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弁護士コラム
Column
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公開日:2020.10.2
企業法務予防法務・戦略法務・臨床法務
弁護士の伊藤崇です。
企業法務の分類として、「予防法務」 「戦略法務」 「臨床法務」という3つの分類の仕方があります。
「予防法務」とは、将来の法律問題や紛争を回避したりリスクを低減するために事前に法的な策を講ずること、
「戦略法務」とは、予防法務を発展させて法的知識を経営戦略等に積極的に活かすこと、
「臨床法務」とは、裁判などの法的紛争が現実に生じた場合に対処すること、
とされています。
「予防法務」の典型例は、取引当事者間で交わされる契約書の作成やリーガルチェックに際して、将来依頼者に生じる可能性のある法律問題や法的紛争を予測して、そのリスクを回避・低減するための契約条項を作り込んでいくことです。
また、紛争になりそうな芽が生じている際に、それ以上、その芽が成長しないように対応策を立案し、その後の推移を監視していくことも予防法務の1つです。
ただ、弁護士のイメージはまだまだ「臨床法務」のイメージが強いように思います。
「紛争が起きてから相談をすればよい。裁判になってから相談・依頼をする、弁護士とはそういったものだ」そのようなお考えをお持ちの方々がまだまだおられるように思います。
紛争になるまで何の相談もなかった事案の場合、特に契約書すら作成されていない場合や契約書は作成されていても全く見当違いの契約書が使われている場合(実際に散見されます)、契約書上の手当が不十分な場合には、長期にわたる裁判に巻き込まれていくことになります。
裁判の当事者になると、敗訴リスクそのものに直面するだけでなく、長期間の裁判の当事者になりますので、人的・時間的に多大なコストが発生することにもなるのです。
もちろん「予防法務」を尽くしても、法的紛争を完全に避けることはできず、一定数、法的紛争に発展してしまう場合もあります。
ただ、こうした場合であっても勝訴可能性を高め、あるいは、敗訴事案であっても賠償額のコントロールがつきやすくなる、裁判自体が早期に終結を迎える、などの利点があるわけで、予防法務なくして臨床法務に突入せざるを得ないケースよりも遥かに紛争のその後の見通しがつきやすくなります。
ただ、「予防法務」を徹底してしまうとリスク回避一辺倒になってしまうという傾向があります。確かにリスク回避にはなるでしょうが、不利な契約であるからといって契約締結を見送ってしまうとせっかくの取引機会を失うことになり、企業の成長の機会を失ってしまうことになります。
殊に中小企業やスタートアップ企業においては契約締結交渉において契約条件を自社に有利に変更することは難しいことも多く、時としてリスクをとるという冒険的選択が必要になる場面は数多くあるように思います。
こうした局面においては、「戦略法務」の視点を持つことが重要です。企業法務に携わる弁護士として、予防法務で得た知見を活かし、リスクの洗い出し、リスクの軽減策や回避策の立案をして、最終的には企業経営者の冒険的経営判断の背中を押して差し上げること、反対にリスクがあまりにも大きすぎる場合には企業経営者に待ったをかけること、こうしたことが企業法務に携わる弁護士の重要な役割であると思うのです。
そして、実際の法的紛争に対処する「臨床法務」。
お医者様から、「医者の腕はどれだけの症例数を担当したかによって決まる」というお話を伺ったことがあります。弁護士もこれに近いものがあります。
どれだけ多くの企業間紛争案件、BtoCの紛争案件、人事労務案件などの紛争案件を解決処理してきたか、それによって弁護士の力量は大きく左右されます。
また、ただ単に担当数が多いというだけでは不十分で、真剣勝負の局面においてどれだけ勝ちを拾ってきたか、負けを回避してきたか、その成果や成果に至るまでのプロセスも重要です。
「予防法務」においても、そもそもリスクに気付かなければリスク回避策を立案することはできませんが、リスクに気付けるか否かは「臨床法務」の経験に左右されます。
「予防法務」 「戦略法務」 「臨床法務」は相互に関連しており、これら3つに関する知識経験を活かして顧問先企業とその経営者を支えるのが顧問弁護士の役割であると思います。
今後もお声がけをくださった企業の方々のために日々研鑽を積んで参ります。
以上
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