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弁護士コラム
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公開日:2024.8.30
企業法務【名古屋/知的財産】その他の不正競争(不正競争防止法)について
弁護士法人PROの松永圭太です。
今回は、本年6月までに取り上げた「不正競争」以外の「その他の不正競争(不正競争防止法)」について取り上げます。
1.不正競争防止法とは
不正競争防止法とは、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」法律です。
不正競争防止法では、不正競争行為として以下の10の類型を規定し、不正競争行為を行った者に対しては、差止めの請求や損害賠償の請求、信用回復の措置を求めることができ、不正競争行為の内容によっては刑事罰(信用毀損行為、代理人等の商標冒用については刑事罰の定めはありません)も科されます。
<不正競争行為の類型>
①周知な商品等表示の混同惹起
(弁護士コラム「周知又は著名な商品等表示への規制」(不正競争防止法)」を参照ください)
②著名な商品等表示の冒用
(弁護士コラム「周知又は著名な商品等表示への規制(不正競争防止法)」を参照ください)
③他人の商品形態を模倣した商品の提供
(弁護士コラム「商品形態の模倣への規制(不正競争防止法)」を参照ください)
④営業秘密の侵害
(弁護士コラム「営業秘密の保護(不正競争防止法)」を参照ください)
⑤限定提供データの不正取得等
(弁護士コラム「限定データの保護(不正競争防止法)」を参照ください)
⑥技術的制限手段の効果を妨げる装置等の提供
(弁護士コラム「技術的制限手段無効化等の提供行為への規制(不正競争防止法)」を参照ください)
⑦ドメイン名の不正取得等
(弁護士コラム「ドメイン名の保護(不正競争防止法)」を参照ください)
⑧商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示
(弁護士コラム「誤認惹起表示への規制」を参照ください)
⑨信用毀損行為
⑩代理人等の商標冒用
今回は、その他の不正競争として、「⑨信用毀損行為」「⑩代理人等の商標冒用」に焦点を当ててみます。
2.信用毀損行為とは
不正競争防止法では、
競争関係にある他人の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知し、又は流布する行為
を不正競争(信用毀損行為)として規制しています。
信用毀損行為は、他人の競争上の効果を減じる行為を禁止するもので、競争関係にある者が虚偽の事実をあげて競争相手の営業上の信用を直接的に攻撃するという典型的な不正行為です。
(1)競争関係にある他人
①競争関係
他人と競争関係にあると言えるには、現在において具体的に自社と他社が同一の商品、役務(サービス)を取り扱っている場合に限らず、需要者又は取引者を共通にする可能性がある場合など、将来において同種の商品、役務(サービス)を提供しうる関係にあれば良いとされています。
例えば、製造業者と他の製造業者の下請業者やその販売業者、商品と総販売代理元と競合品の代理店の間において競争関係が成立すると言われています。
②他人
「他人」とは、自己以外の者を言います。
法人の場合、役員や従業員等内部者がなした行為は通常「自己」のものとされますので、自社の内部者が自社の営業上の信用を害する虚偽の事実を告知又は流布したとしても、不正競争防止法における不正競争(信用毀損行為)には当たりません。
ただし、形式上組織に所属する内部者であっても、例えば、独立を検討している者など、既にその組織の統制を離れた者と評価できる場合には「他人」に該当すると判断されることもあります。
信用を害される「他人」は特定されていることが必要ですが、氏名又は名称が明示されている必要はなく、告知・流布された相手方において特定の者を想起させるものであれば、足りるとされています。
例えば、裁判例では、
◆「某社」「某株式会社」と表記されていても、告知・流布されたものに記載された情報から特定の者を想起できる場合
◆対象は特定しないものの取扱者が2社しか存在しない場合に「模造偽造機出現」などの記載により暗に他者を想起させる場合
◆「当社以外の…」として告知した場合
について信用毀損行為が認められています。
(2)営業上の信用を害する虚偽の事実
①営業上の信用を害する
「営業上の信用」の「営業」とは、営利事業に限らず、それ以外の経済上その収支計算の上に立って行われるべき事業を含むとされ、「信用」とは、営業活動を行うについて有する経済上の外部的評価であるとされています。
「害する」とは、他人の信用を損ねる行為を言います。
ただし、実際に、他人の信用を損ねる必要まではなく、他人の信用を損ねる蓋然性があれば良いとされています。
②虚偽の事実
「虚偽」とは、客観的真実に反することを言います。
「事実」とは、証拠等をもって虚偽か否かの判断できるような客観的事項を言います。
主観的意見や抽象的な価値判断などは「評価」であって、「事実」には該当しません。
なお、裁判例では、「模造品」「粗悪品」、「材料が悪い、製品が雑である、音が悪い、耐久性がない」など、評価を含む事実も「事実」と判断されています。
(3)告知又は流布する行為
「告知」とは、特定の人に対し、事実を個別に伝達する行為を言います。
例えば、来店した顧客に対して競争相手の商品や役務(サービス)の欠点を伝える行為などです。
