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公開日:2022.7.8
企業法務改正公益通報者保護法について
弁護士法人PROの伊藤崇です。
2022年6月1日、改正公益通報者保護法が施行されました。
施行後は、企業が通報を受け付ける体制を整備しなければ、是正措置や罰則などを適用される可能性もあります。
法改正はどのような企業にとっても他人事ではありません。
今回は改正公益通報者保護法の概要、企業において対応すべき事項、対応しなかった場合のペナルティなどをお伝えします。
企業経営者やご担当者の方はぜひ参考にしてみてください。
1.公益通報者保護法の改正点概要
公益通報者保護法とは、企業など事業者の不祥事を通報した人を守るための法律です。
公益通報者保護法は、通報者が事業者(雇用主)から解雇などの不利益な取扱いを受けず、安心して通報ができる仕組みです。
事業者側にしてみても、従業員からの通報内容に適切に対応すればリスク管理ができるメリットがあります。
公益通報者保護法は改正されて、2022年6月1日にすでに施行されています。
以下で改正点の概要をお伝えします。
1-1.事業者の体制整備の義務化
従業員が300人を超える企業では、公益通報を受け付ける体制を整備しなければなりません。
また通報を受けたら調査を行う必要があり、是正措置を実施しなければなりません。
専門の担当者を置く義務も課されます。
1-2.内部通報担当者に守秘義務を課す
公益通報を受ける担当者には守秘義務が課されます。
義務に違反して情報を漏洩すると30万円以下の罰則が適用されます。
1-3.公益通報者として保護される対象の拡大
従来に比べると「公益通報者」として保護される人の範囲が拡大されます。
これまで保護されてこなかった「1年以内に退職した人」や「1年以内に終了した派遣労働者」「役員」などが追加されました。
1-4.保護される通報対象情報の拡大
保護される通報対象情報も拡大されます。
これまでは犯罪に関する事実のみでしたが、今後は「過料」の制裁がかかわる事実についても保護の対象に追加されました。
※過料:おもに行政上の義務強制や制裁のために違反者に対して科せられる金銭罰。
1-5.保護内容の拡大
これまでの規定に加え、通報した人に対する損害賠償責任が免除されるようになりました。
また行政機関や報道機関などへ通報した場合の通報者の解雇が無効とされるケースが増えました。
2.改正公益通報者保護法の施行時期(開始時期)
改正公益通報者保護法が施行されたのは、2022年6月1日です。
すでに施行されているので、未対応の企業はすぐにでも対応しなければなりません。
3.改正公益通報者保護法の対象となる企業は?
改正法が適用されるのは基本的にすべての企業です。
ただし公益通報の体制整備や担当者の規定が義務化されるのは「従業員が300人を超える事業者」に限られます。
該当する場合、体制を整備して担当者を置かないと是正措置が適用されたり違反企業として公表されたりする可能性もあるので、即時に対応すべきです。
なお従業員が300人以下の企業でも「努力義務」は課されます。今後は本格的に義務化される可能性もあるので、今のうちから通報窓口を設置して法改正に対応しておくのが良いでしょう。
4.改正公益通報者保護法のため、企業が実施すべき事項
改正公益通報者保護法に対応するため、対象企業は以下のように対応しましょう。
4-1.内部通報窓口の設置と担当者の養成、配置
まずは内部通報窓口を設置しなければなりません。
これからは対象企業で内部通報窓口を用意しないと違法となってしまいます。
また内部通報を受け付ける担当者も養成し、配置しなければなりません。
早急に適切な人材を選定し、担当者の教育を行って配置しましょう。
4-2.通報対応に関する教育研修
内部通報を受けた際には適切に対応しなければなりません。
特に担当者には「守秘義務」が課されます。
義務に違反すると30万円以下の罰金という刑事罰が適用されるので、軽く考えてはなりません。
また通報内容に応じて調査を行い、必要に応じて是正措置をとるべき義務も課されます。
担当者やその他の人員でこれらの要請に対応できるように、教育研修を実施しましょう。
4-3.利益相反の排除
内部通報を受け付ける際、担当者との利益が相反すると適切な対応は期待できません。
通報内容に関係する人を排除できる体制を整えましょう。
たとえば通報に対応する過程で担当者が関係者であることが判明した場合、その人を担当から外すべきとする規定などを定めておく必要があります。
4-4.社内研修の実施
内部通報窓口を設置しても、利用されなければ意味がありません。
まずは現在の従業員向けに社員研修を実施するところから始めるのが良いでしょう。
また、今回の法改正では、最近退職した従業員や役員へも保護の対象が拡大されています。
これらの対象者に対し、内部通報をしても権利が守られることを周知しましょう。
5.改正公益通報者保護法に対応しなかった場合のペナルティ
5-1.行政指導や行政罰
内部通報体制の整備や担当者の配置を義務付けられる事業者が義務を怠って制度を整備しなかったときには、行政指導や勧告を受ける可能性があります。
勧告に従わない企業については事業者名を公表される可能性が高く、社会的な信用を失うことになりかねません。
また行政が企業へ内部通報制度の整備状況についての報告を求めたとき、企業側が対応しなければ20万円以下の過料の対象になります。
5-2.刑事罰
担当者には刑事罰つきで守秘義務が課されます。
違反して通報者に関する情報を漏洩すると30万円以下の罰金が科されるので、くれぐれも情報を丁寧に取り扱うよう、注意しましょう。
6.改正公益通報者保護法への対応は弁護士へお任せください
改正公益通報者保護法の施行後は、対象企業では内部通報窓口を設置しなければ違法状態となってしまいます。
弁護士が内部通報窓口となったり、社内規定を整備したりすることも可能ですし、社員向けのセミナー開催もお受けできます。
体制整備に間に合っていない企業や、今の整備方法が適切か判断しかねる企業の方などは、お気軽に弁護士までご相談ください。
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