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公開日:2024.5.17
企業法務海外企業と売買契約を結ぶ際の注意点・リスク
弁護士法人PROの柏木太郎です。
ビジネスのグローバル化が進んでおり、今や多くの企業が海外企業との取引を行っています。
多種多様な取引類型の中でも、売買契約はビジネスの最もポピュラーな類型です。
国内の企業同士であればシンプルな内容のビジネスといえるかもしれませんが、海外企業との売買契約においてはリスクを加味して自社が損害を被らないようビジネスプランや契約書を作りこまなくてはなりません。
今回は、海外企業との取引、中でも売買に焦点を当て、リスクや注意点を解説します。
海外企業との取引でお悩みであれば、弊所へお気軽にご相談ください。
1.代金回収の負担増加リスク
取引先が代金を支払わない場合、国内企業同士であれば、日本の裁判所に訴訟を提起し、強制執行を行うことになりますが、訴訟や強制執行を行うための負担や取引先の資産調査の負担も大きいです。
国内企業同士でさえ代金回収の負担が大きいですから、海外企業との取引であればその負担はさらに大きくなります。
海外に拠点を持つ海外企業の資産を調査することは容易でありませんし、紛争解決手段も訴訟・調停・国際仲裁などいくつかのパターンの中から最適な手段を選択する必要があります。
仮に訴訟で勝ったとしても、海外の法制度において適切な強制執行が為される確証はありません。
このように、海外企業との取引においては、代金回収の負担増加リスクは第一に検討すべき重要なポイントです。
対処法としては、下記2つの方法が考えられます。
なお、自社が代金を支払う側の場合は、上記のような代金回収リスクを逆手にとり、交渉を有利に進めることも可能です。
2.運送中の毀損・紛失リスク&運送の遅延リスク
日本は島国ですから、海外(文字どおり“海の外”)へ製品を輸出する手段は空路又は海路に限られ、運送距離も長距離になりがちです。
また、海外の輸送機関が、日本の輸送機関と同程度の信頼性があるかというと疑問が残ります。
そのため、国内企業同士の売買に比べ、運送中に製品が毀損するリスクが大きいです。
対処法としては、運送中の毀損・紛失、運送の遅滞を織り込んだ契約書を作成することが考えられます。
下記を適切に契約書に記載すれば、運送に関するリスクを大幅にカバーできます。
3.製品に関する責任
販売する製品の品質保証、第三者の知的財産権を侵害していないことの保証やアフターサービスの内容・条件といった製品に関する自社の責任は、国内企業同士の売買であっても丁寧に取り決める必要がありますが、海外企業との売買においては、さらにこの必要性が高まります。
国内企業同士の売買であれば、仮に取り決めが充分に為されず契約書に十分な記載が無いとしても、民法、商法、著作権法といった法律が適用されることになるので、解決へ向けてある程度の筋道は明確になります。
しかし、海外企業との取引(売買に限らずどの取引でも)では、契約書に十分な記載がないとなると、外国の法律が適用されてしまったり想定外にウィーン売買条約が適用されてしまったりするなどして、自社に予想外の損害をもたらすリスクがあります。
対処法としては、下記の方法が考えられます。
ウィーン売買条約についても簡単に触れておきます。
ウィーン売買条約とは、正式名称を「国際物品売買契約に関する国連条約」といい、国境を越えて取引される物品の売買に関する統一ルールを定めたものです。
有形の物品の売買において、売主・買主双方が締約国である場合、自動的にウィーン売買条約が適用されることになります。
もっとも、契約書においてウィーン売買条約の適用を排除する旨記載すれば、ウィーン売買条約はその売買においては適用されません。
ウィーン売買条約を排除するか否かは一概には決められませんので、個々の売買における個別事情を加味してケースバイケースで判断する必要があります。
一般的には、ウィーン売買条約に馴染みが浅いことやウィーン売買条約が用いられた裁判例が少なく過去の事例から予測を立てられないことから、ウィーン売買条約の適用を排除するケースが多いです。
とはいえ、契約において他国の法律を準拠法とせざるを得ない場合は、ウィーン売買条約は国際条約として確立されているため信頼性があることから、他国の法律のみが適用されるよりも、他国の法律とウィーン売買条約が併用されるとした方が良いともいえます。
4.まとめ
今回は、海外企業との取引のうち、売買に焦点をあててリスクやそれに対する対象法を解説しました。
取り扱う製品、取引する企業が所在する国など個別具体的な事情を加味し、リスクに対処した取り決めができれば、海外企業との売買で予想外の損害を被らずに済むでしょう。
海外企業との取引に不安を感じている場合は、お気軽に弊所へご相談ください。
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