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弁護士コラム
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公開日:2022.9.30
企業法務【令和4年10月1日施行】プロバイダ責任制限法の改正について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は、令和4年10月1日から施行される「プロバイダ責任制限法の改正」について取り上げます。
1.はじめに
インターネット上で、自社の名誉を傷つけるような事実無根の書き込みなど、自社の権利を侵害する書き込みがなされたことはありませんか。
そのような書き込みを放置しておくと、自社の業務に悪影響を及ぼすため、速やかに書き込みの削除をする必要があります。
また、その書き込みによって自社の営業上の損害が発生した場合には、損害賠償請求をすることもできます。
しかし、インターネット上での書き込みは匿名で行われることが多いため、損害賠償請求をするためには、書き込みを行った投稿者を特定する必要があります。
この投稿者を特定するための手続(発信者情報開示手続)について定めているのが、プロバイダ責任制限法(※)です。
今回の改正の主なポイントは、以下のとおりです。
※ プロバイダ責任制限法とは、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」の略称です。
2.発信者情報開示のための新たな裁判手続の創設について
(1) 改正前の手続について
これまで、投稿者を特定するためには、
という2つの手順を踏まなければなりませんでした。
具体的には、
を行う必要がありました。
しかし、改正前の手続には、以下の問題点がありました。
(2) 改正後の手続について
そこで、上記問題点を解決するために、これまで2段階の裁判手続が必要だった発信者情報開示手続を1つの手続で行うことができる新しい裁判手続が創設されました。
具体的には、
という手続を1つの裁判手続の中で行うことができるようになります。
なお、これまで通り、改正後も、2段階の裁判手続を使って、発信者情報開示の手続を行うことも可能です。
※1 開示命令とは、サイト管理者や運営会社が保有する発信者情報の開示を命じるものです。
※2 提供命令とは、サイト管理者や運営会社が保有する通信記録に基づいて、プロバイダ会社の名称や住所の提供を命じるものです。
※3 消去禁止命令とは、提供命令によって判明したプロバイダ会社に対し、発信者情報の消去の禁止を命じるものです。
3.ログイン型サービスにおけるログイン時の情報開示の追加
(1) 改正前の手続について
プロバイダ責任制限法で開示を求めることができるのは、「権利侵害に関する発信者情報」です。
例えば、電子掲示板に権利侵害の書き込みがなされた場合、その書き込みの通信記録(IPアドレス等)は、「権利侵害に関する発信者情報」に該当します。
しかし、Twitter等のサービス利用時にログインを必要とするSNSの場合、ログイン型サービスの提供事業者は、ログイン時の通信記録(IPアドレス等)は保有しているものの、ログイン後の個別の投稿については通信記録(IPアドレス等)を保有していないことがありました。
ログイン時の通信記録(IPアドレス等)は、権利侵害の投稿そのものの通信記録(IPアドレス等)ではないため、「権利侵害に関する発信者情報」とはいえず、裁判所によって、ログイン時の通信記録(IPアドレス等)を開示するかどうかは判断が分かれていました。
(2) 改正後の手続について
そこで、ログイン時の通信記録(IPアドレス等)も開示の対象とするため、ログイン時の通信記録(IPアドレス等)を「特定発信者情報」と位置づけて、「特定発信者情報」に関する開示請求を行うことができるようになりました。
ただし、「特定発信者情報」の開示を求めるためには、サイト管理者や運営会社が「権利侵害に関する発信者情報」を保有していないなどの条件が必要となります。
4.おわりに
改正法によって、権利を侵害する書き込みの投稿者を特定することがこれまでより容易になりました。
もし、自社の権利を侵害する書き込みがありましたら、弁護士までご相談ください。
以上
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