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公開日:2024.8.9
企業法務業務委託契約書のチェックポイント
弁護士法人PROの花井宏和です。
業務委託契約は、特に、企業の行う経済活動においては、広くさまざまな目的に使用されています。
業務委託契約は、自己(自社)の業務を外部に委託するものであるため、外部の受託者が適正に業務を行うように、委託者が管理することが重要です。
そこで、この記事では、業務委託契約の基本的なチェックポイントについて解説します。
1.業務委託契約とは
業務委託契約とは、一方当事者が他方当事者に対して、自己(自社)の業務を委託するための契約です。
一般的には、委託する側の当事者を委託者といい、受託する側の当事者を受託者といいます。
業務委託契約において委託される業務の内容は多岐にわたります。
もっとも、
実務上は、委任(準委任)契約(民法643条~656条)又は請負契約(民法632条から642条)に分類できる契約を業務委託契約ということが多いです。
本記事では、当該業務委託契約が、委任(準委任)契約に該当する契約であることを前提に解説します。
2.委託業務内容の特定
委託者と受託者の間で委託業務の内容についての共通認識を持ち、 認識の齟齬がないように委託業務の内容を明確に記載しておくことが重要です。
認識に齟齬があると、委託者は、受託者に業務遂行を拒否された結果、別の業者に業務を依頼することとなり、追加の費用を支払うことにもなりかねません。
委託者側としては、委託する業務の内容に抜け漏れのないように、包括的な条項を作成する必要があります。
他方で、受託者としては、当初想定していなかった業務まで引き受けることになりかねません。
そのため、受託者側の立場では、包括的な条項は避け、できるだけ業務の内容を具体化するように条項を修正する必要があります。
業務内容が詳細にわたる場合は、契約書にはその概略を記載し、別紙や仕様書に詳細を記載するとよいでしょう。
3.業務委託料
業務委託料の金額、支払時期、支払方法について明記しましょう。
(1)金額について
業務委託料の金額が税込か税抜きかが明らかになるように、契約書に明記しておきましょう。
また、委託業務を遂行する上で必要となる 具体的な費用の内容(交通費、通信費、材料費等)を列挙し、かかる費用を委託者と受託者のどちらが負担するのかを明記します。
(2)支払時期
委託者、受託者はそれぞれ、自己(自社)にとって望ましい内容に条項を作成する必要があります。
委託者の立場としては、
確実に業務がなされたことを確認した後に支払をすることが望ましいです。
それが難しいようであれば、固定額方式にするか、時間制単価にした上で上限金額を設けることも検討する必要があります。
他方で、受託者の立場としては、
業務内容にクレームをつけられて報酬の支払が遅れることは望ましくありません。
そのため、前払に設定するか、できるだけ早期に支払時期を設定する必要があります。
前払や早期の支払が難しければ、月額にする方法も検討する必要があります。
(3)支払方法
銀行振込とする場合には、金融機関名、支店名、口座種別、口座番号、口座名義、口座名義の読み仮名を記載して、口座を特定する必要があります。
また、
振込手数料の負担についても具体的に記載しておきましょう(定めがない場合は、委託者の負担となるのが原則です)。
4.中途終了した場合の業務委託料
(1)委託者の責めに帰することができない事由によって業務の遂行ができなくなったとき
受託者は委託者に対して、
既に履行した割合に応じて報酬を請求することができます(民法648条3項)。
もっとも、その割合については争いとなる可能性があります。
そのため、あらかじめ、委託業務が中途終了した場合の業務委託料の算定方法について合意しておくことが望ましいです。
例としては、委託業務を段階的に設定し、各段階における履行割合を契約書に記載しておくことが考えられます。
(2)委託者の責に帰すべき事由によって業務の履行ができなくなった場合
委託者の責に帰すべき事由によって業務の履行をすることができなくなったときは、
危険負担の規定(民法536条2項)が適用され、受託者は報酬の請求をすることができます。
もっとも、受託者は業務の履行を免れたことによって利益を得たときは、これを委託者に償還しなければなりません(民法536条2項後段)。
かかる規定は任意規定であり、契約において修正が可能です。委託者の立場としては、契約において修正することが望ましいです。
5.再委託
業務委託契約においては、再委託は原則として禁止していることが通常です。受託者の信頼性や能力に基づいて、その受託者であるからこそ業務委託したという場合が多いからです。
例外的に委託者の同意がある場合や関連会社に再委託する場合には再委託を認めているというのが大半です。
受託者としては、合理的な裁量の範囲内で再委託できるようにした方がよいでしょう。
委託者の立場としては、受託者が再委託を行った場合には、
について規定することが重要です。
また、個人情報の提供が想定される場合には、委託元は、委託先について「必要かつ適切な監督を行う」必要があり、個人情報保護法やガイドラインにも留意する必要があります。
委任契約に該当する業務委託契約の場合、特段の定めがなければ、各契約の当事者はいつでも規約を解除することができます(民法651条1項)。
もっとも民法651条1項は任意規定であるため、任意解除権を放棄する旨の合意も、契約自由の原則から有効です。
委託者としては、受託者の業務遂行能力が想定よりも下回っていた場合等には、中途解約をして契約を終了させるニーズもあろうかと思います。
そのような場合には、
委託者はいつでも、正当な事由の有無にかかわらず、本契約を解約することができるとの条項を作成しておくとよいでしょう。
業務委託契約の業務の内容は多岐にわたります。
業務によっては、受託者が委託者の経営情報等の機密情報を知り得る場合が多いので、
受託者に対する秘密保持条項を設ける必要があります。
他方で、受託者としても、受託者が提供する専門的知識やノウハウ等が伝搬することを防止する必要があります。そのような場合には、委託者に対しても秘密保持義務を課す条項を設けるとよいでしょう。
業務内容によっては、遂行状況を客観的に把握することが困難な場合もあります。
受託者は
定期的に(例:毎月15日と月末)委託者に業務の遂行状況について経過報告する旨の条項を作成すれば、委託者が業務の遂行状況を把握することが容易になります。
委託者が受託者からの定期的な業務遂行報告を受けるだけでは、業務の質的管理に不安が残る場合もあろうかと思います。
そのような場合には、委託者が受託者に対して、関係資料等の提出を求めたり、オフィスへの立入検査を求める権利を規定することも考えられます。
業務委託契約書においても、反社会的勢力の排除条項や知的財産権の帰属などの一般条項が定められることが多いです。
業務委託契約の内容は多岐にわたり、業務委託契約書の種類は多種多様です。
そのため、
業務契約書の種類に応じて適切にチェックをする必要があります。
今回は、業務委託契約(委任契約に該当する場合)のチェックポイントについてご説明しました。
業務委託契約に限らず、契約書作成、契約書チェックでお困りの場合にはお気軽に弊所へご相談ください。
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