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公開日:2024.10.4
企業法務秘密保持契約書のチェックポイント
弁護士法人PROの花井宏和です。
秘密保持契約書は、あらゆる業務・事業分野において締結される契約であり、企業活動を行っていく上で使用頻度の多い契約です。
それゆえ、自社のひな形をつい使い回してしまっているということもあるのではないでしょうか。
秘密保持契約を締結せずに取引関係に入ってしまうと、営業秘密の漏洩が発生するリスクがあり、企業にとって死活問題となり得ます。
秘密保持契約書を作成・使用するにあたっては自社が情報を開示する側であるか、情報の開示を受ける側であるのかを意識する必要があります。
また、既存ビジネスとの関係性等も意識する必要があります。
本記事と次回の記事の2回に分けて、秘密保持契約書のチェックポイントについて解説します。
1.秘密保持契約とは
秘密保持契約とは、契約当事者の一方から他方に対して開示される情報を、秘密として取り扱うことを内容とする契約です。
守秘義務契約や機密保持契約等と称されることもあります。
秘密保持契約が締結される場面は大別して2つあります。
これらの場面で秘密保持契約を締結しておかなければ、自社の経営ノウハウや技術情報が第三者に開示されてしまったり、開示した目的外の利用をされてしまうリスクがあります。
そのため、これらの場面では、秘密保持契約を締結する必要があります。
秘密保持契約は、本体たる契約とは別個に締結されることもありますが、本体たる契約の中で秘密保持条項として設けられることもあります。
2.目的規定
秘密保持契約においては、目的規定の記載では必須ではありません。
もっとも、目的が明記されていれば当事者にとっても情報を開示する理由が明確になり便宜ですし、契約の解釈の指針ともなりえます。
また、目的を明記しておけば、開示した情報を目的外で使用されないようにするために役立ちます。
情報を開示する側としては、目的が広範にならないように注意する必要があります。
開示した情報が当初の想定を超えて意図しない形で利用されてしまうおそれがあるからです。
他方で、目的の範囲が狭すぎると、製品の共同開発等の場合には、本来の目的が達成できなくなってしまう可能性があります。
そのため、秘密情報が使用される場面を具体的に想定し、適切に目的規定を定める必要があります。
また、本来の契約に関連する契約がある場合は、関連する契約についても目的規定の中に盛り込むか検討する必要があります。
3.秘密情報開示主体の確認
秘密保持契約は、当事者の一方が他方に対して情報を開示するケースと、当事者双方が情報を開示するケースがあります。
そのため、一方から開示される情報のみを秘密情報とするのか、双方から開示される情報のいずれも秘密情報とするのかを確認する必要があります。
4.秘密情報の範囲
【開示する側】
秘密情報の範囲を広範にし、漏れのないようにする方が有利になります。
そのため、開示する一切の情報が秘密情報として秘密保持契約の保護対象となるように定義することが有益です。
もっとも、一切の開示情報を秘密情報とせずに、開示の際に秘密である旨の表示がある情報についてのみ秘密情報とすることには、開示の都度、受領者に対して秘密保持義務が課されることの注意喚起ができるというメリットもあります。
このように一定の情報のみを秘密情報とする場合には、①メールの件名や本文冒頭に秘密情報である旨の表示をメールの都度記載し、紙媒体であれば「マル秘」と付記しておく等の措置を取る必要があります。
また、秘密情報を定義づけする場合には、②その他、開示した一切の情報との条項を盛り込んでおき、列挙されていない情報が保護の対象外とならないように注意する必要があります。
また、「言った言わない」の不要な争いを避けるためにも、口頭での秘密情報の開示があった場合は、後日書面にて提供する旨の定めを置くことが望ましいです。
マル秘と付記することを忘れないようにしてください。
【受領する側】
情報の受領側としては、秘密情報の範囲を特定しておく必要があります。
秘密情報の範囲を特定していないと、開示された情報の中に、既に受領者側にて保有していた情報が含まれていた場合、かかる情報まで秘密情報として扱われてしまい、秘密保持義務違反の主張を受ける可能性があるためです。
あるいは、秘密保持義務違反の主張がなされる可能性を危惧して、かかる情報を利用できなくなく可能性があります。
そのため、秘密情報の範囲を明確に特定しておく必要があります。
5.秘密情報の例外
秘密情報の例外規定にいては、以下の4つの例外が規程されるのが通常です。
情報の受領者としては、これらの4つの規定がもれなく規定されているかチェックする必要があります。
製品開発契約等の場合には、「相手方から開示された情報とは無関係に、独自の開発活動を行った結果取得した情報」という例外規定をさらに盛り込んでおく必要があります。
独自開発した情報を秘密保持義務の対象外とし、自社の製品開発に影響が及ぶ余地を排除する必要があるためです。
その他には、法令等に基づいて開示を要求された情報や、情報受領者の従業員に無形的に残留した情報について例外規定を設けることも検討に値します。
もっとも、後者については、開示側からの反論があり得ますので、その場合には、開示対象となる役職員や従業員の範囲を制限することを検討すべきです。
秘密情報の例外に該当することについては、情報受領者側において立証する必要があるのが原則です。
秘密情報の例外に該当すれば、情報受領者は、秘密情報義務違反を免れるという有利な効果を得ることができるためです。
もっとも、立証責任の所在を明確にするために、例外に該当することの立証責任が情報受領者側にある旨の規定を定めておくのがよいでしょう。
今回は、秘密保持契約書のチェックポイントについてご説明しました。
秘密保持契約書を定めておかなければ、経営上の重要な情報が流出し、企業にとって死活問題となりかねません。
事前に経営上の重要な情報については漏洩等を防ぐ手段を講じる必要があります。
また、情報受領者側としても、秘密保持義務違反の責任を問われないように、秘密情報について特定する等の措置を取る必要があります。
秘密保持契約書に限らず、契約書の作成、契約書チェックでお困りの場合には弊所にお気軽にご相談ください。
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