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弁護士コラム
Column
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公開日:2025.8.29
企業法務職場のトラブルを未然に防ぐ!ハラスメント防止の基本と規程
弁護士法人PROの弁護士 伊藤崇です。
「パワハラ」「セクハラ」といった言葉は、もはやニュースやドラマの中だけの話ではありません。
職場で起こるさまざまなハラスメントは、働く人の心身を蝕み、企業の生産性を低下させるだけでなく、社会的な信用を大きく損なうリスクとなっています。
SNSが発達した現代では、一度トラブルが起きれば、瞬く間に情報が拡散し、企業の存続すら危うくなる可能性も否定できません。
「うちの会社は大丈夫」と安易に考える時代は終わりました。
働き方が多様化し、人々の意識が変わる中で、企業は従業員が安心して働ける環境を整備する責任を強く問われています。
本コラムでは、ハラスメントを未然に防ぐための法的な考え方と、具体的に企業が取り組むべき対策の基本を弁護士の視点から解説します。
1.法的な観点からハラスメントを整理する
ハラスメント対策は、企業の「努力義務」から「法的義務」へと移行しています。
特に重要なのが、
2020年に大企業で、2022年には中小企業でも義務化された「パワハラ防止法」(労働施策総合推進法)です。
この法律は、企業に対して以下の4つの措置を講じることを義務付けています。
ハラスメントの判断基準は、
法律で厳密に定められているわけではありません。
しかし、過去の判例では、行為の悪質性や被害者の受け止め方、行為が行われた状況などを総合的に考慮して判断されます。
たとえ「冗談のつもりだった」「良かれと思って言った」としても、
相手が不快に感じればハラスメントに該当する可能性があるのです。
2.企業が取り組むべき「基本方針」と「防止規程」
ハラスメント防止のためには、経営トップが 「ハラスメントを許さない」という明確な意思を内外に示すことが不可欠です。
これを文書化したものが「ハラスメント防止の基本方針」です。
この方針を社内に周知し、従業員一人ひとりに「なぜ防止が必要なのか」「何がハラスメントにあたるのか」を理解してもらうことが第一歩となります。
そして、この方針を具体的に実行するためのルールを定めたものが「ハラスメント防止規程」です。
就業規則の一部として定めることも可能ですが、独立した規程として作成するのが一般的です。
規程には、以下の事項を必ず盛り込みましょう。
3.具体的な防止策:企業が取り組むべき「基本方針」と「防止規程」
ハラスメント対策は、社員が入社する前から始まっています。
雇用契約書や労働条件通知書に、
ハラスメント防止に関する企業の姿勢や規程の存在を明記しておくことで、入社時から意識付けを促すことができます。
また、特に管理職やハラスメントのリスクが高いポジションの従業員には、入社時や昇進時に
「ハラスメント行為を行わないこと」を誓約する書面を取り交わすことも有効な手段です。
これは、単なる書面上の手続きではなく、ハラスメントは許されないという会社の強いメッセージを伝えることにつながります。
4.ハラスメント対策は「会社の文化」を作る第一歩
ハラスメント対策は、法律で義務付けられているからやる、という受動的なものではありません。
従業員が互いを尊重し、健全な関係を築くための“「会社の文化」そのもの”を創り出す、極めて能動的で重要な経営課題です。
ハラスメントを未然に防ぐには、規程の整備だけでなく、定期的な研修の実施や、風通しの良い組織風土づくりが不可欠です。
ハラスメント相談がしにくい雰囲気の職場は、それ自体が大きなリスクとなります。
企業は、ハラスメントを単なる「トラブル」として捉えるのではなく、「より良い職場を作るための課題」として向き合うことが求められます。
本コラムが、ハラスメントのない、安心して働ける職場づくりに向けた一歩を踏み出すきっかけになれば幸いです。
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