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公開日:2023.1.27
企業法務【名古屋/知的財産】商品形態の模倣への規制(不正競争防止法)について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は「商品形態の模倣への規制(不正競争防止法)」について取り上げます。
1.不正競争防止法とは
不正競争防止法とは、「事業者間の公正な競争及びこれに関する国際約束の的確な実施を確保するため、不正競争の防止及び不正競争に係る損害賠償に関する措置等を講じ、もって国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする」法律です。
不正競争防止法では、不正競争行為として以下の10の類型を規定し、不正競争行為を行った者に対しては、差止めの請求や損害賠償の請求、信用回復の措置を求めることができ、不正競争行為の内容によっては刑事罰(※)も科されます。
※ 不正の利益を得る目的で③の行為を行った場合、5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処せられ、場合によっては懲役刑と罰金刑が両方科される場合があります。また、会社の従業員や役員がこれらの行為を行った場合、会社にも3億円以下の罰金が科されることがあります。
今回は、企業活動に影響が大きい「③他人の商品形態を模倣した商品の提供」に焦点を当ててみます。
2.他人の商品形態を模倣した商品の提供とは
不正競争防止法では、①「他人の商品の形態」を ②「模倣した商品」を ③「譲渡等する行為」を不正競争として規制しています。
せっかく商品化するために、資金や労力を投下したにもかかわらず、他社がその商品を模倣することによって、資金や労力を投下することなく利益を得るのは公正な競争とはいえないため、規制されています。
(1)商品形態とは
商品形態とは
を言います。
要するに、外から確認できる「商品の形状等」のことです。
外から確認できるのであれば、商品の内部構造も「商品形態」に含まれます。
例えば、バンダイ社が発売している「たまごっち」という商品がありますが、「たまごっち」の形状は「商品形態」に該当します。
※経済産業省作成の不正競争防止法テキストより抜粋
ただし、「商品の機能を確保するために不可欠な形態」は「商品形態」からは除かれます。
「商品の機能を確保するために不可欠な形態」とは、その形態が市場で実質的に標準となっているもの、又は、その形態をとらないと商品として成立しない形態のことを指します。
「商品の形態を確保するために不可欠な形態」を「商品形態」に含めてしまうと、独自性のある商品形態に保護を与えるのではなく、商品そのものの独占につながってしまうおそれがあるためです。
例えば、パソコン等の端末機とプリンター等の間の接続用コードのプラグは、本体側の端子とかみあうようになっており、そのかみあう部分の形態は、プラグの商品の機能を確保するために不可欠な形態と言えます。
また、コップの形態として、中に液体を入れるために側面と底面を有しているのは商品の機能を確保するために不可欠な形態と言えます。
そのため、側面と底面を有するという点は「商品形態」に該当しませんが、コップの縁や側面の模様が特徴的である場合には「商品形態」に該当します。
なお、商品の形態が「ありふれたもの」であった場合も「商品形態」に該当しないという裁判例もあります。
同種の商品と比べて何の特徴もないありふれた形態である場合は、特段の資金や労力をかけることなく作り出すことができるため、保護する必要がないという理由です。
(2)模倣とは
模倣するとは
を言います。
要するに、他人の商品の形態をまねして、ほとんど同じ形態の商品を作ること(いわゆるデッド・コピー)です。
他人の商品の形態をまねする必要がありますので、独自に創作した結果、たまたま他人の商品の形態と同じ形態になった場合は、「模倣」にはなりません。
ほとんど同じ形態かどうかは、他人の商品と類似品を比べて観察して、形態が同一か実質的に同一といえるほどに酷似しているかどうかを判断します。
裁判例では、以下の商品が「模倣」と判断されています。
バンダイ社の「たまごっち」(写真左)と他社製品(写真右)
※経済産業省作成の不正競争防止法テキストより抜粋
ザ・リラクス社の婦人用コート(写真左)と他社製品(写真右)
※経済産業省作成の不正競争防止法テキストより抜粋
(3)譲渡等する行為とは
他人の商品を模倣した商品の
・販売
・貸出
・販売・貸出のための展示
・輸出
・輸入
が規制の対象です。
他人の商品を模倣した商品を作ること自体は、不正競争に該当しません。
(4)適用除外
・他人の商品について最初に販売された日から起算して3年を経過している場合
・他人の商品の形態を模倣した商品を譲り受けた者が、取得時に模倣品と知らず、かつ、知らないことに重大な過失がない場合において、その商品を販売等する行為
は、不正競争に該当しません。
他人の商品形態を模倣した商品の提供を規制する趣旨は、資金や労力を投下して商品を開発した先行開発者の成果を保護する点にありますので、投下した資金や労力の回収が終われば、それ以上、先行開発者を保護する必要はありません。
玩具など模倣の多い商品では概ね3年以内のサイクルで商品が入れ替わっていくことが多いため、商品が最初に発売された日から3年に限って保護の対象としています。
3年を超えて保護を受けたい場合には、出願日から最長25年保護される意匠制度を利用する必要があります(意匠については、弁護士コラム「意匠の概要について」をご参照ください)。
3.おわりに
商品開発を行う上で、他人の商品形態を模倣した商品の提供の規制は、きちんと理解しておく必要があります。
しかし、判断に迷うこともあるかと思いますので、その場合は当事務所の弁護士までご相談ください。
以上
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