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公開日:2022.9.16
人事・労務懲戒解雇を適法に行うためには
弁護士法人PROの弁護士の柏木太郎です。
前回のコラムでは、“問題のある従業員をクビにしたい”という経営者の悩みを解決すべく、解雇の一般的な法令の仕組みや普通解雇を適法に行うための手法をご紹介しました。
このコラムでは、解雇の一種である「懲戒解雇」を適法に行うためのポイントをご紹介します。
懲戒解雇は最も重い懲戒処分ですから、きちんと手順を踏んで行わないと、裁判で懲戒解雇は無効と判断されてしまいます。
懲戒解雇が無効となると、解雇した日から判決確定日までの賃金を支払う必要が生じ、企業にとって大きな損失を生んでしまいます。
懲解解雇を巡って自社の労働者とトラブルになった場合や解雇したい従業員がいるが解雇の方法でお悩みの場合は弊所までお気軽にご相談ください。
1.そもそも懲戒とは?
懲戒とは、従業員が犯した企業秩序違反に対する制裁罰です。“罰”である以上、就業規則などで懲戒事由と手続を定めておく必要があります。
懲戒の中にもいくつか種類があり、戒告→けん責→減給→出勤停止→降格→諭旨解雇→懲戒解雇の順に重い懲戒となります。
2.懲戒を適法に行うためのポイント
懲戒を適法に行うためには、以下4つのポイントを押さえる必要があります。
①は、懲戒が“罰”である以上、あらかじめ懲戒のルールを作っておき、それを従業員に周知しておかなければならないということです。
何らルールが無いのに、後出しで“罰”を与えることはできません。
②は、従業員が犯した非違行為をきちんと証明できるようにしておくということです。
懲戒に限らず、裁判では証拠の有無が勝敗のキーとなります。
従業員に対する所持品検査や不正調査のためのデジタル情報の復元(デジタルフォレンジック)を行う場合は、その旨就業規則に定めて社内制度として確立しておく必要があるので注意が必要です。
③は、適正な手続を踏んで従業員にも一定の配慮をしなければならないということです。
最低限の手続として、その従業員に対して弁明の機会を与えることは必須です。
④は、従業員が犯した非違行為に対して過度に重い懲戒を行ってしまうと、懲戒が無効と判断されるリスクがあるということです。
例えば、一度だけ出勤時間に5分遅刻した従業員を懲戒解雇とすることは、懲戒事由(5分の遅刻1回)と懲戒(懲戒解雇)のバランスがとれておらず、懲戒解雇は無効となってしまうでしょう。
3.懲戒解雇の対象となる懲戒事由の例
上記の④で、懲戒事由と懲戒のバランスについてご説明しました。懲戒解雇は懲戒の中で最も重い処分ですから、必然的に、懲戒の理由である懲戒事由も重大なものに限られます。
懲戒解雇に値する懲戒事由の具体例は以下のとおりです。
ここで挙げた例のような重大な非違行為に対してのみ懲戒解雇が可能です。
軽い非違行為に対しては戒告やけん責などの軽い懲戒を行うことになります。
軽い非違行為であっても、積み重なればⅠのように懲戒解雇に値する事由となります。
4.普通解雇と懲戒解雇の違い
少々ややこしいですが、普通解雇と懲戒解雇は根拠や有効要件が異なります。
普通解雇は民法627条1項に基づく解雇であり、懲戒解雇は企業秩序違反に対する制裁罰として使用者の懲戒権に基づく解雇です。
裁判では、従業員側から、“懲戒解雇されたが懲戒事由が就業規則に定められていないから懲戒解雇は無効”などといった反論がされることが想定されます。
これに備え、解雇する場合は普通解雇と懲戒解雇の両者の意思表示をしておく方法を推奨します。
5.被害弁償を給与や退職金から天引きできるか?
使用者側としては、従業員の非違行為により損害が発生していれば従業員に対して被害弁償を請求したいところです。
弁償金を回収するためには、当該従業員の給与や退職金から弁償金分を天引き(相殺)するのが簡便です。
しかし、この方法は後にトラブルに発展する可能性が非常に高いです。
労働基準法24条で賃金の全額払いが義務付けられており、仮に従業員が天引きに同意したとしてもその同意は真意ではないとして有効性が否定されるリスクがあります。
どうしても天引きしたい場合、紛争予防の観点から、従業員との間で強制執行認諾文言付の公正証書の作成も選択肢になってきます。
なお、相殺ではなく単に退職金を減額することは、退職金の功労報償的性格に鑑み、あらかじめ就業規則等で定めておければ有効に行えることが多いです。
6.まとめ
今回は、懲戒解雇を適法に行うポイントについてご紹介しました。
“問題のある従業員に辞めてもらいたいがどのようにしたらよいか分からない“という悩みを抱えている経営者は多いです。
懲戒解雇を巡ってトラブルが生じたり、従業員を懲戒解雇したいとお考えの際は弊所へご相談ください。
以上
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