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公開日:2023.10.13
企業法務会社をたたむ(倒産)方法は?破産・特別清算のメリットとデメリット
弁護士法人PROの弁護士の柏木太郎です。
帝国データバンクによると、2022年度の企業倒産件数は前年度から増加し、負債総額も前年度から97.7%増加したとのデータが出ています。
会社をたたむと聞くとネガティブなイメージを持つかもしれませんが、会社をたたんで経済的リスタートを果たすことは法律の理念にも合致しますし、何より社会経済の発展に繋がります。
現に、上記データにも表れているとおり多くの会社が倒産を選択しています。
もっとも、会社のたたみ方にはいくつか種類があり、自社にマッチした方法をとる必要があります。
今回は、事業を終了させ会社をたたむ(清算型倒産)方法を紹介し、それぞれのメリット・デメリットも解説します。
各方法の手続きの流れは、別の記事で詳しくご紹介します。
1.会社のたたみ方
まずは、会社のたたみ方として挙げられる2種類の方法を紹介します。
(1) 破産
破産とは、①支払不能 又は ②債務超過の場合に、裁判所の監督のもと、裁判所が選任した破産管財人が清算を行う手続です(破産法1条、15条、16条等)。
債務者または債権者が裁判所へ申立て、裁判所が破産手続開始を決定します。
破産管財人が選任されると、会社の財産(破産財団)の管理処分権の一切は破産管財人が有することになります(管財型の倒産手続)。
自分自身で清算手続を進めたい場合は後述の特別清算を利用します。
破産管財人が会社の財産を換価し、債権者への配当が完了すると破産手続終結となり、終結の登記をもってその会社は消滅します。
冒頭の帝国データバンクのデータによれば、全体の倒産件数のうち93.3%が「破産」ですから、破産はもっともポピュラーな倒産方法といえるでしょう。
(2) 特別清算
特別清算とは、①通常の清算の遂行に著しい支障を来すべき事情 又は ②債務超過の疑いがあるときに、裁判所の監督下で行われる特別の清算手続です(会社法510条以下)。
裁判所の監督下にあるという点では破産と共通しますが、清算事務を行う人物は裁判所が選任する第三者ではなく、清算人(原則として当該会社の取締役)となります(DIP型の倒産手続)。
特別清算では、債権者集会にて債務の減額・免除等を内容とする協定につき債権者の多数決による同意及び再願書の許可を得る必要があります。
2.メリット・デメリット
続いて、破産と特別清算のそれぞれのメリット・デメリットをご紹介します。
(1) 破産のメリット・デメリット
破産のメリットは、例外に該当しない限り、租税公課を含む全ての債務が免除される点です(従業員に対する給与支払債務等を除く)。
法人格も消滅しますから、会社の資金繰りや経営に苦慮することもなくなります。
デメリットは、裁判所主導で進められ、原則として全ての債権者が破産手続に参加することが事実上強制される大がかりな手続であるため、申立費用や終了するまでの時間等のコストが大きい点です。
また、会社の代表者が、会社が借主である銀行借入等の連帯保証人となっている場合、会社が消滅しても連帯保証人の保証債務は消滅しないため、会社の破産と同時に代表者個人の破産手続も必要になるケースが多いです。
この場合は代表者個人の財産も原則として全て売却しなければなりません。
さらに、特別清算にも共通しますが、会社が消滅する以上、その会社での事業を継続できない点もデメリットといえます。
(2) 特別清算のメリット・デメリット
特別清算のメリットは、裁判所への申立てが必要であるものの、破産よりも簡易的な方法であるため時間や費用といったコストを低く抑えられる点です。
また、清算人に就任することで自身が清算手続を主導できる点もメリットといえます。
デメリットは、債権者集会における協定の締結と裁判所の許可を経る必要があるため、債権者の同意が得られない場合には申立が困難となる点です。
特別清算の申立ができない場合は破産の利用を検討せざるをえません。
また、あくまで協定で定められる債権は存続しますから、債権の完全な免除が望めない点もデメリットです。
3.まとめ
今回、会社をたたむ方法とそれぞれの方法のメリット・デメリットをご紹介しました。
どの方法で会社をたたむかは、会社の資産状況や株主・債権者等のステークホルダーの協力を得られるか否かといった事情を基にケースバイケースで判断しなければなりません。
方法を選択した後は、法令の定めに基づき、適切に手続きを進めていく必要があります。
会社をたたむ際の具体的な手続の流れは、別の記事で詳しくご紹介します。
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