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弁護士コラム
Column
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公開日:2021.1.22
企業法務2021年に施行される主な改正法について
弁護士法人PROの伊藤崇です。
2021年に施行される改正法のうち中小企業や人事労務に関係の深い主要なものをご紹介します。
企業活動に影響の大きいものも含まれていますので是非ご確認ください。
1.改正著作権法
いわゆる海賊版のダウンロードの規制対象が広がります。
改正前は音楽や映像のみが規制対象でしたが、漫画・書籍・論文など全著作物の違法ダウンロードが規制されることになります。
具体的には、全著作物について違法にアップロードされた著作物(海賊版)であることを知りながら当該海賊版をダウンロードするなど一定の要件を満たす場合には、損害賠償請求の対象になったり刑事罰(2年以下の懲役・200万円以下の罰金)の対象になるなど、民事上・刑事上の措置の対象になりました。
改正著作権法は本年1月1日から施行されています。
2.改正育児・介護休業法
看護休暇(※)、介護休暇(※)について改正が行われました。
改正点は2点あります。
1点目は、改正前は半日単位での取得が可能であったのが、改正後は時間単位での取得が可能になりました。「時間」とは、1時間の整数倍の時間(1時間、2時間、3時間・・・)をいい、一定の場合を除き、労働者からの申し出に応じ、労働者の希望する時間数で取得できるようにする必要があります。
2点目は、看護休暇・介護休暇を取得できる労働者の範囲が広がりました。改正後は全ての労働者が取得可能になります。
改正育児・介護休業法は本年1月1日から施行されています。
※看護休暇とは・・・・
小学校就学の始期に達するまでの子を養育する労働者(日々雇用される労働者等は除く)は、1年に5日(子が2人以上の場合は10 日)まで、病気・けがをした子の看護又は子に予防接種、健康診断を受けさせるために休暇が取得できる制度
※介護休暇とは・・・・
要介護状態にある対象家族の介護その他の世話を行う労働者は、1年に5日まで(対象家族が2人以上の場合は 10 日まで)、介護その他の世話を行うために、休暇が取得できる制度
3.改正高年齢者雇用安定法
高年齢者の雇用に関して事業主が講ずべき措置について改正が行われました。
改正前の65歳までの雇用確保措置(※)に加え、65歳から70歳までの就業機会を確保するため、以下のいずれかの措置を講ずる努力義務が新設されました。
65歳から70歳までの就業確保措置として上記④、⑤の措置のみを選択する場合には、労働者の過半数代表者等の同意を得る必要があります。
改正高年齢者雇用安定法に基づく上記義務はあくまで努力義務ですから,直ちに上記措置を講じる法律上の義務まではありません。
改正高年齢者雇用安定法は本年4月1日から施行されます。
※65歳までの雇用確保措置とは・・・
Ⅰ 60歳までの定年禁止
Ⅱ 定年を65歳未満に定めている事業主については以下のいずれかの措置
ⅰ 65歳までの定年引き上げ
ⅱ 定年制の廃止
ⅲ 65歳までの継続雇用制度(再雇用制度・勤務延長制度等)の導入
65歳までの雇用確保措置である上記Ⅰ,Ⅱは事業主の義務です。
4.働き方改革関連法 ~同一労働同一賃金~
短時間労働者・有期雇用労働者に対する同一労働同一賃金制度(※)は昨年4月1日から大企業についてのみ先行して施行されていましたが、本年4月1日から中小企業にも施行されます。
昨年10月に3件の最高裁判例が出されたことをはじめとして同一労働同一賃金制度に関しては下級審レベルでも注目すべき判例が相次いでいます。中小企業法務・人事労務において大きな影響が生じる法改正です。
~同一労働同一賃金の最高裁判例に関する本コラム記事はこちら~
同一労働同一賃金に関する最高裁判例<長澤運輸事件・ハマキョウレックス事件>
同一労働同一賃金に関する最高裁判例<大阪医科大学事件・メトロコマース事件・日本郵便事件>
※同一労働同一賃金制度とは・・・・
同一企業内において、正社員と非正規社員(短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)との間で、基本給、賞与、各種手当、福利厚生、教育訓練などのあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
①職務内容(業務内容と責任程度)、②職務内容や配置変更の範囲、が正社員と同一であれば待遇の差別的取扱を禁止する「均等待遇」、①と②が正社員と異なる場合には、①、②の違いの程度や③その他の事情も考慮して、不合理な待遇差を禁止する「均衡待遇」の2種類から構成されます。
また、非正規社員に対する待遇に関する説明義務も強化されています。
5.就業規則等の諸規程の点検・見直しの必要性
上記のうち、特に同一労働同一賃金制度や改正育児・介護休業法に関する改正は就業規則や賃金規程等の点検・見直しをする必要のあるものです。
働き方改革関連法については昨年に引き続き重要な改正が続いておりますので、この機会に自社の諸規程が法改正に追いついているかチェックいただくことをおすすめします。
以上
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