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公開日:2024.12.6
人事・労務運送業の上限規制
弁護士法人PROの弁護士の花井宏和です。
2024年4月1日から自動車運転業務の上限規制が変わりました。
この変更に伴うチェックポイントについて解説していきます。
1.上限規制の概要
自動車運転の業務に関しては、以下のような取扱いとなります。
①特別条項付き36協定を締結する場合の年間の時間外労働の上限が年960時間となります。
②時間外労働と休日労働の合計時間について、月100時間未満とする規制は適用されません。
③時間外労働と休日労働の合計時間について、複数月(2カ月)平均で80時間以内とする規制は適用されません。
④時間外労働時間が月45時間を超えることができるのは年6カ月までとする規制は適用されません。
2.労働時間の違反について
労働基準法は、使用者は、労働者に、休憩時間を除き1週間について40時間を超えて労働させてはならないと規定しています。
もっとも、いわゆる36協定の特別条項を定めれば、週40時間を超える労働も可能になります。
また、月45時間を超える時間外労働をすることも可能になります。
これに関連して、典型的な労働時間の違反例としては、特別条項にて月45時間を超える時間外労働をすることができる旨定めていた場合において、かかる特別条項の発動回数が年6回を超えた場合が挙げられます。
つまり、特別条項を定めたとしても、年に6回以上月45時間を超える時間外労働をさせることはできないのが原則です。
ところが、自動車運転業務については、月45時間超の回数について上限が設けられていません。
そのため、月45時間超の時間外労働をする回数が年6回以上となっても労基法違反とはなりません。
また、特別条項で定めた場合であっても、時間外労働と休日労働の合計時間は、複数月(2カ月以上)平均で1カ月あたり80時間以内としなければなりません。
そのため、36協定で定めた時間内であるが、令和6年11月と同年12月の時間外労働時間が2カ月平均で1カ月80時間を超えていた場合には、労基法違反となります。
例えば
他方で、自動車運転事業者については、かかる規制についても適用がありません。
例えば
時間外労働時間が下記である場合
令和6年11月:79時間
令和6年12月:85時間
⇩
2カ月平均で時間外労働時間が1カ月あたり80時間を超えていますが、労基法上の違反はないことになります。
3.年間の時間外労働の上限年960時間(休日労働を含まない)について
36協定の締結・届出が必要な休日労働は、労基法第35条の週1回の休日(法定休日)に労働させる場合をいいます。
法定休日は、1週間が終わった時点で、休日が確保されているかで判断されます。
週1回の休日の他に、使用者が休日と定めた日に労働させる場合は休日労働ではありません。
したがって、週休2日制を取る場合には、週2日の休日の内いずれかの日に労働させたとしても、他の1日の休日が確保されている限り労基法35条に違反しません。
【回答】
36協定の締結・届出が必要な法定休日労働にはあたりません。
Aさんは土曜日に休日を取得しているため、法定休日は確保できているためです。
また、日曜日の労働は法定時間外労働にもあたりません。
法定労働を考えるに当たって、週の起算日は就業規則等に別段の定めがなければ日曜日になります。
そのため、週の初めである日曜日の休日に8時間働いた時点では法定時間外労働とはなりません。
もっとも、Aさんの労働時間は、日曜日から木曜日までで週40時間になっています。
そのため、Aさんは、金曜日の8時間の労働については、週40時間を超える労働を行っており、法定時間外労働となります。
4.副業・兼業の労働時間の通算について
労働基準法第38条は、労働時間は、事業場を異にする場合においても、 労働時間に関する規定の適用については通算すると定めています。
この場合の事業場を異にする場合には、事業主を異にする事業場において労働する場合も含まれます。
【回答】
Cさんについては労基法上問題ありません。
Cさんは、A社にて既に週40時間労働しているため、後に契約したB社での労働時間は全て時間外労働になります。
Cさんの時間外労働の合計時間は、108時間です。
もっとも自動車運転業務に該当するので、休日労働及び時間外労働の合計を1カ月100時間未満とする規制は適用されません。
よって、Cさんについては、労働基準法上は問題なしとされます。
仮にCさんが自動車運転者ではなく、事務員である場合には、A社とB社の合計時間外労働時間は108時間ですので、2024年12月の時間外労働を日時順に累積し、A社とB社のうち100時間から108時間の時間外労働をさせた方が、労基法第36条第6項2号違反となります。
5.最後に
今回は、自動車運転業務の上限規制についてご説明しました。
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