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弁護士コラム
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公開日:2021.6.25
企業法務ビジネスモデル特許について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は「ビジネスモデル特許」について取り上げます。
1.ビジネスモデル特許とは?
「ビジネスモデル特許」という言葉を聞いて、自社のビジネスモデルが特許になるのかと思った方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、ビジネスモデルそのものには特許権は与えられません。
特許権が与えられるのは、特許庁に出願して認められた発明に対してだけです。そして、発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と法律で定義されています。
ビジネスモデルそのものは、人為的な取り決めであって、自然法則を利用した技術的思想ではないため、発明に該当しないのです。
では、ビジネスモデル特許とは何かと言いますと、ビジネスモデルを実現するに際し、利用されているICT等の技術的思想に対して与えられる特許のことを指します。
ただし、ビジネスモデル特許は法律用語ではなく、特許庁では、「ビジネス関連発明(※)」の1つとして位置づけられています。
特許庁によれば、「ビジネス関連発明」の出願数は、2000年に出願ブームが生じた後、減少傾向にありましたが、2012年から再び増加傾向にあります。スマートフォンやSNSの普及に加えて、AIやIoT技術の進展によって、ICTを活用した新たなサービスが創出される分野(金融分野やヘルスケア分野など)が拡大していることが一因に挙げられています。今後も出願数の増加が予想されます。
※ビジネス関連発明とは、ビジネス方法がICT(情報通信技術)を利用して実現された発明のことです。
2.ビジネスモデル特許の具体例
(1) ワンクリック特許
Amazon(子会社や関連会社を含みます)は、日本でも多くの特許権を取得していますが、そのAmazonの持つビジネスモデル特許の中で最も有名なものが「シングル・アクション注文」に関する特許(いわゆる「ワンクリック特許」と言われるもの)です。
日本では1998年9月14日に出願され、2012年3月に特許として登録されました。しかし、特許権の有効期間は出願の日から20年ですので、現在では既に特許の有効期間を満了しており、誰でも利用できる発明となっています。
出願当時、インターネット上での商品の購入においては、ショッピング・カート・モデル(注文した商品がショッピング・カートに追加され、注文者が支払い情報や送付先を入力して発注する方法)が一般的でしたが、このワンクリック特許では、あらかじめ支払い情報や送付先を登録しておくことで、ボタンをクリックするだけでショッピング・カート画面を経ずに注文を完了することができます。また、ワンクリックで注文した複数の商品の注文を1つの注文に結合するという特徴も有しています。そうすることで、注文までのステップ数を減らして、買い物の煩わしさを解消するとともに、発注する時に送信するセンシティブ情報を最小限に抑えることができる発明でした。
(2) Amazon Go
Amazon Goとは、Amazon Goアプリを利用するだけで、レジを通すことなく、商品を決済できるコンビニエンスストアのコンピュータシステムに関する発明のことです。2018年1月に、アメリカワシントン州のシアトルでAmason Goの第1号店がオープンして話題になりました。
日本では2014年6月18日に出願され、2019年1月に特許として登録されています。
コンビニエンスストアでは、商品を購入するためには、商品をレジに持っていって決済する方法がとられていますが、Amazon Goでは、レジを通らずに商品を決済することができます。それだけでなく、年齢制限がある商品の購入や万引きの防止にも役立っており、そのうち日本でもレジがないコンビニエンスストアが導入されるようになるかもしれません。
3.ビジネスモデル特許のメリット
では、ビジネスモデル特許を取得することで、企業にはどのようなメリットあるのでしょうか。
(1) ビジネスモデルの独占利用
ビジネスモデル特許は、特許庁に登録された特許発明です(冒頭に申し上げたとおり、ビジネスモデルそのものは発明ではありません)ので、特許権という排他的独占権が付与されます。そのため、ライバル企業が登録された特許発明であるビジネスモデルを展開しても、差止めや損害賠償の請求をすることができます。
また、ライバル企業が登録された特許発明であるビジネスモデルを利用したい考えた場合、利用を許諾する代わりに、実施料を受け取ることができます。
このように、ビジネスモデル特許を取得することで、そのビジネスモデルを独占的に利用できる点に価値があります。
(2) 第三者への信頼につながる
特許庁に発明が登録されるためには、様々な要件をクリアしなければなりませんので、特許庁に発明が登録されたということで、自社のビジネスモデルの優位性をアピールすることができます。特許庁に発明が登録されると、特許第〇〇〇号という特許番号が付されますので、特許番号をウェブサイトなどに表示することもできます。
そうすることによって、顧客からの信頼や投資家からの信頼につながります。
4.ビジネスモデル特許のデメリット
特許庁に発明を出願すると、発明内容が公開されます。ですので、もし自社のビジネスモデルをノウハウとして秘匿したいのであれば、特許出願はすべきではありません。
今後、ビジネスにおいてICTを活用した新しいサービスの創出が重要になってきます。この機会に、ビジネスモデル特許について考えてみてはいかがでしょうか。
以上
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