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公開日:2022.4.28
企業法務知的財産権の概要について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は、「知的財産権の概要」について取り上げます。
1.知的財産とは
知的財産とは
① 人間の知的創造活動によって生み出されたもの(発明や著作物など)
② 事業活動に用いられる商品やサービスの表示(商標や商号など)、事業活動に有用な技術上又は営業上の情報(営業秘密など)
のことです。
知的財産の特徴は、「財産的価値を有する情報」であるために、誰でも簡単にまねをすることができ、多くの人が同時に情報を利用する点にあります。
そのため、何の対策もしていないと自社の「財産的価値を有する情報」が失われてしまう可能性があります。また、自社の「財産的価値を有する情報」を戦略的に活用するためにも、知的財産に関する理解は不可欠です(※)。
※ 知的財産の特徴、知的財産戦略の重要性については、弁護士コラム「企業における知的財産戦略」をご参照ください。
2.知的財産の種類
(1) 人間の知的創造活動によって生み出されたもの
人間の知的創造活動によって生み出されたものとして
知的財産の種類 |
内容 |
保護される法律 |
発明 |
高度な技術のアイデア |
特許法 |
考案(小発明) |
物品の形状・構造・組み合わせに関する技術のアイデア |
実用新案法 |
意匠 |
物品のデザイン |
意匠法 |
著作物 |
思想又は感情の創作的な表現 |
著作権法 |
植物の品種 |
植物の新品種 |
種苗法 |
半導体集積回路の回路配置 |
半導体チップレイアウト(回路) |
半導体集積回路の回路配置に関する法律 |
商品形態 |
商品の形状 |
不正競争法防止法 |
が挙げられます。
(2) 事業活動に用いられる商品やサービスの表示
事業活動に用いられる商品やサービスの表示として
知的財産の種類 |
内容 |
保護される法律 |
商標 |
商品、サービスに使用するマーク |
商標法 |
商号 |
事業の主体を表す名称 |
商法・会社法 |
商品等表示 |
商品又は営業を表示するもの |
不正競争防止法 |
が挙げられます。
(3) 事業活動に有用な技術上又は営業上の情報
事業活動に有用な技術上又は営業上の情報として
知的財産の種類 |
内容 |
保護される法律 |
営業秘密 |
秘密として管理されている有用な技術上又は営業上の情報(ノウハウ、営業マニュアル、顧客リスト等) |
不正競争防止法 |
が挙げられます。
3.知的財産権とは
上記2の各種知的財産を保護するための権利のことを知的財産権といいます。
知的財産権という1つの権利があるのではなく、以下の権利を総称して知的財産権と呼んでいます。
知的財産権の種類 |
保護の対象 |
保護期間 |
特許権 |
発明 |
出願から20年 |
実用新案権 |
考案(小発明) |
出願から10年 |
意匠権 |
意匠 |
登録から20年 |
著作権 |
著作物 |
著作者の死後70年法人著作物・映画の著作物は公表から70年 |
育成者権 |
植物の品種 |
登録から25年(果樹等の永年性植物は30年) |
回路配置利用権 |
半導体集積回路の回路配置 |
登録から10年 |
不正競争防止法上の利益 |
商品形態 |
販売から3年 |
商標権 |
商標 |
登録から10年(更新可能) |
商号 |
事業の主体を表す名称 |
商号登記がある限り |
不正競争防止法上の利益 |
商品等表示 |
制限なし |
不正競争防止法上の利益 |
営業秘密 |
制限なし |
4.知的財産権の種類
知的財産権といっても、その種類によって権利の内容は様々ですが、権利の強さに着目した場合、知的財産権は以下の2つに分けることができます。
(1) 絶対的な独占権
絶対的な独占権とは、客観的内容を同じくするものに対して他者を排除して利用できる権利のことです。
特許権、実用新案権、意匠権、商標権、育成者権が絶対的な独占権に該当します。
例えば、偶然、同じ発明をしたとしても、客観的内容が同じであれば、特許権侵害となります。
(2) 相対的な独占権
相対的な独占権とは、他人が独自に創作したものにまでは効力が及ばない権利のことです。
著作権、回路配置利用権、商号、不正競争防止法上の利益(商品形態、商品等表示、営業秘密)が相対的な独占権に該当します。
例えば、偶然、同じ著作物を創作した場合には、著作権侵害にはなりません。
知的財産権を取得するために、登録・登記が必要なものとそれらが不要なものに分かれます。
(1) 登録・登記が必要なもの
① 特許庁での登録が必要なもの
発明、考案(小発明)、意匠、商標は、権利を取得するために特許庁での登録が必要です。
発明、考案(小発明)、意匠、商標が登録されているかどうかは、特許情報プラットフォームで検索できます。
② 農林水産省での登録が必要なもの
植物の品種は、権利を取得するために農林水産省での登録が必要です。
植物の品種が登録されているかどうかは、農林水産省品種登録ホームページ内の品種登録データ検索で検索できます。
なお、令和4年4月1日以降は新しい農林水産省品種登録ホームページが開設されています。
③ 経済産業省での登録が必要なもの
半導体集積回路の回路配置は、権利を取得するために経済産業省での登録が必要です。
ただし、審査は、経済産業大臣の委託を受けた一般財団法人ソフトウェア情報センター(SOFTIC)が行っています。
半導体集積回路の回路配置が登録されているかどうかは、SOFTICのホームページで、設定登録された半導体集積回路の回路配置が毎月公示されていますので、確認することができます。
④ 法務局での登記が必要なもの
商号は、法務局での登記が必要です。
(2) 登録・登記が不要なもの
著作物、商品等表示、営業秘密は、登録・登記が不要です。
ただし、著作物については、文化庁(プログラムの著作物については、文化庁の指定登録機関であるSOFTIC)に登録をすることもできます。
知的財産権は、対象となっている知的財産に応じて、権利の内容、種類・保護期間・取得のための手続・所管する省庁が違っています。
知的財産が問題になったときは、弁護士へご相談ください。
以上
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