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公開日:2021.12.27
企業法務特許出願の概要について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は「特許出願の概要」について取り上げます。
1.特許出願とは?
特許出願とは、特許庁から発明に特許を付与してもらうための申請手続のことを言います。
発明は、特許庁に登録されることで初めて特許権という独占的利用権が与えられます。
特許出願手続は、簡単に言いますと、①出願、②審査、③特許査定、④特許料の納付、⑤設定登録という流れで行われます。
この流れは、大学に入学するまでの手続と似ているところがあります。
大学に入学するためには、①出願、②入学試験、③合否判定、④入学金の支払、⑤入学という手続を経ますので、大学に入学するまでの手続をイメージしていただけると分かりやすいかと思います。
2.特許出願の概要
次に、特許出願の概要について説明します。
⑴ ①出願について
出願とは、特許出願書類を、特許庁に提出することです。
郵送や特許庁への持参する方法のほか、インターネットを通じて出願を行うこともできます。
なお、特許出願には1万4000円の出願料がかかります。
出願日は、特許において重要な意味を持ちます(※)ので、特許出願することを決めたら、速やかに出願する必要があります。
※
■新規性、進歩性の基準日(出願日に存在する公知技術と同じ発明や公知技術から容易に考え得る発明には特許が与えられません)
■先願の地位の基準日(同じ発明が出願された場合、後に出願された発明には特許が与えられません)
■審査請求期間の起算日(審査請求は出願日から3年以内にしないと出願を取り下げたものとみなされます)
■出願公開期間の起算日(出願日から1年6か月を経過すると出願した発明が公開されます)
■特許権の存続期間の起算日(特許権は出願日から20年でなくなります)
出願を行うと、出願日から1年6か月経過するか、出願人から公開の請求があったときに、出願した発明が公開特許公報に掲載される形で公開されます(これを出願公開と言います)。
そのため、発明を公開せずにノウハウとして秘匿しておきたいということであれば、特許出願は行わない方が良いでしょう。
なぜ出願した発明が公開されるのかと言いますと、発明を公開することによって、公開された発明について重複して開発や投資を行うという無駄を省き、効率的に社会の技術レベルを向上させることができるからです。
しかし、公開するということは、誰でも公開された発明を実施できてしまうということになりますので、出願人には補償金請求権という権利が与えられます。これによって、出願人は、もし公開された発明が実施された場合には、警告書を送付した上で、特許庁に発明が登録された後に補償金の請求をすることができるようになっています。
⑵ ②審査について
出願がなされ、方式審査(形式事項の審査)が終わると、出願された発明に対し、特許を与えるべきかどうかの審査が行われます(これを出願審査と言います。)。
しかし、出願審査は、方式審査が終われば、自動的に行われるのではなく、出願人からの審査請求を待って行われることになっています。
自動的に出願審査を行うことになると、特許庁が大量の特許出願の全てを審査しなければならず、審査が大幅に遅延してしまうためです。
審査請求は、出願日から3年以内に行わないと出願を取り下げたものとみなされてしまいます。
また、審査請求に当たっては、13万8000円+(請求項の数×4000円)の審査請求料がかかります。
出願審査の期間(審査請求をしてから特許庁から何らかの通知が行われるまでの平均期間)は、9.5か月(2019年)となっています。
特許権の存続期間は、設定登録の日ではなく、出願日から20年となっていますので、この出願審査の期間を短縮して、特許権の存続期間をできるだけ長くしたい、早く特許権を取得したいというニーズに応えるため、特許庁は、早期に審査を行うために、優先審査、早期審査、スーパー早期審査という制度を用意しています。
優先審査とは、出願公開後、第三者がその特許出願に係る発明を業として実施しており、出願人と実施者との間で生じている紛争を早期に解決する必要がある特許出願について、優先的に審査を進める制度です。
優先審査に関する事情説明書を提出して申請します。
早期審査とは、例えば、実施関連出願(※1)、外国関連出願(※2)や中小企業又は個人による特許出願など、一定の条件を満たす出願については、早期審査を申請することができ、その場合、出願審査の期間は平均2、3か月(2017年)です。
早期審査に関する事情説明書を提出して申請します。
なお、ベンチャー企業(※3)による出願で、実施関連出願の場合には、ベンチャー企業対応面接活用早期審査が利用でき、面接を通じて戦略的な特許権の取得につなげることとされています。
※1 出願人や出願人から許諾を受けた者が既に出願した発明を実施しているか、又は2年に実施予定の特許出願
※2 出願人がその発明について外国出願・国際出願をしている特許出願
※3
・開業後10年以内の個人事業主
・常時使用する従業員数20人(商業・サービス業は5人)以下で設立後10年を経過しておらず、かつ、他の法人に支配されていない法人
・資本金・出資総額が3億円以下で設立後10年を経過しておらず、かつ、他の法人に支配されていない法人
スーパー早期審査とは、以下のⅰⅱの両方に該当する場合に申請できます。
早期審査に関する事情説明書を提出し、その事情説明書に「スーパー早期審査を希望する」ことを明記して申請します。
スーパー早期審査の場合、原則として、早期審査に関する事情説明書の受理日から1か月以内に一次審査の結果が通知されます。
⑶ ③特許査定について
審査の結果、特許の要件を満たす場合には、特許査定がなされます。
審査の結果、拒絶理由(特許が認めれない理由)がある場合は、拒絶理由通知がなされ、意見書等を提出して拒絶理由が解消されれば、特許査定となりますが、拒絶理由が解消されなければ、拒絶査定となります。
⑷ ④特許料の納付について
特許査定がなされた場合、特許料を納付しなければなりません。
<特許料>
第1年から第3年まで 毎年 2100円 +(請求項の数× 200円)
第4年から第6年まで 毎年 6400円 +(請求項の数× 500円)
第7年から第9年まで 毎年1万9300円 +(請求項の数×1500円)
第10年から第25年まで 毎年5万5400円 +(請求項の数×4300円)
⑸ ⑤設定登録について
特許料が納付されると、特許庁に登録され、特許公報に載ります。
特許庁への登録により、特許権という発明に対する独占的利用権が与えられます。
当事務所には、業務提携先の特許事務所がございますので、特許出願に興味を持たれた方は、ぜひともご連絡下さい。
以上
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