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弁護士コラム
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公開日:2022.12.28
企業法務周知又は著名な商品等表示への規制(不正競争防止法)について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は「周知又は著名な商品等表示への規制(不正競争防止法)」について取り上げます。
1.不正競争防止法とは
不正競争防止法とは、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」法律です。
不正競争防止法では、不正競争行為として以下の10の類型を規定し、不正競争行為を行った者に対しては、差止めの請求や損害賠償の請求、信用回復の措置を求めることができ、不正競争行為の内容によっては刑事罰(※)も科されます。
※ 不正な目的を持って①の行為を行った場合、著名な商品等表示の信用・名声を利用して不正の利益を得る目的又は信用・名声を害する目的で②の行為を行った場合、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処せられ、場合によっては懲役刑と罰金刑が両方科される場合があります。また、会社の従業員や役員がこれらの行為を行った場合、会社にも3億円以下の罰金が科されることがあります。
<不正競争行為の類型>
①周知な商品等表示の混同惹起
②著名な商品等表示の冒用
③他人の商品形態を模倣した商品の提供
④営業秘密の侵害(弁護士コラム「営業秘密の保護(不正競争防止法)」を参照ください)
⑤限定提供データの不正取得等
⑥技術的制限手段の効果を妨げる装置等の提供
⑦ドメイン名の不正取得等
⑧商品・サービスの原産地、品質等の誤認惹起表示
⑨信用棄損行為
⑩代理人等の商標冒用
今回は、企業活動に影響が大きい「①周知な商品等表示の混同惹起」「②著名な商品等表示の冒用」に焦点を当ててみます。
2.商品等表示とは
商品等表示とは
を言います。
要するに、「商品の出所」や「営業の主体」を表示するものです。
例えば、商標で言えば、「アクエリアス」という登録商標(※1)は、コカ・コーラ社が製造している清涼飲料水の名称だということで、「商品の出所」を表示していると言えます。
※1
登録番号第5998982号
権利者:ザ コカ・コーラ カンパニー
また、商品の容器で言えば、サントリー社が製造する「黒烏龍茶」というペットボトル入りの烏龍茶がありますが、この商品のパッケージデザイン(※2)からサントリー社が製造する烏龍茶だということが分かり、「商品の出所」を表示していると言えます。
※2
3.周知な商品等表示の混同惹起とは
不正競争防止法では、「需要者の間に広く認識されている」「他人の商品等表示」と「同一又は類似の商品等表示を使用するなどして」「他人の商品又は営業と混同を生じさせる行為」を不正競争として規制しています。
そのため、
という3つの要件を満たすことが必要です。
(1) 他人の商品等表示が需要者の間に広く認識されていること(周知性)
「需要者」とは、商品等の取引の相手方のことを言います。消費者が購入する商品等であれば、消費者も含まれます。
また、「広く認識されている」とは、全国的に知られている必要はなく、一地方であっても足りると言われています。
一般的には、一都道府県の中で、知られている状態で良いと考えられています。
裁判例では、堂島ロール、Levi’sジーンズの弓形刺繍と赤いタブ、501、ファイアーエムブレムなどが「周知な商品等表示」と判断されています。
また、神奈川県横浜市にある「勝烈庵」は、隣接する神奈川県鎌倉市では「広く知られている」が、静岡県富士市では「広く知られていない」と判断したものもあります。
(2) 他人の商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用するなどすること(類似性)
ある商品等表示が、別の商品等表示と類似しているかどうかは、「両者の外観、称呼、又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるかどうか」という基準で判断されます。
これは、弁護士コラム「商標の類似性判断について」で記載した商標の類似性判断基準とほぼ同様です。
商品等表示で例に挙げた「黒烏龍茶」に関して、以下の2つの商品等表示(左がサントリー社、右が他社のもの)は、「類似」と判断されています。
4.著名な商品等表示の冒用とは
不正競争防止法では、「自己の商品等表示として他人の著名な商品等表示」と「同一又は類似の商品等表示を使用するなどする行為」を不正競争として規制しています。
そのため、
という2つの要件を満たすことが必要です。
なお、周知な商品等表示の混同惹起と異なり、混同が生じているかどうかは要件とされていません。
(1) 他人の商品等表示が著名であること(周知性)
「著名」とは、単に一地方で需要者の間に知られているだけでは足りず、需要者以外にも全国的に広く知られている必要があります。
商品等表示が「著名」かどうかは、①企業の創業の歴史、②商品の販売期間、③全国の支社・支店・営業所、店舗数、④商標登録を受けているかどうか、⑤包装・包装紙への使用、⑥店舗ののれん、表札、看板への使用、⑦販売数・売上高、販売金額、⑧他社同種商品の販売数量、⑨同種商品中のシェア・市場占有率、⑩インターネットアクセス数、⑪アンケート調査結果、⑫文学作品、映画等への登場・出演、⑬辞書における説明・紹介、⑭新聞広告、雑誌広告、テレビCM、ラジオCMの具体的な数字データなどの様々な要素から判断されています。
裁判例では、シャネル、ルイ・ヴィトン、三菱、三菱商標(スリーダイヤのマーク)、JAL(赤い鶴のマーク)、MARIO KARTなどが、「著名な商品等表示」と判断されています。
(2) 他人の商品等表示と同一又は類似の商品等表示を使用するなどすること(類似性)
周知な商品等表示の場合と同様に、ある商品等表示が、別の商品等表示と類似しているかどうかは、「両者の外観、称呼、又は観念に基づく印象、記憶、連想等から両者を全体的に類似のものとして受け取るおそれがあるかどうか」という基準で判断されます。
これは、弁護士コラム「商標の類似性判断について」で記載した商標の類似性判断基準とほぼ同様です。
5.おわりに
企業活動を行う以上、不正競争に関わる場面は、大なり小なり出てくると思います。
不正競争に関する問題がございましたら、当事務所の弁護士までご相談ください
以上
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