス対象を知的財産権のみならずノウハウ等もセットとすることで、知的財産権が消滅したとしてもライセンスが直ちに失われないとすることで対策する場合もあります。
3.第三者から知的財産権侵害で訴えられたら?
ライセンス対象の知的財産権等が第三者の権利を侵害していた場合、その第三者から訴訟等で責任追及を受けた際の対処について、ライセンサーが表明保証=第三者の権利を侵害していないことをするかを巡って問題になります。
ライセンシーとしては適法性・安全性を確保するために表明保証を求めたいところですが、ライセンサーとしては適法性の調査を尽くしても完全な保証は不可能として表明保証は避けたいところです。
実務的には、下記のようにして契約締結に至るケースもあります。
4.まとめ
今回は、海外企業との取引のうち、ライセンス契約に焦点をあててリスクやそれに対する対象法を解説しました。
知的財産権を取り巻く環境は常に変化を続けています。
特にアメリカや中国は変化が激しく、ライセンス契約の実務も変わっています。
ライセンス契約を締結する際は、諸外国の動向を把握し、自社に生じる影響やリスクを予測し適切に対処できる条項を盛り込まなくてはなりません。
海外企業との取引に不安を感じている場合は、お気軽に弊所へご相談ください。
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