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公開日:2024.7.5
人事・労務雇止めの基礎
弁護士法人PROの花井宏和です。
雇止めは、使用者と労働者間でトラブルに発展しやすい事項です。
雇止めが無効とされると、使用者は、従前と同一の労働条件で労働契約の更新申込を承諾したものとみなされます。
その結果、使用者は、無効な雇止めがなされたことにより支払われていない雇止め後の賃金を請求されるリスクがあります。
そのため、問題が具体化する前に早期に是正することが望ましいです。
このコラムでは、雇止めの基礎について解説します。
雇止めの有効性を巡って自社の従業員とトラブルになった場合や、有効に雇止めを行うにはどのようにすればよいかを確認したい場合には、弊所までお気軽にご相談ください。
1.雇止めとは
雇止めとは、有期労働契約の期間が満了するに際して、使用者が契約の更新を拒否することをいいます。
解雇が、契約中に従業員を一方的にやめさせる行為であるのに対して、雇止めは、有期労働契約の期間満了の際に契約の更新をしないことをいいます。
2.雇止めが無効となる場合
有期労働契約は、契約期間の定めがある以上、その期間が満了すれば契約は終了し、契約の更新の有無は使用者の自由であるのが原則です。
もっとも、有期労働契約の場合、必ずしも契約期間が満了すると共に契約が終了するものではありません。
労働者がこれまで何度も契約を繰り返してきている場合や、業務内容が当然に更新を前提としている場合にまでかかる原則を貫けば、労働者の地位が著しく不安定となり、労働者は生活の糧を失うことにもなりかねません。
そこで、①労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があり(労契法19条2号)、②労働者からの雇用継続の申込みがあり、③雇止めに客観的合理的な理由と社会的通念上の相当性が認められない場合には、使用者は従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で労働者の雇用継続の申込みを承諾したものとみなされ、契約が擬制されます(雇止めが無効とされます)。
3.雇止めが無効とされた場合の効果
雇止めが無効とされると、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で労働者の申込みを承諾したものとみなされます。
さらに、雇止めの有効性を訴訟で争われ、雇止めが無効であると認められた場合には、その後も有期労働契約が更新されたものと考え、判決確定時までの賃金請求権が認められる可能性があります。
そのため、雇止めを検討するにあたっては、その有効性について慎重に検討する必要があります。
4.雇止めに対する請求内容
(1)地位確認
労働者は、労働契約上の権利を有する地位の確認請求をすることができます。
(2)賃金の請求
労働者は、無効な雇止めが行われたことにより支払われていない雇止め後の賃金を請求することができます。
使用者としては、判決確定時までの賃金の支払請求が認容されるリスクがあります。
(3)損害賠償(慰謝料)
雇止めに至った経緯や理由等から雇止めの違法性が著しい場合には、労働者は、賃金の請求とは別に、違法な雇止めによって被った慰謝料を請求することができることもあります。
5.使用者側の取るべき措置
使用者としては、労働者の契約更新に対する合理的期待が生じないような措置を取っておく必要があります。
(1)契約書等で明記すること
契約締結時に契約更新しないことを明記するほか、更新回数や更新期間の上限を定めておくと、その上限の範囲内では雇止めが有効とみなされる可能性が高くなります。
そのため、契約書や別途の書面を作成する等して明記しておきましょう。
もっとも、同種の有期契約労働者の更新状況や契約更新手続きについても配慮する必要があります。
更新回数や更新期間の上限を定めておいても、実体として、更新回数を超えて更新されている労働者が多数いるような場合には、契約更新への期待を持つことが合理的と判断され、雇止めが無効となる可能性があります。
(2)契約更新手続きが形骸化していないこと
契約の更新の際に、自動更新になっていないかどうかの確認が必要です。
契約期間満了前に契約書を作成し、更新の都度、契約の内容についてきちんと説明をする必要があります。
(3)雇止めの予告
次の場合には、使用者は、契約の期間が満了する日の30日前までに、有期労働契約を更新しない旨の予告をしなければなりません。
①3回以上有期労働契約が更新されている場合
②1年以下の契約期間の有期労働契約が更新または反復更新され、最初に有期労働契約を締結してから継続して通算1年を超える場合
③1年を超える契約の労働契約を締結している場合
(4)雇止めの理由の説明
雇止めをするにあたっては、事前に労働者に契約の更新基準に沿って雇止めの理由を明示するようにしましょう。
また、雇止めの理由書にも「雇用期間満了により」とだけ記載していた場合、後の裁判や労働審判においてその他の雇止めの理由を主張しても、後付けの理由と推認されてしまう可能性があり、使用者に不利になってしまいます。
今回は、雇止めの基礎についてご説明しました。
雇止めの有効性は労使間でトラブルになりやすい事項であり、雇止めが無効となり、賃金請求がなされると金額も多額のものとなるため早期の是正が求められます。
雇止めに限らず、人事・労務でお困りの場合には弊所にお気軽にご相談ください。
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