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公開日:2022.10.14
人事・労務整理解雇を適法に行うためには
弁護士法人PROの弁護士の柏木太郎です。
普通解雇のコラムでは、解雇の一般的な法令の仕組みや普通解雇を適法に行うための手法を、
懲戒解雇のコラムでは解雇の一種である懲戒解雇を適法に行うための手法をご紹介しました。
このコラムでは、解雇シリーズの最後として、「整理解雇」を適法に行うためのポイントをご紹介します。整理解雇は会社側の事情による解雇ですから、会社側には解雇回避努力や労働者に対する配慮が求められます。
きちんと手順を踏んで行わないと、裁判で整理解雇は無効と判断されてしまいます。整理解雇が無効となると、解雇した日から判決確定日までの賃金を支払う必要が生じ、企業にとって大きな損失を生んでしまいます。
整理解雇を巡って自社の労働者とトラブルになった場合や整理解雇の方法でお悩みの場合は弊所までお気軽にご相談ください。
1.整理解雇とは?
整理解雇とは、会社が、経営上必要となる人員削減のために行う解雇を指します。
普通解雇や懲戒解雇は労働者の能力不足や企業秩序違反といった労働者側の事情を理由とする解雇ですが、整理解雇は会社側の(経営上の)事情を理由とする解雇である点が特徴です。
労働者に非が無いにも関わらず会社都合で行う解雇ですから、適法となる要件も厳格です。
2.整理解雇を適法に行うための要素
整理解雇を適法に行うためには、以下4つの要素をクリアしなければなりません。
①人員削減の必要性
①は、経営状況の悪化、主要事業の斜陽化や不況など、人員削減もやむを得ないといえるだけの理由が求められます。
倒産の危機ほどの重大な理由に限定されるわけではありませんが、“数年赤字が続いている”程度の理由だと、①のクリアが難しくなってきます。
②解雇回避努力
②は、解雇に踏み切る前に雇用継続のための何らかの措置を施すことが求められます。
代表的な措置としては、希望退職者の募集、配転・転籍の実施や外注委託の削減が挙げられます。
他にも、例えば、役員報酬の減額、新規採用の停止、昇給停止、一時帰休などが考えられます。
“これをやっておけばOK”というものではなく、個別のケース毎に①の程度やその会社の規模・業種との兼ね合いで、どのような措置が求められるのか判断されます。
これら解雇回避のための努力を尽くしても余剰人員がいる場合、人員削減に踏み切らざるをえません。
まずは非正規労働者の雇止めを行い、次いで正社員の解雇に進むのが一般的な流れです。(※労働契約の更新が繰り返されている非正規労働者に対しては、雇止めの前に割増退職金を支払うことによる合意退職を働きかけるなど、雇止め回避措置を講じるのが望ましいです。)
整理解雇は最終手段であるとイメージし、現実的にとりうる解雇回避措置を講じておきましょう。
③解雇対象者の人選の合理性
③は、解雇する労働者の人選が恣意的なものではあってはならない、ということです。
解雇者の選定は客観的に合理的な基準の設定が求められます。
欠勤日数、遅刻回数、規律違反歴、勤続年数などを基準とすることが考えられます。
人事評価は、評価者の主観が加わっているため、人事評価を基準に設定したとしても直ちに③をクリアできるわけではないので注意しましょう。
人事評価を基準にする場合、評価のプロセスが分かる資料も必要となります。
④手続の妥当性
④は、労働者側との協議や説明など、適正な手続を踏むことが求められます。
①~③の具体的な内容を労働者に説明し、必要に応じて労働者と協議の場を設けます。なお、労働組合との労働協約において解雇における協議事項が定められている場合、組合や労働者との協議は必須です。トラブルに発展した場合に備え、説明・協議を行った場合は議事録の作成を推奨します。
3.実務上のポイント
従業員側からの批判や裁判になった場合に備え、上記①~④につき合理的な事情を証拠と共に示せるよう準備しておく必要があります。
整理解雇に限りませんが、裁判では証拠の有無が勝敗に大きく影響します。
①(人員削減の必要性)でいえば、会社の経営状況、運転資金として確保すべき金額、削減すべき人数など具体的な数字を用いて示せるようにしておきましょう。
ここでの数字は、公認会計士などの専門家が算出した数字であることが望ましいです。
②(解雇回避努力)においては、どの時点でどのような措置を講じたのかを時系列に沿って示せるよう、整理解雇が視野に入った時点でその都度記録化しておく必要があります。
③(人選の合理性)、④(手続の妥当性)も同様に、整理解雇を行う可能性が生まれた時点で、整理解雇から逆算して段取りを整え、その都度きちんと記録化しておくことが求められます。
4.まとめ
今回は、整理解雇を適法に行うポイントについてご紹介しました。
“経営上の理由から人員を削減したいが解雇のやり方が分からない“という悩みを抱えている経営者は多いです。
整理解雇を巡ってトラブルが生じたり、整理解雇により人員を削減したいとお考えの際は弊所へご相談ください。
以上
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