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弁護士コラム
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公開日:2021.11.30
企業法務商標の使用について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は「商標の使用」について取り上げます。
1.商標の使用とは?
商標権を持っている人(商標権者)は、指定商品又は指定役務(サービス)について、登録されている商標(※1)を独占的に「使用」する権利を持っています。
例えば、コカ・コーラ社が商標権を持っている「アクエリアス」(登録番号第5998982号)の指定商品は「スポーツ用の清涼飲料」などです。
そのため、コカ・コーラ社以外の人が、指定商品である「スポーツ用の清涼飲料」に、登録商標である「アクエリアス」を「使用」すると商標権侵害となります。
※1
商標の概要については、弁護士コラム「商標の概要」をご参照ください。
では、商標の「使用」とはどのようなことを指すのでしょうか。
商標法では、商標の「使用」とは、以下の①~⑩の場合を指すと定められています。
①商品又は商品の包装に標章(※2)を付する行為
商品や商品の包装に直接標章を貼り付ける場合だけでなく、刻印したり、下げ札を付けたりする行為など、商品と商標の一体性を生み出す行為を指します。
例えば、ペットボトルに「アクエリアス」のラベルを貼り付ける行為はこれに該当します。
※2
標章とは、人の知覚によって認識できるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状もしくは色彩又はこれらの結合、音などのことを指します。
そして、標章のうち、商品や役務(サービス)について標章を使用するものを商標と呼んでいます。
例えば、「アクエリアス」は文字の標章ですが、コカ・コーラ社が清涼飲料水という商品に付けて使用している「アクエリアス」を商標というのです。
②商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡もしくは引渡しのために展示し、輸出し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
①は標章を付する行為そのものを指しましたが、②は標章が付されている商品や商品の包装を取引する行為を指しています。
並行輸入で「商標権侵害」が問題となるのは、「輸入」が商標の「使用」に含まれるからです。
③役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用する物に標章を付する行為
サービスの提供を受ける人の利用する物に標章を付する行為を指します。
例えば、飲食店の食器や金融機関のキャッシュカードに標章を付する行為などです。
④役務の提供に当たりその提供を受ける者の利用する物に標章を付したものを用いて役務を提供する行為
③はサービスの提供を受ける人の利用する物に標章を付する行為そのものを指しましたが、④は標章が付されている物を使ってサービスを提供する行為を指しています。
例えば、飲食店で標章が付された食器を使って飲食物を提供するサービスを行う行為、金融機関で標章が付されたキャッシュカードを使用して金融サービスを提供する行為などです。
⑤役務の提供の用に供する物に標章を付したものを役務の提供のために展示する行為
例えば、喫茶店で標章を付したコーヒーサイフォンを店内に置く行為などを指します。
⑥役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該役務の提供に係る物に標章を付する行為
例えば、クリーニング店でクリーニングに出されたお客さんの洋服に標章を付したタグを取り付ける行為などを指します。
⑦電磁的方法により行う映像面を介した役務の提供に当たりその映像面に標章を表示して役務を提供する行為
インターネットを通じてサービス提供を行うに当たって、モニター、ディスプレイ等に標章を表示してサービスの提供する行為などを指します。
例えば、宿泊施設の予約サイトの画面上に、標章を付して、宿泊予約サービスを提供する行為などです。
⑧商品もしくは役務に関する広告、価格表もしくは取引書類に標章を付して展示し、もしくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為
広告・価格表・取引書類に標章を付して、展示したり、配布したり、インターネットで提供する行為などを指します。
広告には、テレビ、インターネット、雑誌、新聞等による広告が含まれます。また、取引書類には、納品書、領収書、預金通帳、入場券などが含まれます。
⑨音の標章にあっては、①~⑧のほか、商品の譲渡もしくは引渡し又は役務の提供のために音の標章を発する行為
音の標章の場合には、商品の取引やサービス提供のために音を発する行為も商標の「使用」に該当します。
⑩その他、政令で定める行為
新しい商標に対応するための規定です。
2.商標の「使用」が問題になった事例
⑴ ノベルティに登録商標と同一の標章を付する行為
ノベルティとは、本来の取引商品・サービスの宣伝広告や販売促進のために無償で配布される物品を指します。
例えば、自動車等の販売の際に無償で配られるTシャツ、キーホールダー、保険の勧誘の際に無償で配られるメモ帳、ボールペンなどです。
ノベルティは、あくまで宣伝広告や販売促進のために無償で配布されるものですので、ノベルティそれ自体は有償で市場に流通するものではありません。
また、ノベルティに付された標章は、宣伝広告や販売促進の対象となっている本来の商品・サービスの商標だと認識されるのが通常ですので、ノベルティの物品そのものについて他の商品との識別機能が働くわけではありません。
そのため、一般的には、ノベルティは指定「商品」について商標を「使用」していると考えられています。
⑵ 飲食店でのテイクアウト商品に、テイクアウト商品を指定商品とする登録商標と同一の標章を付する行為
例えば、飲食店で飲食物を提供するサービスを行うに当たって、店内で提供される飲食物は「商品」ではなく、サービスの一環にすぎません。
しかし、飲食物をテイクアウト販売する場合には、飲食物が「商品」と扱われ、飲食物の包装に登録商標と同一の標章を付する行為は、指定「商品」について商標を「使用」しているといえるのかが問題となります。
一般的には、お店側がテイクアウトに積極的で、お客さんの利用も多い場合には、テイクアウト販売された飲食物は「商品」に該当するといえますので、指定「商品」について商標を「使用」していると判断されます。
その場合、例えば、店内でハンバーガーの飲食サービスを行っているお店で、テイクアウト商品の包装容器にマクドナルドの登録商標を付したものを使っていると、指定「商品」について登録商標を「使用」していますので、商標権侵害となってしまいます。
最近は、新型コロナウイルス感染症の影響で、テイクアウト商品が増えていますので、テイクアウトされた飲食物は、「商品」と判断されることが多いと考えられます。
反対に、レストランなどで、たまたまお客さんに飲食物の持ち帰りを認めているにすぎない場合には、「商品」には該当しないと考えられます。
商標の使用について、判断に迷う場合は、弁護士にご相談ください。
以上
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