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公開日:2026.4.17
人事・労務リモートワーク時代の労働時間管理
弁護士法人PROの弁護士 元木琢己です。
今日において、リモートワークが広く普及し、労働者が実際にどの程度の時間働いているかを把握することが難しい場面も珍しくありません。
しかしながら、
これまで通り、使用者には労働時間を適切に把握し、管理する必要があることに変わりありません。
そこで、今回は、リモートワークによる在宅勤務を念頭に、どのように労働時間を把握・管理すればよいのか紹介します。
1.在宅勤務の特徴
在宅勤務には、労働者にとって、 通勤時間の短縮や働く時間・場所を柔軟にするといった仕事と生活の調和にメリットがあります。
また、使用者にとっても、
育児介護等を理由とした離職の防止や、遠隔地の人材確保といったことが利点となっています。
他方で、労働基準法や労働安全衛生法等の適用を受けることに変わりはなく、使用者は在宅勤務の労働者を通常勤務の労働者と同等の取り扱いをする必要があります。
そのため、在宅勤務でも通常勤務と同じく、会社が労働時間を適正に把握する必要があります。
しかしながら、自宅における勤務状況を詳細に確認することはできません。
その上、育児介護のために在宅勤務を行う場合には、即時かつ随時に仕事を中断して対応をすることとなり、在宅勤務特有の問題が生じます。
このように、在宅勤務を行う場合、労働時間の適正な把握や、いわゆる中抜け時間の取り扱いといった問題に対処しなければなりません。
2.在宅勤務における労働時間管理
(1)オフィス勤務の場合
従来のオフィスでの勤務であれば、次のような方法により、労働時間の把握が可能でした。
◆使用者が、自ら現認することにより確認し、適正に記録する。
◆タイムカード、ICカード、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として確認し、適正に記録する。
これらの方法が、 適切かつ原則的な方法であるとされていましたし、実際にこのような方法によって労働時間の把握を行っていた企業も多いかと思います。
(2)在宅勤務の場合
しかしながら、在宅勤務の場合には、労働者は自宅で業務に当たるため、使用者による現認やタイムカード等の方法を用いることはできません。
特に、 使用者によるwebカメラを用いた労働時間の現認は、プライバシー保護という観点からも適切ではありません。
では、どのような方法で労働時間の把握をすればよいのでしょうか?
厚生労働省によるガイドラインによれば、原則的な労働時間把握の方法として、パソコンの使用時間の記録等の客観的な記録を基礎として把握する方法が望ましいとされています。
しかしながら、後述する中抜けの問題のほか、客観的な記録をもとにしていても、その記録が労働者の始業及び終業の時間を反映できない場合も多いのではないでしょうか。
このような場合には、
労働者の自己申告により労働時間を把握することも可能です。
ただし、その場合には使用者としては、自己申告による労働時間が、実際の労働時間と合致するよう、以下の対策を講じることが求められます。
①運用に関する説明
労働者に対して労働時間の実態を記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うことや、実際に労働時間を管理する者に対して、自己申告制の適正な運用等について十分な説明を行うこと
②乖離の補正
労働者からの自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、パソコンの使用状況など客観的な事実と、自己申告された始業・終業時刻との間に著しい乖離があることを把握した場合には、所要の労働時間の補正をすること
③適正報告のための制度作り
自己申告できる時間外労働の時間数に上限を設けるなど、労働者による労働時間の適正な申告を阻害する措置を講じてはならないこと
社内のシステム上、いずれの方法が可能かによって、検討するのがよいでしょう。
また、これらの管理方法についてあらかじめ明確にしておくと良いでしょう。
3.「中抜け」の問題
(1)「中抜け時間」とは?
リモートワークによる在宅勤務では、育児や介護等の事情により、まとまった時間、労働者が業務から離れることが想定されます。
これが、いわゆる「中抜け時間」です。
他方で、オフィス勤務の場合であっても、 お手洗いに行くことや、周囲との雑談、喫煙など、業務から離れることもあります(業務の中断)。
これらの短時間の業務の中断は通常、労働時間外との取り扱いは受けません。
どちらも業務を行っていない点は同じですが、何が異なるのでしょうか?
「中抜け時間」と「業務の中断」とは、 実際には業務を行っていないとしても、指示があれば即座に業務に戻る必要があるか、自由な時間が保障されているかによって区別されます。
「業務の中断」であれば、指示があれば業務に戻る必要があるのに対して、「中抜け時間」では、業務に戻らず、自由に育児介護を続けることができます。
つまり、使用者の指揮命令のもとにあるのが「業務の中断」、指揮命令のもとにないのが「 中抜け時間」ということになります。
そして、使用者による指示を受けることなく、自由に過ごすことができる「中抜け時間」の取り扱いが、リモートワークによる在宅勤務特有の問題となります。
(2)「中抜け時間」
では、「中抜け時間」については、どのように取り扱うべきなのでしょうか?
「中抜け時間」については、 使用者は把握することとしても、把握せずに始業及び終業の時刻のみを把握することとしても、いずれでもよいとされています。
「中抜け時間」を把握しない場合
①始業及び終業の時刻の間の時間について、休憩時間を除き労働時間として取り扱うこととなるでしょう。
「中抜け時間」を把握する場合
その方法として、例えば一日の終業時に、労働者から報告させることなどが考えられ、「中抜け時間」の取扱いとしては
②休憩時間として取り扱い終業時刻を繰り下げる。
③時間単位の年次有給休暇として取り扱う。
などが考えられます。
②の方法の場合、休憩時間の一斉付与との関係で、一部の業種を除いて、労使協定の締結が必要となります。
もっとも、法定されている休憩時間を超える休憩時間は、一斉付与の対象とならないため 、法定時間を超える休憩時間の取得を個別に認めるという方法もあります。
③の方法をとる場合、半日単位での年休付与とは異なり、労使協定の締結が必要であり、年5日が限度とされています。
このような制限はありますが、 給与を失うことなく「中抜け時間」を使用できる点で、労働者にとってはメリットが大きいものとなります。
いずれの方法をとるにしても、「中抜け時間」の取扱いについては、 あらかじめ使用者が就業規則等において定めておくことが重要です。
4.まとめ
在宅勤務においても、 労働時間の管理は適切に行う必要があります。
在宅勤務では、労働状況を直接確認することができないため、実際の労働時間と乖離が生まれないように、注意を払う必要があります。
また、「中抜け時間」の取り扱いについては、 「中抜け時間」中の労働者の行動を制限することがないように注意が必要です。
あらかじめ、「中抜け時間」の取り扱いについて、明確にしておきましょう。
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