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弁護士コラム
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公開日:2026.8.14
人事・労務パワハラ行為をする社員に、会社はどう対応すべきか
弁護士法人PROの弁護士元木琢己です。
職場でパワーハラスメントの相談や申告があった場合、会社はどのように対応すべきでしょうか。
被害を訴える社員を守るためには、早い対応が必要です。
一方で、申告だけを理由に、行為者とされた社員をすぐに処分することは危険です。
事実関係を十分に確認しないまま処分すると、
事実誤認や懲戒処分の無効をめぐり、新たな紛争になる可能性があります。
会社には、被害者の保護と、公平な調査を両立させることが求められます。
1.まずはパワハラに当たるかを確認する
職場のパワハラとは、一般に、次の3つの要素をすべて満たす言動をいいます。
①優越的な関係を背景とした言動であること
上司から部下への言動が典型です。
ただし、同僚や部下からの言動でも、業務上の知識や人間関係などから、 相手が拒みにくい場合には当たることがあります。
②業務上必要かつ相当な範囲を超えていること
必要な注意や指導であっても、人格を否定する発言や、長時間の叱責などは問題となります。
③労働者の就業環境を害すること
たとえば、 精神的苦痛により出勤が困難になる場合や、 職場で働きにくくなる場合です。
典型例としては、暴行などの身体的な攻撃、侮辱や人格否定などの精神的な攻撃、無視や隔離、過大な要求、過小な要求、私生活への過度な立入りなどがあります。
もっとも、客観的に見て、業務上必要で相当な範囲の指導は、パワハラには当たりません。
そのため、「厳しい言い方だった」というだけで結論を出すことはできません。
発言の内容、回数、継続性、当事者の関係、業務上の必要性、被害者への影響などを総合的に確認する必要があります。
2.相談を放置してはいけない
会社は、パワハラの相談を受けた場合、放置してはいけません。
「本人同士で話し合ってほしい」
「しばらく様子を見よう」
このような対応では、会社の対応として不十分となる可能性があります。
会社には、パワハラを許さない方針を明確にし、相談窓口を整備することが求められます。
また、相談があった場合には、事実関係を迅速かつ正確に確認しなければなりません。
さらに、相談者や関係者のプライバシーを守る必要があります。
相談したことや調査に協力したことを理由に、不利益な扱いをすることも禁止されています。
3.事実関係を公平に調査する
(1)相談を受けたら
まず被害を訴えた社員から話を聞きます。
その際には、いつ、どこで、誰から、どのような言動を受けたのかを具体的に確認します。
その場に誰がいたのか、どのような影響が出ているのかも確認します。
メール、チャット、録音、日記、診断書などの資料があれば、その内容も確認します。
(2)調査
次に、必要に応じて、目撃者などの第三者から話を聞きます。
最後に、行為者とされた社員からも説明を聞きます。
このとき、「パワハラをしましたね」と決めつけてはいけません。
問題となっている日時、場所、発言、行為を具体的に示し、十分に弁明する機会を与える必要があります。
対象となる事実を特定しないまま処分すると、後に懲戒処分が無効と判断されるおそれがあります。
調査中に被害が続くおそれがある場合には、暫定措置も検討します。
たとえば、座席の変更、指揮命令系統の変更、接触の制限などです。
ただし、被害を訴えた社員だけを一方的に異動させ、不利益を負わせる対応には注意が必要です。
4.パワハラが確認された場合の対応
調査の結果、パワハラの事実が確認された場合、会社は適切な措置を講じます。
(1)被害者への配慮
行為者との分離、配置の見直し、メンタルヘルス相談、労働条件上の不利益の回復などが考えられます。
(2)行為者への対応
注意、指導、研修の受講、配置転換、降格、懲戒処分などの中から、事案に応じた措置を選びます。
(3)再発防止策
管理職研修、社内方針の再周知、相談窓口の周知、業務量や人員配置の見直しなどが考えられます。
なお、パワハラの事実を明確に確認できなかった場合でも、何もしなくてよいわけではありません。
職場環境に問題がある場合には、研修や注意喚起などの再発防止策を講じることが大切です。
5.懲戒処分は慎重に判断する
パワハラがあったからといって、直ちに懲戒解雇が認められるわけではありません。
懲戒処分を行うには、 就業規則上の根拠が必要です。
また、処分の内容は、行為の重さに見合ったものでなければなりません。
処分を決める際には、行為の悪質性、回数、継続性、被害者への影響、過去の注意歴、本人の反省、他の事案との均衡などを確認します。
たとえば、一度の不適切発言と、長期間にわたる人格否定では、処分の重さは変わります。
処分を機械的に決めることはできず、事案ごとに、慎重な判断が必要です。
また、 減給処分を行う場合には、法律上の上限にも注意が必要です。
パワハラは、行為者個人だけの問題ではありません。
会社が相談を受けながら調査をしなかった場合や、 被害防止措置を取らなかった場合には、会社自身の責任が問題となります。
被害者が精神的に追い込まれ、休職や退職に至った場合には、損害が大きくなることもあります。
パワハラ対応で重要なのは、申告を放置しないことです。
同時に、申告だけで結論を出さないことも重要です。
会社は、 平時から規程、相談窓口、調査手順を整えておくべきです。
そのうえで、相談があったときには、被害者を守りながら、行為者とされた社員にも公正な手続を保障する必要があります。
このような対応が、会社と社員の双方を守ることにつながります。
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