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弁護士コラム
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公開日:2024.5.31
企業法務【名古屋/インターネット問題】情報流通プラットフォーム対処法について
弁護士法人PROの松永圭太です。
今回は、令和6年5月10日に成立し、同月17日に公布されました「情報流通プラットフォーム対処法」について取り上げます。
1.はじめに
これまで、インターネット上で、自社の名誉を傷つけるような事実無根の書き込みがなされた場合において、投稿者を特定するための手続(発信者情報開示手続)について定める法律として、プロバイダ責任制限法を紹介してきました(弁護士コラム「プロバイダ責任制限法の改正について」参照)。
今回、誹謗中傷等のインターネット上の違法・有害情報に対処するため、大規模プラットフォーム事業者に対し、①対応の迅速化、②運用状況の透明化の措置を義務付ける内容のプロバイダ責任制限法の改正が行われました。
この改正によって、法律名も変更され、プロバイダ責任制限法(※1)は、情報流通プラットフォーム対処法(※2)となりました。
情報流通プラットフォーム対処法の施行日は、「公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日」とされており、現時点(令和6年5月31日時点)ではまだ施行されていません。
※1 正式名称は、「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」です。
※2 正式名称は、「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」です。
2.情報流通プラットフォーム対処法の概要について
(1)改正の経緯
インターネット上のSNS等を利用した誹謗中傷による被害が深刻化しており、誹謗中傷などの違法な投稿を迅速に削除する必要性が高まっています。
また、情報発信のための公共的な基盤を提供するSNS事業者等のプラットフォームの重要性が増しています。
そのため、 情報流通プラットフォーム対処法では、大規模なSNS事業者等を「大規模特定電気通信役務提供者」(大規模プラットフォーム事業者)として指定し、①侵害情報送信防止措置(投稿削除)の実施手続の迅速化、②送信防止措置の実施状況の透明化を図るための義務を課すことになりました。
(2)大規模プラットフォーム事業者
情報流通プラットフォーム対処法で義務が課される大規模プラットフォーム事業者とは、SNSや匿名掲示板などのインターネット上のサービス提供者のうち、一定規模以上の者で、総務大臣に指定された者を言います。
一定規模以上の基準について、法律では、1か月間の平均発信者数や1か月間の平均延べ発信者数が一定数以上にあるかどうかによって判断されるようですが、具体的な数値については総務省令で今後定められるようです。
また、一定規模以上の基準を満たしたとしても、侵害情報の削除が技術的に可能でない場合や権利侵害発生のおそれが類型的に少ないサービス(これも総務省令で今後定められます)に該当する場合には、大規模プラットフォーム事業者として指定されません。
大規模プラットフォーム事業者に指定された場合、指定を受けた日から3か月以内に、一定事項を総務大臣に届け出なければなりません。
(3)侵害情報送信防止措置の実施手続の迅速化の措置
誹謗中傷などの違法な投稿の削除を迅速に行うために、大規模プラットフォーム事業者に対して、以下の措置が義務付けられます。
① 削除申出窓口・手続の整備・公表
② 削除申出への対応体制の整備
③ 削除申出に対する判断・通知
① 削除申出窓口・手続の整備・公表
大規模プラットフォーム事業者は、自らが提供するインターネット上のサービスについて、削除の申出を行う方法(削除申出窓口)を定めて、公表する必要があります。
また、削除の申出を行う方法は、
◆インターネット上で行うことが可能なものであること
◆申出者に過重な負担を課すものではないこと
◆申出を受けた日時が申出者に明らかになるものであること
という条件を満たす必要があります。
② 削除申出への対応体制の整備
大規模プラットフォーム事業者は、権利侵害を受けた者から削除の申出があった場合には、権利が不当に侵害されているかについて、遅滞なく必要な調査をしなければなりません。
調査に当たっては、権利侵害への対処に関して十分な知識経験を有する侵害情報調査専門員を選任しなければなりません。
大規模プラットフォーム事業者が提供するインターネット上のサービスにおける発信者数に応じて、侵害情報調査専門員の最低人数が総務省令で今後定められます。
③ 削除申出に対する判断・通知
大規模プラットフォーム事業者は、削除の申出を受けて行った調査の結果に基づき、削除をするかどうかを判断し、 原則として申出を受けた日から14日以内の総務省令で定める期間内に、所定の事項を申出者に通知する必要があります。
(4)送信防止装置の実施状況の透明化の措置
誹謗中傷などの違法な投稿の削除の実施状況の透明化を図るために、大規模プラットフォーム事業者に対して、以下の措置が義務付けられます。
① 削除基準の策定・公表
② 削除した場合の発信者への通知
① 削除基準の策定・公表
大規模プラットフォーム事業者が、投稿を削除することができるのは、
◆事前に公表している削除基準に従うとき
◆大規模プラットフォーム事業者が発信者であるとき
◆法令上の削除義務があるとき
◆緊急の必要により削除を行う場合であって、削除をする情報の種類が通常予測できないために削除基準による削除対象として明示されていないとき
に限られます。
大規模プラットフォーム事業者は、削除の実施状況等について、毎年1回、公表する必要があります。
② 削除した場合の発信者への通知
大規模プラットフォーム事業者は、削除を実施したときは、原則として、遅滞なく、削除をした旨及びその理由を発信者に通知し、又は、発信者が容易に知り得る状態に置く措置を講じなければなりません。
3.おわりに
今回の法改正によって、自社の名誉を傷つけるような事実無根の書き込みがなされた場合にプラットフォーム事業者において、迅速に削除されることが期待されます。
また、大規模プラットフォーム事業者に指定された場合、総務大臣への届出や侵害情報送信防止措置の実施手続の迅速化の措置、送信防止装置の実施状況の透明化の措置への対応が必要になります。
情報流通プラットフォーム対処法のことでお困りのことがあれば、弁護士までご相談ください。
以上
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