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公開日:2022.3.31
企業法務特許権の消尽について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は、「特許権の消尽」について取り上げます。
1.特許権の消尽とは
(1) 概要
特許権の消尽とは、日本国内において、特許権者又は特許権者から許諾を受けた者(弁護士コラム「特許ライセンス契約」で説明したライセンシー)が、特許発明が使われている製品(特許製品)を販売した場合に、その販売された製品をさらに販売する行為については、特許権が消尽し、特許権の効力が及ばなくなるという考え方のことです。
例えば、A社がエアコンの技術に関する特許発明について特許権を持っている場合に、その技術を使用したエアコンを生産し、B社に販売したとします。
その後、B社がそのエアコンをC社に販売したとしても、B社のエアコンの販売行為については特許権の効力が及ばなくなり、A社は、特許権侵害を主張することはできないのです。
(2) 消尽の根拠
(1)の例で言いますと、本来であれば、A社は、B社に対し、エアコンの販売について特許権侵害を主張することができるはずです。
しかし、A社の特許権侵害の主張を認めてしまうと、以下の2つの問題点が生じます。
そこで、①市場における特許製品の流通の確保、②特許権者に二重の利益を与えることを防止するという理由から、法律には規定はありませんが、権利消尽という考えが裁判例で認められるようになりました。
2.特許権の消尽の例外
(1) 特許製品が修理、加工された場合
では、A社が販売したエアコンを、B社が一般消費者に販売した後、一般消費者から故障したエアコンを買い取って、修理・加工して、C社に販売した場合、A社は、特許権侵害を主張できないのでしょうか。
これについては、特許権者が日本国内で販売した特許製品について修理・加工がなされ、それによって当該特許製品と同一性を欠く製品が新たに製造されたと認められるときは、特許権は消尽せず、特許権の効力は及ぶと考えられています。
そして、当該特許製品と同一性を欠く製品かどうかについては、
といった要素から総合的に判断されます。
そのため、B社が買い取ったエアコンを修理・加工した結果、A社のエアコンと同一性を欠く製品になっていれば、特許権は消尽せず、A社は、B社に特許権侵害を主張することができます。
これに対し、A社のエアコンと同一性を欠く製品になっていなければ、特許権は消尽し、A社は、B社に特許権侵害を主張することができません。
(2) 国際消尽
上記1(1)の例では、日本国内での販売を前提としていました。
では、A社、B社が海外企業で、国内企業であるC社がエアコンを輸入し、C社が輸入したエアコンをD社に販売した場合、A社は、特許権侵害を主張できないのでしょうか。
これについては、特許製品の販売が外国である場合に、特許権が消尽するか(国際消尽)という問題として考えられていますが、A社の特許権は消尽しないと考えられています。
ただし、国際消尽が一切認められないとすると、国際的な商品の流通が阻害されてしまうため、裁判例では、以下の場合には、A社は特許権侵害を主張できないと考えられています。
そのため、A社とB社との間でエアコンの販売先や使用地域として日本を除外するという合意があり、その合意がエアコンに明示されている場合には、A社は、C社に特許権侵害を主張することができません。
特許権を持っていたとしても、特許権侵害が主張できるかどうかについては状況によって異なりますので、詳しくは弁護士までお尋ねください。
以上
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