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公開日:2024.9.10
企業法務建物賃貸借契約のチェックポイント
弁護士法人PROの花井宏和です。
建物賃貸借契約は、居住のために借り受けたり、収益物件として貸し付けたり、企業活動を継続するために必須であったりと、非常に重要な契約です。
賃貸人・賃借人いずれの立場であっても、 賃貸借契約の条項がどのような意味を持つのかの理解を有することは非常に重要です。
この記事では、賃貸借契約において重要な条項についてのチェックポイントについて解説します。
1.賃貸借契約とは
賃貸借契約は、
当事者がある物の使用収益を行わせることを約束し、これに対して他方が対価を支払うこと及び引渡しを受けた物を契約終了時に返還することを約束することによって成立します(民法601条)。
賃貸借の目的物は土地・建物のほか、時計や機械、器具、書籍、生活用品等あらゆる種類の物に及びます。
2.借地借家法の適用のある建物とは
建物賃貸借契約においては、常に借地借家法の適用があります。
借地借家法の適用のあるのは「建物」の賃貸借契約ですので「建物」の意味が問題となります。
一般的には、借地借家法の適用の対象となる「建物」としては、土地に定着し、周壁屋蓋を有し、住居や営業等の用に供することができる永続性を有し、かつ、独立の不動産として登記することができる物である必要があります。
およそ建物であれば、建物の種類・構造・用途・使用・収益目的を問いません。
また、借地借家法は、居住用借家と事業用借家を区別していません。
そのため、たとえば、事務所・倉庫・店舗・工場用建物の賃貸借であっても借地借家法が適用されます。
また、建物の大小を問わず借地借家法が適用されます。
そのため、たとえば、大手貸ビル会社が自己所有の100階建の超高層ビルを大手金融グループの持株会社に一括で賃貸した場合であっても、この賃貸借契約に借地借家法が適用されます。
3.原状回復義務
契約終了時に問題として上がってくることが多いのが、借主の原状回復義務です。
賃借人は、賃貸借契約が終了した場合には、賃借物を借りた当時の状態にできるだけ戻した上で賃貸人に返還する義務があります(原状回復義務。民法601条、621条)。
賃借人が負う原状回復義務の対象は、その発生原因によって2つに大別できます。
1つは、「通常損耗」です。通常損耗とは、通常の使用及び収益によって生じた賃借物の損耗です。
日照によるクロスの変色、家具の設置によるカーペットのへこみ等です。
もう1つは、「特別損耗」です。
特別損耗とは、通常の使用方法を超えるような使用による損耗をいいます。
喫煙によって生じた天井、壁のヤニ汚れが典型例です。
特別損耗については、借主が原状回復義務を負います。
では、通常損耗について、賃借人負担とする旨の特約は有効でしょうか。
(1)住居用建物の場合
判例によれば、賃借人の原状回復義務には、特約のない限り、通常損耗に係るものは含まれず、その補修費用は、賃貸人が負担するべきものであるが、これと異なる特約を設けることは、契約自由の原則から認められるとしています。
もっとも、住居用建物の場合は、原則として、通常使用に伴う毀損・損耗についてのリフォーム費用は、本来賃料に含まれていると解されるため、特約が無効とされないためには、以下のプロセスを踏む必要があります。
通常損耗について借主負担にするためには、賃借人が補修費を負担することとなる通常損耗の範囲につき、①契約書に具体的に明記するか、②賃貸人が賃借人に口頭により説明し、賃借人にその旨を明確に認識させる必要があります。
口頭での説明では、後のトラブルに発展しかねませんので、①の契約書に明記することが推奨されます。
契約書に明記する場合には、少なくとも以下の4項目について明記する必要があります。
(2)事業用建物の場合
通常損耗について賃借人負担とする特約が有効となる可能性は十分にあります。
賃借人保護の必要性が高い居住用建物とは異なり、オフィスビルは市場原理や経済的合理性といった商業的な価値観により運営されているためです。
そのため、賃貸人として、原状回復義務の範囲を拡大する特約を設けることを検討すべきです。
他方で、賃借人側としては、特約条項を削除・修正していく必要があります。
特約を設ける際には、上記3⑴❶~❸項目を契約書に明記しましょう。
4.更新料条項の有効性
更新料は、賃貸借期間が満了し、賃貸借契約を更新する際に、賃貸人と賃借人との間で授受される金銭です。
この更新料は、賃料の前払・補充、賃貸借契約継続のための対価等の趣旨を含む複合的な性質を有するものとされています。
この更新料の有効性について、判例は、
賃貸借契約書に一義的かつ具体的に記載された更新料条項は、特段の事情がない限り、無効にはならないとしています。
そして、特段の事情として、更新料の額が賃料の額、賃貸借契約が更新される期間等に照らして高額に過ぎることを挙げています。
更新料条項の有効性は個別判断となりますが、賃貸借の契約期間が1年間であれば、賃料1~2ケ月分程度の更新料であれば、無効となる可能性は低いと解することができます。
5.中途解約について
契約期間を定めた場合には、当該期間は契約が継続し、中途解約はできないのが原則です。
裁判例においても、中途解約規定がない場合に、賃貸借契約の中途解約を求めなったものが存在します(東京地裁平成23年5月24日判決)。
契約期間中に中途解約を認めるためには、中途解約条項を定めておく必要があります。
もっとも、賃貸人からの中途解約申入れには正当事由が必要であるため(借地借家法28条)、賃借人が契約期間中に中途解約をするにあたっては高いハードルがあります。
他方で、賃借人からの中途解約の申入れについては、借地借家法にはこれを制限する規定がないため、 特約通りに中途解約をすることができます。
そのため、中途解約条項は、主に、賃借人の利益となる条項です。
賃貸人としては、賃借人から中途解約がなされると、契約期間中の賃料を得ることができなくなる恐れがあります。
そのため、中途解約条項を設けない、中途解約禁止条項を設ける、中途解約の場合の違約金条項を設ける等の対策をする必要があります。
違約金条項としては、中途解約する時期に応じて、賃借人に一定額の解約金を負担させる旨の条項等が考えられます。
また、 賃貸人に損害がある場合には、解約金の他に損害賠償請求をすることができる旨の条項を置いておくことが推奨されます。
今回は、建物賃貸借契約書のチェックポイントについてご説明しました。
もっとも、本記事では、賃貸借契約の重要なチェックポイントの一部についてしか取り上げていません。
賃貸借契約のチェックポイントは多岐にわたります。
賃貸人・賃借人であることを問わず、自社(自己)にとって不利な条項を削除・修正し、有利な条項に修正する必要があります。
賃貸借契約に限らず、契約書の作成、契約書チェックでお困りの場合には弊所にお気軽にご相談ください。
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