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公開日:2023.12.27
企業法務【名古屋/交通事故】マイカー使用中の交通事故の会社の責任について
弁護士法人PROの弁護士の松永圭太です。
今回は、「マイカー使用中の交通事故の会社の責任」について取り上げます。
1.マイカー使用中の交通事故について
従業員の居住地と会社の勤務地が離れていて、公共交通機関の利用が困難な場合、従業員がマイカーを使用して、会社に通勤していることがあると思います。
また、マイカーを使用して、工事現場に向かったり、取引先を訪問したりするなど、会社の業務にマイカーを使用していることもあると思います。
しかし、従業員がマイカーを使用して通勤中に交通事故を起こしたり、マイカーを使用して業務中に交通事故を起こしたりした場合、 事故を起こした従業員が被害者に対して損害賠償責任を負うことは当然ですが、会社も被害者に対して損害賠償責任を負う(被害者に賠償金を支払わないといけない)ことがあるため、注意が必要です。
では、どのような場合に、会社が被害者に対して損害賠償責任を負い、どのような場合に、会社が被害者に対して損害賠償責任を負わないといえるのでしょうか。
2.会社の損害賠償責任について
(1)マイカー通勤中の交通事故
通勤は、会社の業務そのものとは言えず、会社が関与しないところですので、原則として、会社の損害賠償責任は否定されます。
しかし、通勤は、会社の業務そのものではありませんが、完全にプライベートな行為でもありません(例えば、通勤途中に交通事故の被害に遭った場合には、通勤災害として労災保険の対象となります)ので、一定の場合には、会社に損害賠償責任が発生することがあります。
【「従業員がマイカー通勤中に交通事故を起こした」という事案で、会社に損害賠償責任が発生すると考えられる例】
(2)マイカーの業務使用中の交通事故
マイカーの業務使用は、会社の業務そのものですので、原則として、会社の損害賠償責任は肯定されます。
ただし、一定の場合には、会社に損害賠償責任が発生しないことがあります。
【「会社の規則に反して、従業員がマイカーの業務使用中に交通事故を起こした」という事案で、会社に損害賠償責任が発生しないと考えられる例】
3.対応策
(1)マイカーの業務使用(通勤使用を含みます)を一切禁止する
会社の就業規則等でマイカーの業務使用(通勤使用を含みます)を一切禁止した上で、社内通知等で従業員に周知徹底し、その運用も厳格に行っている場合には、通勤中の交通事故であっても業務使用中の交通事故であっても、会社に損害賠償責任は発生しないと考えられます。
そのため、会社の就業規則等でマイカーの業務使用を禁止していない場合には、会社の就業規則等にマイカーの業務使用禁止事項を入れることをお勧めします。
ただし、会社の就業規則等でマイカーの業務使用を禁止したとしても、社内通知等で従業員に周知していなかったり、運用を厳格に行わなかったりなど、マイカーの業務使用を事実上黙認していた場合には、会社に損害賠償責任が発生することがありますので、マイカー使用禁止を社内通知等で従業員に周知徹底し、その運用も厳格に行う必要があります。
(2)マイカーの通勤使用を許可する場合
マイカーの業務使用は禁止しつつ、通勤にだけマイカー使用を許可する場合、そのルールを会社の就業規則等で定めておく必要があります。
その場合、マイカーの通勤使用は、原則禁止としつつ、会社の手続に則って許可を受けた場合にのみマイカーの通勤使用を許可すると良いでしょう。
許可申請に当たっては、必ず、対人・対物無制限の自動車保険(任意保険)への加入・継続を条件とすること、添付資料として、運転免許証の写し・自動車検査済証の写しだけでなく、任意保険書類の写しや通勤中の事故については従業員の加入する保険にて対応し、会社は一切責任を負わない旨の誓約書を提出してもらうことが必要です。
従業員が任意保険に入っていれば、その保険で被害者への損害賠償の対応が可能で、会社が損害賠償金を被害者に支払う必要がないためです。
また、会社の許可を受けずにマイカーを通勤使用した場合には、厳正に対処をして、マイカーの通勤使用を会社が容認していたと思われないようにする必要があります。
そして、通勤に当たっては、ガソリンの実費支給をやめて、公共交通機関で通勤した場合に準じて通勤手当を支給することが良いでしょう。
4.おわりに
マイカーの業務使用中や通勤使用中に従業員が交通事故を起こした場合に、会社が損害賠償責任を負わなくてすむように、就業規則等でルールをきちんと定め、厳格に運用しないと、会社が多額の損害賠償責任を負う可能性があります。
判断に迷う場合には、弁護士までご相談ください。
以上
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