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公開日:2022.8.10
人事・労務普通解雇を適法に行うためには
弁護士法人PROの弁護士の柏木太郎です。
“問題のある従業員をクビにしたい”
経営者であれば誰しもが一度は抱く悩みです。
簡単にクビにできれば苦労はないのですが、日本の労働法は労働者側にとても有利にできています(逆にいえば経営者には不利)。
きちんと手順をふまなければ紛争に発展してしまいますし、最悪の場合は高額の金銭を支払うことになります。
このコラムでは、従業員を適法に解雇するためのポイントを解説します。
解雇を巡って自社の労働者とトラブルになった場合や、解雇したい従業員がいるが解雇の方法でお悩みの場合は弊所までお気軽にご相談ください。
1.そもそも解雇とは?
解雇とは、従業員との雇用契約を経営者が一方的に解除することです。
能力不足や協調性不足などを理由とする普通解雇、職務規律違反や犯罪行為を理由とする懲戒解雇、会社側の事情(ex経営難)を理由とする整理解雇と、解雇にもいくつか種類があります。(懲戒解雇や整理解雇については、独自の問題点が多いので別の記事で詳しく触れます)。
解雇されると、従業員は生活の基礎となる給料を得られなくなります。
従業員にとり解雇は大きな不利益となるため、労働契約法や労働基準法で解雇する際の厳格なルールが定められています。
2.“業務委託”なら簡単に解雇できる?
解雇の厳格なルールが適用され、簡単に解雇できない対象は「労働者」(労基法9条)です。
経営者側の指揮監督の下に労働し、報酬が労働の対価として支払われていれば、「労働者」に該当します。
“雇用”や“業務委託”といった契約の名称ではなく、実際にどのような働き方をしているのかで決まります。
業務委託だから「労働者」ではない、とは言い切れません。
業務委託であっても、経営者の指揮命令に従った働き方をしているといった事情があるならば「労働者」ですから、労働法が適用され、簡単には解雇できません。
3.解雇を巡る裁判で負けてしまうと・・・
解雇した従業員が解雇に不満を持っている場合、従業員が会社に対しバックペイ(解雇されなかったならば支給されていたであろう賃金)を請求するケースが多いです。バックペイの金額には基本給や諸手当が含まれます。
訴訟になった場合は判決まで1年程度かかり、判決が出る頃にはバックペイの金額が高額になっていますから、裁判で負けた場合には多額の支出を強いられることとなります。
また、前述のとおり日本の労働法は従業員に有利につくられていますから、きちんとルールを理解したうえで解雇しないと、裁判で不利になってしまいます。
4.普通解雇を適法とするための手続
解雇の30日前に解雇を通知しなければなりません(労働基準法20条1項)。
この30日の解雇予告期間は、1日分の平均賃金を支払った分だけ短縮できます(同条2項)。
業務の引継ぎ等の必要がないならば、賃金を支払い、解雇予告期間を短縮して早期に解雇するのが合理的です。
この解雇予告又は賃金の支払いを行わずに即時に解雇した場合、原則として6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が課されます(労働基準法119条1号)。
上記の手続を行ったうえで、下記の2つの要件をクリアできなければ、解雇は解雇権の濫用として無効になります(労働契約法16条)。
①は、就業規則に定められている解雇事由に該当することが求められます。
②は、従業員の勤務態度や能力からすると解雇もやむを得ない場合に認められます。
ここでは、労働者に有利な事情が考慮されます。反省の態度、過去の勤務態度や貢献度、他の労働者に対する措置との均衡などから、解雇が労働者にとり酷であると判断されると、解雇は無効となってしまいます。
6.普通解雇を適法に行うためのポイント
普通解雇においては、能力不足や協調性不足が解雇の理由となることが多いです。
この場合、経営者側が労働者に対しどれだけの注意・指導や教育・研修を行ってきたかが重要です。
単に労働者の能力不足や協調性不足が認められるだけでなく、改善の見込みがないと認められるだけの注意や指導を積み重ねる必要があります。
また、能力不足を理由とするのであれば、他業務を割り当て、能力の活用を試みることも求められます。
このように、普通解雇を適法に行うためには、指導・教育や他業務の割当てなど、経営者側が一定の努力をしたにも関わらず、従業員に改善の見込がないことが求められます。
そして、裁判では証拠が重要ですから、この努力を書面や映像などの証拠として残しておく必要があります。
ここまで見てきたとおり、普通解雇が適法となるハードルは高いです。場合によっては、解雇ではなく、退職勧奨により自主的に退職してもらう方法も検討してみましょう。
今回は、普通解雇のルールや適法に普通解雇を行うポイントについてご紹介しました。
“問題のある従業員に辞めてもらいたいがどのようにしたらよいか分からない“という悩みを抱えている経営者は多いです。
普通解雇を巡ってトラブルが生じたり、従業員を解雇したいとお考えの際は弊所へご相談ください。
以上
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