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弁護士コラム
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公開日:2025.3.7
企業法務売買契約書の審査ポイント
弁護士法人PRO 弁護士の伊藤崇です。
売買契約はだれしも経験ある契約であり、世の中で最も多い契約です。
そして、売買契約書は、取引の基本となる重要な契約書類です。
契約内容に曖昧な点やリスクがあると、トラブルの原因となるため、慎重な審査が必要です。
以下、売買契約書をチェックする際の主なポイントを解説します。
1.売買契約の基本
売買契約とは何かについてはご存知の方も多いと思いますが、民法555条では当事者の一方がある財産権を相手方に移転することを約し、相手方がこれに対してその代金を支払うことを約することで成立すると定められています。
売買契約が成立すると、売主は物を引き渡さないといけませんし、買主は代金を支払わなければなりません。
このようにお互いがしなければならない事(=債務)が発生しますが、これらの債務は契約書がなくても発生します。
では、何のために契約書がいるのかというと、契約内容について双方の認識にずれができたときの確認であったり、何らかのトラブルが生じた時に円滑に解決するためのツールとして非常に役立つから作成するのです。
したがって、売買契約書はこのような観点から作成することが必要ということになります。
以下では、特に気を付けておくべき点を解説します。
2.契約当事者の確認
契約書に記載された売主・買主の名称、住所、代表者などが正確であるか確認します。
法人の場合、商業登記簿謄本と照合し、最新の情報であるかをチェックしましょう。
3.売買の目的物の特定
売買の対象となる物品や不動産が正確に特定されているかを確認します。
商品であれば品番・数量・品質基準、不動産であれば地番・面積・構造などが明確に記載されているかが重要です。
実際の紛争でも目的物が明確でなかったことによるトラブルはとても多いので、目的物の特定には特に注意を払いましょう。
4.代金の支払い条件
売買代金の金額、支払期日、支払方法(銀行振込・手形など)について明確に規定されているかを確認します。
また、遅延損害金の定めがあるかもチェックが必要です。
この他にも、契約書に記載されている金額に消費税が含まれているのかどうか明確にしましょう。
金額が上がるほど、消費税額も大きくなるので、この点が不明確だと大きな紛争に発展する可能性もあります。
5.引渡しの条件
商品の引渡し場所、引渡し時期、方法(直接引渡し・運送業者利用など)について明確な取り決めがあるかを確認します。
商事売買においては、これまでのやり方があるからといって契約書に書かれていないことも多いかと思いますが、具体的な納品手順についてきちんと定めておくことが大切です。
契約書に定めることで却って融通が利かなくなるということでしたら、自社がどこまでの義務を負っているのかを確認しておくことが大切です。
売買対象に欠陥があった場合の対応について、契約不適合責任の条項が適切に規定されているかを確認します。
責任の範囲や期間、損害賠償の制限なども重要なチェックポイントです。
責任の範囲とは、具体的には下記の4つが考えられ、いかなる場合にどのような請求ができるのかを確認しましょう。
また、これら4つの請求をするには、買主は目的物の不適合を知った時から1年以内に売主に通知しなければならず(民法566条)、さらに、商人間の売買においては、買主は目的物を受領したときは遅滞なく、その物を検査し、売主に通知しなければこれらの請求ができません(商法526条1項)。
また、商人間の売買においては検査時に直ちに発見できない契約不適合に関する責任の期間が検査後6ヶ月以内に制限されており(商法526条2項)、民法よりも責任期間が短縮化されていますので注意が必要です。
したがって、契約書を見て、法律どおりの定めなのか、それとも法律とは異なる定めになっているのかを確認しなければなりません。
特に、商取引には、「検査完了後の不適合責任は負わない」との特約を設けることも多いので注意が必要です。
損害賠償の制限については、免責される条項があるのか、損害賠償額の上限が定められているのか、損害賠償の対象となる損害の範囲について制限が設けられているか否かについて確認する必要があります。
契約解除の条件(解除事由・解除の方法・違約金など)が明確に定められているかを確認します。
どのような場合に解除できるのか、解除は書面によって行われるのか口頭でも可能なのか、無催告による解除が可能なのか、違約金の額は定められているのかをチェックする必要があります。
契約に関する紛争が発生した場合の解決方法が適切に定められているかを確認します。
裁判管轄は、自らの住所地や自社の本店所在地による裁判所が定められていると、いざ紛争が生じた時に慌てずに済むので、この点もしっかりと確認しましょう。
国際取引による場合は、準拠法(どの国の法律を適用するか)も明記しておくことが望ましいです。
売買契約書の審査では、契約内容の明確性とリスク管理の観点から、慎重にチェックを行うことが重要です。
契約の不備が後のトラブルにつながることを防ぐため、細部まで確認し、必要に応じて弁護士などの専門家の助言を受けることも有効です。
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