弁護士法人PRO | 人事 労務問題 中小企業法務 顧問弁護士 愛知 名古屋 | 伊藤 法律事務所
弁護士コラム
Column
Column
公開日:2026.5.15
人事・労務残業代の仕組み ―種類ごとの違いと計算の基本
弁護士法人PROの弁護士 元木琢己です。
「残業代」と聞くと、単に“残業した分のお金”というイメージを持つ方も多いかもしれません。
しかし、実際には残業代にはいくつか種類があり、働いた時間や曜日、時間帯によって支払い方や割増率が異なります。
さらに、どの手当を計算の基礎に含めるのかなど、実務上わかりにくい点も少なくありません。
そこで、この記事では、残業代の基本的な仕組みや計算方法について、解説します。
1.残業代の種類
一般に「残業代」といわれるものには、大きく分けて次の3種類があります。
①時間外労働にかかる割増賃金
②休日労働にかかる割増賃金
③深夜労働にかかる割増賃金
同じ割増賃金ですが、それぞれ何に対して支払われるのかが異なります。
①時間外労働にかかる割増賃金
労働基準法では原則として、労働時間の上限は、1日8時間、週40時間(※)とされています。
この上限を超えて働いた場合に支払う必要があるのが、時間外労働時間の割増賃金です。
つまり、これは、「長く働いた」ことに対して支払われる残業代です。
なお、1か月あたりの労働時間が60時間を超えた場合には、その超えた部分について、通常より高い割増率で支払う必要があります。
※一定の要件を満たす小規模の商業・サービスの事業者については1週間当たり44時間が上限となります。
②休日労働にかかる割増賃金
労働基準法は、労働時間が長時間となるのを防止するため、毎週少なくとも1日の休日を与えなければならないと定めています。
休日労働に対する割増賃金は、この法律上の休日にも働いたことに対して支払われる残業代です。
そのため、休日労働に対する割増賃金も、労働時間の「長さ」に対して支払われる割増賃金といえます。
③深夜労働にかかる割増賃金
深夜労働にかかる割増賃金は、働いた時間の長さでなく、「働いた時間帯」に着目して支払われるものです。
ここでいう深夜とは、午後10時から午前5時までの間のことをいいます。
夜勤などで、この時間帯に労働をした場合には、深夜労働の割増賃金を支払う必要があります。
2.割増賃金の計算方法
(1)何を基準に計算するか
割増賃金は、「通常の賃金」を基準にして、そこに一定の割増率を乗じて計算します。
この「通常の賃金」には、基本給だけでなく、一定の手当も含まれます。
例えば、ある作業に対して危険手当などが支払われている場合、その危険手当は、その仕事に通常ついてくる賃金といえるため、割増賃金の計算の基礎に入ります。
これに対して、次のような手当は、原則として割増賃金の計算の基礎には入りません。
◆家族手当
◆通勤手当
◆別居手当
◆子女教育手当
◆臨時に支払われた賃金
◆1か月を超える期間ごとに支払われる賃金
これらの手当は、先ほどの危険手当の例とは異なり、労働の内容や量とは関連性が薄いことや計算上の理由から、基礎から除かれています。
もっとも、算定の基礎となるか否かは、支払われている賃金の名称によって決まるわけではありません。
その手当がどのような目的で支払われているのかという実質で判断する必要があります。
(2)時間外労働に対する割増賃金
時間外労働の割増率は、原則として次の通りです。
◆1日8時間、週40時間を超える場合
→25%以上
◆月60時間を超えた場合
→50%以上の割増賃金を支払う必要があります。
ここで注意が必要なのは、時間外労働の時間は、会社が決めた所定労働時間を超えたかどうかではなく、法律上の上限を超えたかによって決まるという点です。
例えば、会社の所定労働時間が1日7時間の職場で、ある日に9時間働いたとします。
この場合、所定労働時間よりは2時間多く働いています。
しかし、法律上の上限は1日8時間なので、法律上の時間外労働になるのは、8時間を超えた1時間だけです。
したがって、割増賃金が必要なのは1時間分となります。
もっとも、所定労働時間の7時間を超えた8時間までの1時間についても、働いたことには変わりありませんので、通常の賃金は支払う必要があります。
ただし、その1時間には割増賃金は必要ありません。
このように、割増賃金が必要かは、会社のルールではなく、法律上の労働時間の上限を超えているかどうかで判断することになります。
(3)休日労働
休日労働の割増率は、35%以上となっています。
ただし、ここでいう休日とは法定休日を指しています。
したがって、土日祝に働いたからと言って必ずしも、休日労働ということにはなりません。
例えば、就業規則等で週1回の法定休日とは別に、祝日も休日と定めている会社があるとします。
この場合、祝日に働いたとしても、その祝日が法定休日でなければ、休日労働の割増賃金は発生しません。
(4)深夜労働
深夜労働の割増率は、25%以上です。
深夜労働については、時間外労働や休日労働に当たらない場合であっても、午後10時から午前5時までの間に働いたのであれば、支払う必要があります。
したがって、夜勤など深夜から労働が始まった場合や短時間しか労働をしていない場合でも、割増賃金を支払う必要があります。
また、深夜の割増賃金は、働いた時間帯に着目して支払われるものなので、管理監督者であっても支給する必要があります。
(5)時間外労働と休日労働が重なった場合
休日に時間外労働をした場合の割増率は、35%以上となります。
これは、時間外労働と休日労働に対する割増賃金が、いずれも法定の労働時間の枠を超えるという、労働時間の長さに着目して支払われる残業代として同じ性格を持っているためです。
そのため、時間外労働をした場合の25%と休日労働をした場合の35%を足して、60%にするのではなく、35%以上ということになります。
(6)休日労働と深夜労働が重なった場合
休日に深夜労働をした場合には、休日労働35%+深夜労働25%=60%以上の割増賃金が必要です。
これは、休日労働が「働いた時間の長さ」に着目するのに対し、深夜労働が「働いた時間帯」に着目するもので、性質が異なっているためです。
(7)時間外労働と深夜労働が重なった場合
時間外労働を深夜に行った場合でも、割増率はそれぞれ合算されます。
これは、⑹場合と同様に、時間外労働が労働した長さ、深夜労働が労働した時間帯に着目した残業代だからです。
そのため、以下の割増賃金を支払う必要があります。
◆1日8時間・週40時間を超える時間外労働を深夜に行った場合
→時間外労働25%以上+深夜労働25%以上=50%以上
◆1か月60時間を超える時間外労働を深夜にした場合
→時間外労働50%以上+深夜労働25%以上=75%以上
3.まとめ
残業代には、①1日8時間・週40時間を超えたときの時間外労働、②法定休日に働いたときの休日労働、③午後10時から午前5時までに働いたときの深夜労働の3種類があります。
割増率は、時間外が25%以上、休日が35%以上、深夜が25%以上で、重なれば加算されます。
計算の基礎には基本給のほか一部手当も含まれますが、通勤手当や家族手当などは原則として含まれません。
オンライン会議・
チャット相談について
まずはお気軽に、お電話またはフォームよりお問い合わせください。