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公開日:2022.11.11
企業法務【M&A】仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いとは?契約書のチェックポイントを解説
弁護士法人PROの弁護士の柏木太郎です。
このコラムでは、M&Aの際の仲介業者とFA業者の違いや、仲介契約書・FA契約書(アドバイザリー契約書)のチェックポイントをご紹介します。
特に中小企業では、後継者不足の影響から生存戦略としてのM&Aが増加しています。
M&Aへ向け仲介業者やFA業者と契約を締結する企業も多いですが、違いを理解しておかないと、適正価格でのM&Aが実現できなかったり手続が遅延したりと、大きな損失を被るリスクがあります。
M&Aで仲介業者やFA業者との契約を検討している場合、ぜひ弊所へお気軽にご相談ください。
1.仲介とFAの違い
M&Aの仲介業者とFA業者は、M&Aを行いたい企業に対しマッチングや手続のサポートをしてくれるという点で共通します。
両者の違いはその業務内容にあります。
仲介:譲渡側・譲受側の双方と契約し、双方をサポートする
FA:どちらか一方と契約し、契約した一方のみをサポートする
2.それぞれのメリット・デメリット
【仲介】
仲介業者はM&Aの当事者双方と契約し双方の事業内容や方針を理解しているため、当事者間の意思疎通が図り易く、円滑・迅速な手続が実現しやすいです。
また、仲介業者に対する報酬は当事者双方が折半することが多いので、M&Aにかかる費用を安く抑えられます。特に譲渡側の規模が小さく自社のみでFA業者への報酬を賄えないケースでは、仲介が用いられる傾向があります。
他方、仲介業者は当事者双方と契約している以上、どちらかの味方というわけではありません。構造としては利益相反の立ち位置なので、一歩踏み込んだ助言や親身なサポートは期待できない点はデメリットといえます。
【FA】
FA業者は当事者の一方と契約するので、契約者の意向を踏まえ、契約者のためにM&Aを進めるのが業務ですから、仲介業者よりも一歩踏み込んだ助言・サポートが期待できます。
当事者が厳格な入札方法に拘ったり、利益の最大化を重視している場合には、より親身なサポートを受けられるFAが適しています。
デメリットは、FA業者への報酬を自社のみで支払うことになるため、費用が高額になる点です。
FAは、規模が大きなM&Aで利用されるのが一般的です。
3.仲介契約書、FA契約書のチェックポイント
Ⅰ 仲介とFAのどちらなのか明確にする
まず、締結しようとしている契約が仲介なのか、FAなのか認識する必要があります。
これを区別しないと、次のステップへ進めません。
仲介はM&Aの当事者双方との契約、FAはどちらか一方との契約です。
Ⅱ 報酬額は適正か
仲介・FAを問わず、成功報酬はレーマン方式(取引金額に一定の率を乗じる計算方法)がとられることが多いです。
問題は、算定のベースとなる“取引金額”を如何に決定するか、です。ベースの数字がいくらかで、報酬額は大きく増減します。
ベースの代表的な設定方法は、①譲渡額、②総資産額、③純資産額の3パターンです。
特に②は、負債もベースに含まれるため、M&Aの対象企業が多額の負債(ex借入金)を抱えていると、報酬額がハネ上がります。
業者によっては、ベースに契約当事者のみならずその子会社の資産も含むとする契約書を提案してくることもあります。
仲介・FA業者の“これが普通ですから”の言葉を鵜呑みにせず、実際に計算して妥当な報酬額なのか検討してみましょう。
Ⅲ テール条項
テール条項とは、M&Aが不成立のまま仲介・FA契約が終了した後、一定期間内にそのM&Aが成立した場合、当該仲介・FA業者が報酬を請求できる旨の規定です。
仲介・FA業者からすれば、きちんとサポートしたがM&Aが不成立となり契約が終了したものの、間もなくM&Aが成立したとなれば、報酬を請求したくもなるでしょう。そのため、テール条項自体はアンフェアとは言い切れません。
問題は、テール条項の期間です。
いくらサポートがあったとはいえ、契約終了後に長い時間が経過していれば、仲介・FAの影響なくM&Aが成立したといえます。
テール条項の期間は、1年程度が目安で、長くても2~3年以内が限度です。
Ⅳ 専任条項
契約している仲介・FA業者以外に同様の業務を依頼してはならないとする条項です。
専任条項が含まれていると、セカンド・オピニオンが欲しいと思っても他の業者へ依頼できません。
他の仲介・FA業者へ依頼したい場合は契約を中途解約することになりますが、その場合は前述のテール条項との兼ね合いに注意が必要です。
4.まとめ
今回は、M&Aの際の仲介とFAの違いや、仲介・FA契約書のチェックポイントをご紹介しました。今回ご紹介したチェックポイントはあくまで代表的な一部分です。他にも、損害賠償の範囲や秘密保持など、注意すべき点は多岐にわたります。
M&Aの全体的な流れは、2021年2月5日公開 弁護士コラム「中小企業のM&A①手続の概略」でもご紹介しています。
M&Aへ向け仲介・FA業者との契約を検討している方は、お気軽に弊所へご相談ください。
以上
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