ただし、競争相手本人に直接伝えることは、「告知」に当たらないとされています(競争相手以外への伝達がない以上、営業上の信用を害するおそえがないからです)。
「流布」とは、不特定又は多数の人に知られるような態様で事実を広める行為を言います。
例えば、新聞に競争相手の商品を誹謗するような広告を掲載する行為などです。
(4)比較広告
比較広告とは、自社が供給する商品・サービスについて、これと競争関係にある特定の商品・サービスを比較対象の商品・サービスとして明示的又は暗示的に示し、商品・サービスの内容又は取引条件を比較する広告を言います。
比較広告の内容に虚偽がなければ信用毀損行為には該当しません(ただし、表記の仕方によっては景品表示法に抵触する可能性はあります)が、比較広告の内容に虚偽の事実が含まれていた場合、その比較広告は信用毀損行為に該当します。
(5)知的財産権侵害の警告
競争相手本人に対し、知的財産権侵害の警告文書を直接送付する行為は、上記(3)のとおり、「告知」に該当しませんので、信用毀損行為に当たりません。
これに対し、顧客や取引先などの競争相手以外の第三者に知的財産権侵害の警告文書を送付したりする行為は、内容が虚偽であれば、信用毀損行為に当たります。
なお、特許権侵害があるとして裁判所に提訴した事実を自社のウェブサイト上に公開する行為は、「提訴自体」は真実ですので、信用毀損行為には当たりません。
3.代理人等の商標冒用
不正競争防止法では、
パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する者の代理人等が、正当な理由なく、その商標を使用するなどする行為
を不正競争として規制しています。
商標権は、当該登録国においてのみ効力を有するという属地主義の原則が取られています。
そのため、外国においてある商標について商標権を取得したとしても、日本においてその商標について特許庁に商標登録がされていなければ、日本国内の商標使用等について商標権の侵害を主張できないのが原則です。
しかし、例えば、商標権を保有するある企業が外国に進出しようとしてその国の代理店をおいた場合、その代理店が当該企業との信頼関係に反してその商標を無断で使用したり、進出先で商法登録をしたりすると、その国に進出しようとした企業の活動が大きく妨げられることになります。
そこで、代理人等の商標冒用が不正競争として規制されています。
(1)パリ条約の同盟国等において商標に関する権利を有する代理人等
①パリ条約の同盟国等
パリ条約の同盟国等とは、パリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国、商標法条約の締結国を言います。
パリ条約とは、特許や商標などの国際的な保護のために1883年にパリで成立した「工業所有権の保護に関するパリ条約」のことを言います。
世界貿易機関(WTO)とは、自由貿易促進を主たる目的として創設された国際機関のことです。
商標法条約とは、商標出願手続の国際的な制度の調和と簡素化を図るために成立した条約のことを言います。
日本は、パリ条約、WTO、商標法条約のいずれにも加盟しています。
②商標に関する権利
商標に関する権利には、登録商標権が含まれるだけでなく、日本の不正競争防止法上の周知表示の保護に相当するもの(ドイツの商標法やアメリカの連邦商標法で保護される周知商標や著名商標、英米法上のパッシング・オフなど)も該当するとされています。
③代理人等
代理人等とは、不正競争防止法では「代理人若しくは代表者」と規定されていますが、法律上の代理権の有無にかかわらず、同盟国商標権者のために国内において商標権に関する商品・サービスの取引をなす者であれば足りるとされています。
例えば、「総代理店」「代理店」「特約店」だけでなく、フランチャイズ・システムの加盟店なども含まれます。
また、1年以内に代理人等であった者も規制対象となっています。
(2)正当な理由なく
正当な理由がある場合とは、同盟国商標権者自身が日本における権利行使を放棄した、あるいは権利取得の意思がないことを代理人等に信じさせたという状況の下、代理人等が独自の信用を築いた場合のように、代理人等の側に保護すべき事情がある場合に限られると解されています。
したがって、代理人等の側に保護すべき事情がなければ、正当な理由がないと判断されます。
(3)商標を使用するなどする行為
◆商標の使用
◆当該商標を使用したその権利に係る商品と同一・類似の商品の譲渡、引渡、展示、輸出、輸入、電気通信回線を通じた提供
◆当該商標を使用してその権利に係るサービスと同一・類似のサービスの提供
を指します。
「商標の使用」については、弁護士コラム「商標の使用について」をご覧ください。
(4)適用除外
◆代理人等の行為が普通名称等を普通に用いられる方法で使用する行為
◆代理人等が自己の氏名を不正の目的なく使用する行為
は、不正競争に該当しません。
4.おわりに
企業活動を行うに当たって、比較広告や知的財産権侵害の警告を行うことがあると思います。
そのような場合に、信用毀損行為に該当してしまうと、差止めや損害賠償請求、信用回復措置の対象となります。
また、外国企業の代理店として活動する場合にも、その商標の使用によって不正競争行為に該当しないよう注意する必要があります。
判断に迷う場合は、弁護士にご相談ください。
以上
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