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公開日:2022.7.15
人事・労務固定残業代の活用方法について
弁護士法人PROの弁護士の柏木太郎です。
従業員の残業に対して定額の割増賃金を支給する仕組みは「固定残業代」と呼ばれます。
固定残業代を採用する企業は多いですが、残業代の算定を巡って労働者側から残業代請求訴訟を提起されるケースが非常に多いのも事実です。
このコラムでは、固定残業代の概要や法令を遵守するためのポイントを解説します。
固定残業代を巡って自社の労働者とトラブルになった場合や社内の体制に問題がないか確認したい場合は弊所までお気軽にご相談ください。
1.固定残業代制は残業代の上限を設定するものではない
固定残業代制度に対する誤った認識としてよく見られるのが、“どれだけ残業したとしても固定残業代さえ払っていれば問題ない”というものです。
しかし、この認識は大きな間違いです。
固定残業代制度を採用していたとしても、残業時間が長時間にわたり労働基準法上支払うべき残業代(割増賃金)が固定残業代の金額を上回る場合、その差額を支払わなければ違法となってしまいます。
本コラムで最もお伝えしたいことは上記の大前提です。
具体例
結局、残業時間の集計と固定残業代を超過した残業代の支払いは必須です。
そのため、固定残業代の採用により経費や残業時間集計の手間暇が削減されるとも限りません。
むしろ、残業があった場合のみ、労働基準法上の残業代を支払うとする方が経費削減につながるかもしれません。
さらに、残業代を支払いたくないという意識から無用な残業を抑制することで労働者とのトラブル予防も期待できます。
2.固定残業代を巡る裁判で負けてしまうと・・・
残業代を巡る裁判では、企業側は固定残業代として時間外手当を支払っているつもりであったが裁判所が時間外手当として認めない、というケースもあります。
特に、残業代として「営業手当」や「業務手当には時間外手当が含まれる」と労働契約書や就業規則に記載し、残業手当であることを明示していない企業は要注意です。
こうなってしまうと、企業側が「固定残業代」と主張していた部分も基礎時間単価(残業代の算定の基礎となる賃金)に加えられてしまいます。
さらに、残業代は全く支払っていなかったことになり、結果として支払うべき残業代は膨れ上がってしまいます。
3.固定残業代を適法に運用するための要件
固定残業代が適法となるためには以下4つの要件を満たさなければなりません。
Ⅰをクリアするために、労働契約書に「残業手当」や「固定残業代」というように一見して残業代と分かるよう明記するのが望ましいです。
「営業手当」と記載されている労働契約書や就業規則も多いですが、「営業手当」ですと業績に対する手当とも読めるため、Ⅰをクリアするためのハードルが上がってしまいます。
ひと昔前、固定残業代を基本給に組み込み基本給を高額に見せる手法が流行しました。
しかし、現在では、平成29年の職業安定法改正により固定残業代制も求人の際に明示することが義務付けられています。
4.固定残業代を有効なものとするためには
固定残業代が適法となる要件は上記のとおりです。
次に、固定残業代を有効に運用するための実務的なポイントをご紹介します。
最も重視すべき点は、労働契約書・労働条件通知書の書き方です。
就業規則に詳細な規定があっても、労働契約書・労働条件通知書に明示していなければ裁判で不利になってしまいます。
上記4つの要件からすると、最低限、労働契約書や労働条件通知書に記載すべき事項は以下4点です。
また、従業員に対し入社時にきちんと労働条件の説明をしておくと、裁判を有利に進められます。
説明した際の資料や議事録を作成・保管しておき、証拠として示せる準備を整えておくと良いです。
5.まとめ
今回は、固定残業代についてご説明しました。
固定残業代制度を用いている企業は多く存在します。
固定残業代を巡ってトラブルが生じたり、就業規則や労働契約の見直しを検討している場合は弊所へご相談ください。
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