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公開日:2026.10.14
人事・労務定年後再雇用制度とは?会社が知っておきたい基本的なルール
弁護士法人PROの弁護士 元木琢己です。
長寿化や少子高齢化の進展により、日本は超高齢社会となっています。
その一方で、年金支給年齢の引き上げや、医療費の自己負担増など、60歳を超えても働かないと生活が困難な状況となっています。
こうした社会的背景から、 高齢者の雇用が増える中、定年後の社員をどのように扱うかは、多くの会社にとって重要な問題となっています。
そこで今回は、高年齢者雇用安定法が定める「高年齢者雇用確保措置」の中でも、トラブルになりやすい定年後再雇用制度について、会社がまず知っておきたい基本的なルールを解説します。
1.会社は65歳までの雇用を確保する必要がある
定年後の雇用について重要となるのが、「 高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」、いわゆる高年齢者雇用安定法です。
高年齢者雇用安定法では、高齢者の雇用を確保するため、定年を設ける場合には原則として60歳以上とすることを義務付けています。
その上で、定年を65歳未満としている会社は、次のいずれかの措置を講じなければなりません。
①65歳まで定年を引き上げる
②65歳までの継続雇用制度を導入する
③定年制を廃止する
これらを「高年齢者雇用確保措置」といいます。
これらの雇用確保措置の中でも、今回は、 ②継続雇用制度について解説します。
2.継続雇用制度には「再雇用制度」と「勤務延長制度」がある
継続雇用制度とは、 現に雇用している高年齢者が希望するときは、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度をいいます。
そして、継続雇用制度には、「再雇用制度」と「勤務延長制度」の大きく2種類があります。
両者の大きな違いは、
定年時にいったん雇用関係を終了させるかどうかです。
(1)勤務延長制度
勤務延長制度では、定年時に雇用関係はいったん終了せず、従前の労働契約を継続します。
そのため、定年時に新たな労働契約へ切り替えることを前提とするものでなく、
勤務延長前の雇用条件が引き継がれる場合が多いです。
(2)再雇用制度
これに対して、再雇用制度とは、
定年になった労働者を退職させて、その後にもう一度雇用する制度です。
再雇用制度では、定年前の労働契約はいったん終了し、定年後に
新たな雇用契約を締結します。
そのため、再雇用時に、雇用形態や仕事内容、勤務日数、勤務時間、賃金などについて、定年前とは異なる条件を設定される場合が多くあります。
3.65歳までの再雇用は、原則として「希望者全員」が対象
前述のとおり、継続雇用制度とは、希望する高年齢者が、定年後も引き続いて働けるようにするための制度です。
したがって、会社が65歳までの雇用確保措置として再雇用制度を採用する場合、原則として、再雇用を希望する社員全員を対象とする必要があります。
そのため、例えば、
「人事評価が一定以上であること」
「会社が継続雇用を必要と認めた者であること」
「上司の推薦を受けた者であること」
といった基準によって、65歳までの継続雇用の対象者を会社が自由に選別することはできません。
もっとも、希望すればどのような場合でも必ず再雇用しなければならないというわけではありません。
心身の故障により業務に耐えられない場合や、勤務状況が著しく不良で職責を果たすことができない場合など、就業規則に定められた解雇事由や退職事由(年齢に係るものを除く。)に該当する場合には、継続雇用しないことができます。
ただし、これらに該当する者が当然に継続雇用の対象から外れるわけではありません。
あらかじめ、解雇事由や退職事由に該当する場合は除外するということを就業規則などに規定しておく必要があることに注意が必要です。
また、再雇用をしないとする場合にも、継続雇用しないことについて、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることにも注意が必要です。
4.65歳から70歳までは「努力義務」
65歳までと65歳以降とでは、会社に求められる対応が異なります。
65歳までについては、先ほど説明した雇用確保措置が会社の義務となっています。
これに対して、65歳から70歳までについては、「高年齢者就業確保措置」を講じることが
会社の努力義務とされています。
具体的には、
①70歳まで定年を引き上げる
②70歳までの継続雇用制度を導入する
③定年制を廃止する
④70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度を設ける
⑤70歳まで継続的に社会貢献事業に従事できる制度を設ける
といった方法があります。
65歳までの場合とは異なり、65歳以降の継続雇用については、合理的な対象者基準を設けることも認められています。
したがって会社としては、
「60歳定年 → 希望者全員を65歳まで再雇用 → 一定の基準を満たす社員について70歳まで再雇用」
といった
制度設計をすることも考えられます。
5.再雇用後の「労働条件」をどうするかが重要
定年後再雇用制度を導入する際、会社が特に悩みやすいのが、再雇用後の労働条件です。
例えば、
「定年前と比べて給与を下げてもよいのか」
「役職を外してもよいのか」
「仕事内容を変更してもよいのか」
「勤務日数や勤務時間を減らしてもよいのか」
といった問題があります。
定年後に再雇用したからといって、 定年前と全く同じ労働条件にしなければならないわけではありません。
一方で、「定年後の再雇用だから」という理由だけで、自由に賃金を下げたり、待遇を変更したりできるわけでもありません。
再雇用後の職務内容、責任の程度、勤務時間などを踏まえながら、 適切な労働条件を設定する必要があります。
この点は、定年後再雇用制度を運用する上で、会社にとって特に重要なポイントとなります。
そこで、次回は、「定年後再雇用における労働条件の適切な定め方」として、 賃金、仕事内容、勤務時間、正社員との待遇差などについて詳しく解説します。
定年後再雇用制度について、まず押さえておきたいポイントは次のとおりです。
◆ 65歳未満の定年を定める会社は、65歳までの雇用を確保するための措置を講じる必要がある
◆60歳定年を維持し、65歳まで再雇用する制度を設けることも可能
◆65歳までの再雇用制度は、 原則として希望者全員を対象とする必要がある
◆1年ごとの有期労働契約として再雇用することも可能
◆65歳から70歳までの就業機会の確保は 努力義務
◆再雇用後の給与や仕事内容などは、定年前と同じである必要はないものの、 適切に労働条件を設計する必要がある
次回は、定年後再雇用制度において、特に問題となりやすい再雇用後の労働条件の設定方法について解説します。
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